ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

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 【急募】パルデアにいないポケモン

 

 というわけで、やっていきたいと思います。

 ぶっちゃけ何を見せてもいいわけなんだがね。

 できれば「何こいつ!?」ってなってほしいじゃないですか。ポケモン新作をプレイする時だってあるでしょう、お前何タイプだよって思わず呟いた経験が。

 

 残る候補は六匹。長い間ジム戦で戦い抜いてきた愛すべきスタメンたちである。出してガッカリされた日には申し訳が立たなくて彼らに顔向けできないでござるよ。

 

 とはいえ、ある程度の予想はついている。

 なぜならポケセンの隣にフレンドリィショップがあるからだよ。ここに置いてあるグッズや雑誌でその地方でのポケモンの知名度が大まかにだが押し計れよう。

 

 えー、『ゴース大量発生』……『今年のトレンドは一周回って木彫りのグレッグル』……目についたのでもうツーアウト。ええい、ままよ。

 

「出てきてください。クロバット」

 

『Zzz……』

 

 こうもりポケモンのクロバットは俺の先発、とても頼れる斬り込み隊長である。が、まだ日の高いこの時間はおねむのようだ。夜行性だからね。

 それでもきちんと出て来てくれるあたり、信頼を感じられてとても嬉しい。だったら昼間に出すなって話なんですけどね。仕方ないんだ、うちのジムはスクール併設だから昼営業だったの。

 

「わーっ! クロバット! 生で見るのはじめて! え、飛びながら寝てる! すごーい!」

 

「そこまで喜んでいただけるとわざわざ出て来てもらった甲斐がありますね」

 

 勝った……! いや勝ち負けとかじゃないけど。

 そうだろう。クロバットはかっこいいとかわいいのハイブリッドなのだよ。

 飛翔に特化したシャープな四枚羽、獲物を見る鋭い目つき、それでいて胴体は丸みを帯びてぽてっとしており、歩く時なんか羽引きずってよちよちと……いかん冷静に。向こうは俺のことが目に入ってない様子だけどな。

 

「この子と戦いますか?」

 

「くうっ……でも」

 

「公平性云々は問いませんよ。なにせ、そちらはチャンピオン級のトレーナーなのでしょう? 僕の方は胸を借りるつもりで臨みませんと」

 

「本当に? やったー!」

 

 流石にポケモンセンターのそばではバトれないので、少しばかり距離を取る。まだ不安だ、周囲に被害が出ないように多少細工を施しておこうか。

 エルレイドに頼んでリフレクターとひかりのかべの二枚張りで即席のバトルコートを用意してもらう。これを割るまでの死闘に発展させる気はない。

 

 ネモと決めたルールはこうだ。

 

 一対一のシングルバトル。

 道具の使用は禁止。持ち物はあり。

 どちらかのポケモンが戦闘不能になるか、トレーナーが降参した時点で勝敗を決する。

 

「それじゃあ、実りある勝負をしよう!」

 

「お手柔らかにお願いします」

 

 

 

「――出番ですよ、クロバット」

「――いけ、ケンタロス!」

 

 

 

 お互いにボールを投げるタイミングは同時。

 ボールから飛び出したクロバットは、先程までと打って変わって臨戦態勢だ。空中でホバリングしながらこちらの指示を待っている。

 対して、ネモが繰り出したのは名前だけなら俺も知っているポケモンだ。なのだが……俺の知っているケンタロスと見た目が異なる。水牛のような漆黒の毛並みだ。

 

「教えてあげる! パルデアのケンタロスは黒いの! タイプはかくとうだよ!」

 

 なんだ色違いじゃないのか。

 だが、それならどく・ひこう複合のこちらが有利、

 

「ケンタロス! しねんのずつき!」

 

「クロバット、避けてどろぼう」

 

 おいおい容赦なくエスパー技で弱点突いてきたな。かわいい顔してえげつないことをする。だが黒くてもケンタロス、真っ向勝負の物理アタッカーだろう。クロバットの速度には追いつけない。

 

 ケンタロスの突進をクロバットは掠めるように回避し、すれ違いざまに攻撃。ケンタロスの持ち物を奪い取る。紙一重の攻防だったな。戦利品は……あれ待ってこだわりスカーフじゃない?

 

「やられたー! なら次、こわいかお!」

 

「ッ……相手を見ずに撹乱しなさい」

 

 やられたーじゃないわ。

 こっちはスカーフの効果で他の技が使えなくなった、実質的な行動縛りだ。全部作戦なら脱帽だが……ええはい分かってますとも、予想も確認もせずに相手の持ち物を奪った俺のミスです。バトル苦手なんだって。

 

 ただこの世界のポケモンバトルはターン制の技の撃ち合いではない。極論技を使わずとも勝負が続く、そして技にはそれぞれ理屈がある。

 こわいかおは恐怖で体をこわばらせて相手の素早さを下げる技だ。だから目視しなければ問題ない。理想論だが実際に影響を多少軽減できる。

 

 そもクロバットは視覚より聴覚に長けるポケモン、音で相手の位置を感じ取れる。スカーフで加速した今はただ飛ぶ、それだけが技にも勝る戦術に変わる……すみませんこじつけです。

 

「速い速い! すごい速いね! よしケンタロス、ストーンエッジで周りを囲め!」

 

 地面から隆起した岩の槍が天を貫いて、徐々にクロバットの飛ぶスペースが失われていく。

 

「このままだと時間の問題ですね」

 

「降参する?」

 

「は? ……いえ失礼。ですが降参するのはあなたの方ですよ、ネモさん。このまま続ければ僕が勝ちます」

 

 どうやらネモは知らないポケモンとのバトルに夢中で気づいていないようだ。

 

「さて問題です。ネモさん、あなたのケンタロスは……いつから猛毒を浴びている(・・・・・・・・)のでしょうか?」

 

「……? ……あっ!」

 

 ネモが声を上げた瞬間が、ケンタロスの体力が尽きるまさにその時だった。

 ふう危ない危ない。やっぱりバトルは苦手だ。やるからには勝ちたいが、俺一人の実力だと簡単に負けてしまうからな。どうしてもポケモンの素質と努力でカバーしてもらう羽目になる。

 

「お疲れ様です。よく休んでください」

 

『クロバッ』

 

 腕に止まった今回の功労者を労ってボールに戻す。過去最高の飛びっぷりだったのではなかろうか。

 おっと、スカーフはネモに返さないといけない。

 

「ネモさ――」

 

「今の! 全部考えていたの!?」

 

「あの、近いですネモさん」

 

「最初の技、どろぼうの他にもう一つ違う技を連続して使ったんだね! どくどくのキバ……ううん、それだと確実性に欠ける。ということはどくどくだ。ケンタロスがいじっぱりな性格で顔に出さないのを見抜いてたの? わたしの注意力が落ちていたせいもあるのかな? あとあと、ルールで交代と回復を禁止したのは最初から毒で勝負するつもりだったから? ……そっか! だから危険を冒しても持ち物を奪ったんだね。きのみで回復したら一手余分に動かないといけなくなるし毒を警戒されるもの!」

 

「ええ……ご名答ですよ」

 

 全部説明されたわ。他に言えることねー。

 気づかれないと踏んで仕掛けた小技だが、チャンピオンは伊達ではないということか。今後は控えよう。

 

「いい勝負でした。パルデアにはいいトレーナーが育っていますね」

 

「こちらこそ! ……もっかい勝負しない?」

 

「日が沈むまでに宿を取りたいので嫌です。できれば最寄りの街を教えていただきたいのですが」

 

「ここからだと、どこもそれなりかな。タウンマップは開ける?」

 

「地図を持っていたら遭難はしませんね。手持ちの機器はポケッチしかありません」

 

「うそ!? スマホ持ってないの? じゃあ、次に勝負する時はどうやって連絡したら……」

 

 俺だってスマホロトム欲しいよ。でも高いじゃん。

 あと再戦するのは確定なんですね。

 

「そうだ! どうせならテーブルシティに来てよ! わたしはそこのアカデミーに通ってるから!」

 

 強引にそらとぶタクシーに相乗りさせられた。

 ちなみに運賃はネモが支払った。情けねえ……大人として情けねえよ……全財産が109円しかないなんて……

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