ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

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アオイ視点


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 八つのジムバッジを集めたら勝負する。

 

 それがハルトとの約束だった。

 真剣な表情だったからよく覚えている。別にポケモン勝負なんて、言ってくれたらいつでも受けるのに。彼の考えていることはたまに分からない。

 

 フリッジジムで実力はあるはずのハルトが負けた時はどうなるかと思ったけど。リベンジマッチでライムさんを倒して、そのまま続けてパルデア最強のジムリーダーであるグルーシャさんにも勝った。

 

 これで私とハルトは同じ……らしい。

 

「だから、全力の勝負をしたいの?」

 

「うん。自分がどれだけ成長できたか確かめたいんだ」

 

 ナッペ山ジムのバトルコートで向き合う。

 ジム戦が終わって、ポケモンと気力を回復させたらすぐに勝負なんて。まるでネモみたい。

 

「戦いたいならいいよ。やろっか」

 

 でも友達に頼られるのは悪い気がしない。だから、ネモとの勝負を断ったことはない。ましてやハルトが相手だったらなおさらだ。全力というのは躊躇うけど。

 

 やってと言うなら、してあげる。

 

 

 

 

 

「――いけ、ホゲータ」

「――輝く君は美しい! エーフィ、オンステージ!」

 

 

 

 

 

 ヒールボールのエフェクトと紙吹雪のシールを背景に、コートに立つエーフィ。たしかにどこか気品がある。

 私の手持ちはホゲータ一匹。宝探しの途中、力を借りるために捕獲したポケモンはみんな逃がしてしまった。大勢を連れ歩いてもお世話が大変だから。

 

「僕のメンバーは六匹だけど」

 

「別に手加減じゃないよ。ハルトも知ってるでしょ。私はこの子がいれば十分なの」

 

 これは自慢でも過信でもない。実際に、私はジム戦を全部ホゲータでクリアしている(フリッジジムは適当にポケモンを捕まえたけど)。

 

「一番近くで見てきたよ……だから、今日は僕たちも全力だ! エーフィ、パワージェム!」

 

「ホゲータ。避けて」

 

 エーフィの額にある宝玉が光を発射する。効果抜群のいわタイプ、でも当たらなければ関係ない。ホゲータは素早い動きで光の照射範囲から離脱する。

 

「星屑煌めけ! スピードスター!」

 

「右、左、下がって」

 

 星型の光線は絶対に当たるわざだ。ましてやエーフィは未来予測ができる。普通は避けられない。

 でも、私のホゲータには当たらない。

 

「あはは……やっぱりすごいや。攻撃の範囲を全部読み切るなんて」

 

「なんとなくの勘だよ。それに、ポケモンが指示についてこれなかったら意味ないもん」

 

 他のポケモンはできなかったし。

 唯一ついてこれるホゲータも、進化して体の大きさが変わってしまうと動きに影響が出るかもしれない。だから私はホゲータを進化させていない。

 

「隙を見てバークアウト」

 

「っ、ひかりのかべ」

 

 発動直前を狙ってわざを差し込む。エーフィにあくタイプは弱点、そして急所に当たった。ほぼ同時にひかりのかべが展開。倒したけど、一仕事をされちゃったかな。

 

「エーフィ、お疲れ様。……ねえアオイ。どうして僕が、君に勝負を挑んだのか分かるかな」

 

「腕試しって言ってたね」

 

「それもある。でもね、それだけじゃないんだ。さあ僕の二番手はこの子だよ。キュートな電撃を浴びせちゃえ! パーモット!」

 

 スピードボールにハートとスパーク。かわいさとかっこよさは両立しないようでいて、パーモットはどっちの要素もあるからあまり違和感がない。

 

「でんこうせっか!」

 

「落ち着いて避け……ううん、ハイパーボイスで近づかせないで」

 

 攻撃より移動と回避が目的だ。スピードで翻弄してから強力なわざを使うつもり。だったら、大声の振動で周囲をまとめて攻撃する。

 

「この子のかわいさに痺れろ! ほっぺすりすり!」

 

「まひ狙い? させないよ」

 

「と、みせかけてあざとくいこう! どろぼう!」

 

 それは悪手だよハルト。どっちにしても、ホゲータは距離を取って回避するだけ。ハイパーボイスに無策で突入したらパーモットは耐えられない。

 

「そもそも。持ちものは持たせてないよ、私」

 

「そっか。でもいいんだ。なかまづくり!」

 

 倒れる直前に、パーモットは踊りでホゲータの興味を引いた。何の意味があるんだろう。もうかは追い詰められないと発動しないし……しぜんかいふくかな、あれは交代で発動するもの。結局とくせいを使う機会は訪れない。

 そしてひかりのかべの効果が切れる。起点のエーフィが作った有利は失われた。

 

「ありがとうパーモット。今の、気になる?」

 

「というより、ハルトが何を考えているのか知りたいよ。なんだか勝つことが目的じゃないみたい。どうしてジム巡りに挑戦したの? ……強くなる必要があったの?」

 

「アオイには言ったことがなかったね。僕は強くなりたかったけど、別にポケモン勝負が強くなりたかったわけじゃない。方法は何でもよかった」

 

「……?」

 

「退屈させちゃったらごめん。もう少し僕に付き合ってほしいな。勝負は中盤戦。流れを変えようか! 砂塵に舞え、鮫竜! ガブリアス!」

 

 ヘビーボールから岩の破片が散る。必要以上に飾り立てないことで、ガブリアスの魅力を引き出している。

 

「大地揺動! じならし!」

 

「揺れるタイミングだけ跳んで」

 

 地面を踏み鳴らす攻撃は、振動が伝わる瞬間を避ければいいだけ。……威力が高いじしんを使わない。だとしたら目当ては追加効果で素早さを下げること。

 

 嫌な感じ。この流れは早めに断ち切った方がいい。

 

「ハイパーボイスで仕留めて」

 

「すなかけで視界を奪おう。そこから竜爪双撃、ドラゴンクロー!」

 

 巻き上がる砂埃には構わない。相手に当たる、ホゲータは私と同じ確信を持ってわざを繰り出した。だけど、ガブリアスはヒレで頭を庇いながら両腕を振るい、ハイパーボイスをかき消す。

 

「咬合粉砕! かみくだく!」

 

「逆にチャンスだよ。口の中にかえんほうしゃ」

 

 火に強いドラゴンタイプも体内は耐性が劣る。ダメージを受ける前にガブリアスは倒した。

 ハルトの手持ちは誰が残ってる? タイプ、覚えるわざ、とくせい。意識しなくても頭は回る。

 

「ごめんねガブリアス。休んでいて。……アオイはさ。勝負の時、いつも笑わないよね」

 

「真剣勝負なら普通だと思うよ。おかしくない」

 

「そうなんだけどね。僕は君に笑っていてほしい。でも、もしかしたら。思ってしまうんだ。アオイ、君がそんなに必死なのはどうして? それは僕のせい?」

 

「……何のこと? 意味分かんない」

 

「目を逸らさないで。それができないなら、もう勝負で魅せるしか方法がないんだ。ここから先はノンストップ! 最強には最強をぶつけるよ。異郷の炎、王者の血統を知らしめせ! リザードンッ!」

 

 ムーンボールに青い炎、飛び出す黒いリザードン……タマゴから孵化した色違いの個体だ。ハルトは空に突き上げた右手の親指・人差し指・中指を立てている。そのポーズは誰かのまねっこ?

 

「ダイサンシャイン! にほんばれ!」

 

 雪がちらつくナッペ山が、一時ひざしがつよくなる。

 なら次に来るのは決まっている。

 

「リザードン! だいもんじ!」

 

「ホゲータ、かえんほうしゃ」

 

 威力が増したほのおわざ同士がぶつかり、せめぎ合って、お互いの中間で爆発する。煙でコートの様子が見えない……でも、どちらも倒れてはいないはず。

 

「撃てる限りのバークアウト」

 

「荒ぶれ! げんしのちから!」

 

 視界が晴れる。

 立っていたのは無傷のホゲータ。連続して攻撃を受けたリザードンはボロボロ。倒れてはいないけど限界でひんしの状態だ。戦う体力は残っていないだろう。

 

「いいやまだ戦える! そうだよね、リザードン!」

 

『ばぎゅあ!』

 

「能力が上がってたんだね。だけど終わりだよ。ホゲータ、かえんほうしゃ」

 

「切り裂け、エアスラッシュ!」

 

 二度目の衝突は起こらない。リザードンが最後の力を振り絞った攻撃は、かえんほうしゃを真っ二つにして……わずかに、ホゲータには届かなかった。

 

「戻れリザードン。……弱い君はもういない、そのたくましさで嵐を呼べ! ギャラドス!」

 

 ルアーボールに水泡と雷を突き破って、凶悪な形相のギャラドスが空に登る。でも演出はたくましさとズレているような。口上のイメージに合わせたのだろうけど。

 

「あまごい!」

 

 また天候を変えるわざだ。雨雲に覆われた空を、ギャラドスはゆうゆうと泳いでいる。

 

「押し流せ、なみのり!」

 

「これは……流石に避けられないや」

 

 バトルコート全体が射程範囲だと分かってしまう。疲労したホゲータの足だと回避できない。

 

「ハイパーボイスで打ち消して」

 

 だから正面から破る。ハイパーボイスをなみのりの一箇所に集中させて包囲網を崩した。ホゲータは安全地帯に移動。ギャラドスの無防備な腹が見える位置だ。

 

「順にかえんほうしゃ、まもる、ハイパーボイス」

 

「竜に成る! たきのぼり!」

 

 やけどを負ったギャラドスは動きが鈍り、まもるで攻撃を受け流されて、とどめの一撃で戦闘不能になった。

 

「……よくやったね。ギャラドス」

 

 これでお互いに残り一匹。勝負は見えた。

 たしかにハルトのポケモンは予想以上に成長していた。ジム戦だって余力を残していたに違いない。

 

 それでも私の方が強い。

 

 ハルトの切り札はマスカーニャ。タイプ相性でホゲータが有利だし、どこに攻撃が来るか分かる私たちは攻撃を受けない、つまり負ける要素がない。

 

「まだ……」

 

 どう転んでも私の勝ちだ。

 

「まだ、負けてない」

 

 結果は見えているのに。

 

「まだ終わらない」

 

 やめて。あなたは私より弱い。

 

「ショウ・マスト・ゴー・オン――マスカーニャ! 君に決めた!」

 

 それでいいじゃない。何が駄目なの。

 

「僕が押しつけた呪いを! この輝きで振り払う!」

 

 ハルトがテラスタルオーブを掲げる。

 マスカーニャのテラスタイプはくさ。雨が降っていても、この状況を覆す作戦としては弱い……いや違う。

 

「ひこう、テラスタル」

 

「華麗に跳んでマスカーニャ! アクロバット!」

 

「避けてホゲータ!」

 

 ホゲータはその場から動かない。

 くろいてっきゅうの重さに押し潰されて、動きたくても動けない。

 

 マスカーニャのトリック。テラスタルに目を奪われた瞬間に道具を入れ替えられた。

 持ちものを確かめたのは、ひたすら素早さを下げようとしていたのは、これが狙い。ここ一番の決め手をホゲータに当てるための布石だった。

 

「っ、まも」

 

「遅い!」

 

 ホゲータにアクロバットが直撃する。

 

「……倒せてない?」

 

「ハルトの戦い方で、もしかしたらと思ったから。落ちてたきのみを拾ってもらったの」

 

 アクロバットは自分が持ちものを持っていない時に威力が二倍になる。

 だからマスカーニャはくろいてっきゅうをホゲータに押しつけて、自分は身軽になった。しかもテラスタルでさらに威力アップ。ハルトの作戦はよく考えられている。

 

 でも、たまたまコートに落ちていたオボンの実が命運を分けた。前の人が回収し忘れたのだろう。

 ホゲータからマスカーニャに渡ったきのみはアクロバットの条件を邪魔した。だから耐えられた。

 これはただの運だ。試合ならハルトの勝利だった。

 

「……でもこの勝負は私の勝ち」

 

 ずるいと言われてもいい。自分でも卑怯だと思う。

 それでも負けられない。

 だって、一度でも負けてしまったら。

 私は、この才能は、何のために存在しているの。

 

「そうかな?」

 

 ハルトは全部お見通しだというように微笑んで。

 

「もう一度だマスカーニャ!」

 

「ホゲータ、こっちもテラスタル! かえんほうしゃで迎え撃て!」

 

 雨が上がる。

 私はテラスタルオーブを投げて、ホゲータをほのおタイプにテラスタルした。

 ひこうタイプになったマスカーニャにほのおわざは弱点じゃない。あえて受けてもうかを発動させる? でもとくせいは変更されてしまっている。ハルトがここまで予想していたのだとしたら。いいやごり押せ。当てれば勝てる。

 

「負け、ないっ! 私は強いんだからァ!」

 

「いいや、僕が勝つ。そして君の目を覚ます」

 

 マスカーニャはかえんほうしゃを抜けた。満身創痍だけど、ホゲータを倒すために動いている。これは……こらえるで耐えた。同時にオボンの実を食べて回復。マスカーニャは今度こそ身軽になる。

 

「僕もずるいし運がいいね。オボンの実じゃなかったら上手くいかなかった」

 

「ホゲータ、まもるを合わせて!」

 

「そんなに慌てて、余裕をなくして、らしくないよ。いつものアオイならこんな手は通用しないのに。それとも……本当はずっと余裕なんてなかったのかな」

 

「……っ」

 

「イッツ・ショータイム! マスカーニャ、トリックフラワー!」

 

 知らずのうちに、多分一度目のアクロバットで、ホゲータにつけられていた花束が破裂する。体勢を崩したホゲータは爆発を防ぐためにまもるを切らざるを得ない。

 

「フィナーレだ――アクロバット」

 

 マスカーニャの攻撃。

 

 ホゲータは倒れた。

 

 …………

 

 …………

 

 …………

 

 私は、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れさま。いい勝負ができた……といいんだけど」

 

 私がへたり込んだまま黙っていると、ハルトは鞄からキズぐすりを取り出して手持ちとホゲータを回復した。

 

「頑張ってくれたポケモンを元気にしないとね」

 

「……」

 

「顔、上げられる?」

 

「……やだ」

 

 帽子を目深にかぶる。こんな姿は誰にも見られたくない。自分の体なのに言うことを聞いてくれなくて、思い通りにならないことが、また情けないし恥ずかしい。

 

 どこかにいって。構わないで。

 

「隣いいかな」

 

 なのに、彼は空気を読まない。

 

「昔と逆だね。あの時は僕が泣いていて、君が話しかけてきたんだ。でも口を開くなり『うっとうしいからべそべそしないで』はないと思うよ」

 

「そんなきつい言い方してない」

 

「そうだっけ? それくらい怖かったんだよ最初は。でもアオイは話を聞いてくれた。いじめっ子をこらしめて、それどころか仲直りして、みんな友達になっちゃった。優しくて、かっこよくて、強い子なんだなと思った」

 

 違う。私は優しくない。だって私は同情も憐れみも抱かなかった。しょうもない理由でいじめをする連中と、日に日にエスカレートする問題行動を笑ってやりすごそうとする男の子が見ていて不愉快だっただけだ。

 

「僕、その時はただ嬉しくて、感動して、アオイにあんなことを言ってしまった」

 

「『すごいや。アオイ()にはみんなを笑顔にできる力があるんだね』」

 

 覚えている。忘れるはずがない。

 ハルトの言葉を、笑顔を。とても眩しくて、宝物みたいにキラキラと輝いていた。

 

 だから、私は宝物を守ると決めた。

 

 困っている人がいたら手を差し伸べる。

 

 勉強も、遊びも、一番になる。

 

 授業はずーっと真面目だと疲れるから、たまにふざけてみんなを笑わせる。

 

 放課後は思いっきり遊ぶ。仲間はずれなんてさせないし、全員が楽しいと思えるように。

 

 みんなに期待されるから。

 

 ハルトが憧れた私でいたいから。

 

 完璧を自分に課した。それができる才能があった。

 

 それはハルトの引っ越しに合わせ、お父さんとお母さんを説得して、アカデミーに入学してからも変わらない。

 

 ペパーと衰弱したマフィティフを助けるために、巨大なヌシポケモンと戦った。私は優しいから。

 

 カシオペア……ボタンの頼みでスターダスト大作戦に参加して、スター団の誤解を解いた。私はすごいから。

 

 ネモに誘われるまま、ポケモン勝負には何度だって付き合った。私は強いから。

 

 ハルトと一緒にジム巡りをした。私はかっこいい、ハルトを守るヒーローだから。

 

 でも……次第によく分からなくなって。

 上手くいかないことも増えた。最適解は見えているのに、なんとなく歯車が噛み合わない。

 

 クラスメイトは私を遠巻きに見る。

 先生は優しいけど、たまに困り顔で苦笑する。

 ポケモン勝負した相手は顔を引き攣らせて、怒ったり、呆然としたり、泣き出したりする。

 

 その度に、胸に大事にしまった宝物に触れて、もっと上手にやれると自分に言い聞かせる。

 

 本当に?

 

 私は優等生じゃない。自分が一番分かっている。無理していい子ちゃんを続けてどうなるの。いつかボロが出て、全部台無しになるんだ。大切な宝物は色褪せて、粉々に砕け散ってしまう。……それは嫌だ。嫌だ、嫌だ!

 

「もういいよ」

 

「……何が」

 

「過去に囚われないで。アオイはそのままでいい。って、口で言っても聞かないでしょ。だから勝負したの。結果は僕の勝ち。これがどういう意味か分かる?」

 

 分からないと答えたら思う壺な気がする。

 

「素直になろうよ……ここには僕しかいないんだから。コホン、つまりだ。僕はもうアオイの後ろに隠れるいじめられっ子のハルトじゃないってことさ!」

 

「それはそうでしょ。いじめは私が解決したし」

 

「ちっちっちっ。僕は君と互角……ではないけど、戦えるくらいに強くなった。だから、アオイにずっと預けていた夢を返してもらう」

 

「夢……?」

 

「みんなを笑顔に。それは僕の夢だ。他の誰でもない、ハルトが叶える目標だ。だからアオイには渡さない。君の夢は、君自身の手で見つけなくちゃ意味がない」

 

 固く閉じた拳がほどかれる。私の力無い抵抗は、ハルトの指先に負けてしまう。

 

「君を縛る呪いは消え去った。さあ、いこう! 夢と、困難と、希望が溢れる世界に! アオイの新しい宝探しはここから始まるんだ!」

 

「……なに、それ。バトル中も思ってたけど、お芝居? なんか変。キザ。似合わないよ」

 

「ひどくない!?」

 

「ふっ、フフ……あははははは!」

 

 思わず吹き出した。ハルトの仰々しい演技と、ショックでポカンと口を開けた顔の落差がおかしくて、馬鹿馬鹿しくて。もやもやした悩み事なんてどうでもよくなってしまうピエロっぷりだったから。

 

「ふう……やっと笑った」

 

「え?」

 

「みんなを笑顔にするには、自分も笑顔じゃないと成功しないんだ。これが僕の第一歩ってこと」

 

 私の帽子を取って、視線を合わせるハルトは、太陽みたいに眩しい笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー、スッキリした! ……ありがと」

 

「どういたしまして。あれこれ頭を使った甲斐があったよ」

 

「それはそれとして、負けて超絶悔しいからリベンジして今度は倒すね。手持ちも増やさないと……とりあえずナッペ山で特訓かな。ついてこないでね! ハルトの時も一人でしてたでしょ?」

 

「え、今から!? 待ってアオイ! せめて道具とか揃えてからにしなよ!」

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