ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
授業だよ。全員集合ー。
「皆さん、中間テストお疲れ様でした。全員が合格できたのは喜ばしい。学んだ知識がきちんと身についている証拠ですね。満点の人はとてもよく頑張りました」
生徒は落ち着かない様子だ。クラスの大半が俺の言葉に耳を傾けていない。理由は明確、今回は技術室ではなくグラウンドで授業を行っているからですね。
汚れても構わない、動きやすい服装で体育座りをする面々。俺の後ろにある例のものが気になって仕方ないと見えるぜ。でもまだ引っ張るよ。
「最後の設問で記入していただいた感想や意見には全て目を通しました。配信した動画は好評のようで何よりです。また、複数の生徒から寄せられた要望をもとに、後期の授業を進めていきたいと思います」
はいテロップがバーン。
スケッチブックに文字書いただけです。
「曰く『クラフトの材料が集められない』。うん、素材の採集が苦手な方もいるでしょう」
何人かの生徒が頷いている。割と切実な悩みだったりするのだろうか。無理にクラフトせんでもええんやで。
「前期にもお話しましたが、むやみに生態系を破壊するのもよろしくない。我々は自然と共存して生きているのですから。……なので、いっそ自分で育てましょう」
俺は背後に手を向けて視線誘導を図る。グラウンドの隅に位置する畑、ここで育てた新鮮な野菜は学生食堂で使われているそうな。
クラベル校長から畑の一部を授業で使う許可が降りたのでね。マジであの人は教師の鑑。
「今回と次回、全二回に分けて、皆さんにはきのみを栽培してもらいます」
反応はぼちぼち。薄々察していた生徒、予想外という生徒。割合としては七:三か。
「クラフトの授業を期待していた方がいたら申し訳ありません。新しいレシピをいくつか動画で公開しておきますので許してください」
カンポーやく、それとポケモンの餌が中心だ。簡単に作れて危険性の少ないものをチョイスした。
とまあ、それより今はきのみ栽培よ。前世でも植物について学ぶ授業があった……気がする。他と分野が被ってるとか言わないで。俺も自信がないの。
「今回は土の状態とこやしについて説明します。それから実際にオレンの実を埋めてみましょうね」
オレンの実を選んだ理由は簡単、初心者が育てやすいからです。あとクラフトの材料としても使える。
食材として販売されていたのを買って数は揃えた。協力してくれたカエデさんとハイダイさんに感謝。
「きのみは土に植えると芽が出て、小さな木になり、花が咲いて、複数のきのみができるというサイクルで急成長します。僕らは水やりをして、雑草を抜いてと世話をするわけです。オレンの実は最短十六時間で収穫できます」
生徒を集めて、俺は畑の一点を指差す。
「きのみは特定の環境でないと発芽しません。これがふかふかのつちという状態です。土が黒っぽい色をしているのが特徴ですね。野外でも見かける事があるでしょう」
今回は俺が事前に耕しておきましたよ。めっちゃ疲れました。ポケモンに手伝ってもらえ。
「ここにきのみを埋めるわけですが、その前に。土にこやしを混ぜてやると、きのみの成長を手助けする事ができるのです」
隣には山積みの袋。チリさんが選び抜いた上質な土を使い、コルサさんのアドバイスを参考にして、俺が苦心の末に再現した四種類のこやしである。
「これはすくすくこやし。きのみの成長サイクルを早めてくれますが、土が乾きやすくなります。乾いた土のまま放置すると収穫できるきのみの個数が減ったり、最悪枯れてしまうので注意が必要です」
たっぷり水やりしたら問題ないけどね。だから、せっかちな人におすすめできるだろうか。
「逆にじめじめこやしは土の乾きが遅くなりますが、その分きのみの成長も遅れます」
こちらは気長に成長を待てる人向けだな。
「後の二つは少し特殊でして、このねばねばこやしは木が枯れた後、落ちたきのみが新しい芽を生やしやすくなる効果があります。万が一の保険というやつですね」
ゲームだと正しくは発芽の回数が増える、というような説明文だったが。まあ試行回数と確率が増えるのだから、間違っちゃいないだろう、よってヨシ。
「そしてながながこやしはですね、きのみが実を結んでから、地面に落ちて枯れるまでの時間を通常よりも伸ばす事ができます。収穫を忘れていても安心ですよ」
「先生、質問いいですか!」
「どうぞハルトさん」
「そのこやしって、クラフトできますか?」
「残念ですが詳しいレシピはお教えする事ができません。ただ、上質な土に、砕いたきのみとポケモンの……を混ぜている、とだけお伝えしておきましょう」
俺からはこれ以上言えない。後は察しろ。自己責任でレシピを解明するのは止めないよ。
見本として、効果が分かりやすいすくすくこやしとじめじめこやしを使う。二つの穴を掘ってオレンの実を入れ、土を被せたら、コダックじょうろで水をやる。
「では皆さんもやってみてください。レッツ栽培」
全員がきのみを植え終わったのは、まさにチャイムが鳴るタイミングだった。時間配分をぬかったか。
「もうこんな時間ですね。今日の授業はここまで。次回は植えたきのみを収穫します。可能なら定期的にきのみの様子を観察しに来るといいですね。お世話に必要な道具は置いておきますからご自由にお使いください」
授業まで放置する生徒は何人かいるだろうから、俺も目を光らせておかねばいけないな。畑の片隅に植えたあれこれのためにも……。