ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
『博士は夫婦でタイムマシンの研究に取り組んでいた』
『だが実験中の事故で一人が去った』
『己の無力を嘆いた博士は、自らの記憶と人格をもとに、もう一人の自分を作り上げた』
『そしてタイムマシンを完成させた』
『技術的な問題で、タイムマシンは過去と未来、どちらか一方の時間軸しか繋げなかった』
『だが夫婦の夢は、過去と未来のポケモンが現代のポケモンと共存する世界』
『改良を施すには時間がかかり過ぎる。もう一基のタイムマシンを作る方が早いくらいに』
『博士の目の前には完成品がある。そして人手不足を解消する手段も、同様に』
『……博士は保管してあった「あの人」の記録を、自らの記憶で補い、AIとして構築することに成功した』
『我々は三人で二基目のタイムマシンを作った』
『だが、博士はコライドンとミライドンの争いからもう一組を庇い、生命活動が維持できなくなった』
『このままタイムマシンを稼働させれば、いずれ過去と未来のポケモンがエリアゼロから溢れ出すだろう。今はバリアで制御しているが、イダイナキバのように、バリアを破りパルデアに抜け出すポケモンも現れた』
『彼らにより、現代の生態系が破壊される。そのような惨劇が起きることを我々は合理的とは思わない』
『しかしAIである我々の意思は、タイムマシンを止めようとするとプログラムに乗っ取られてしまう。オリジナルの博士の願いを止めるにはキミたちの力が必要だ』
『『どうかワタシ/ボクを、博士の夢を破壊してくれ』』
セキリュティに異常発生
セキュリティに異常発生
タイムマシンが危険にさらされています
タイムマシンが危険にさらされています
タイムマシンの活動に障害が発生しています
障害を取り除くため
楽園防衛プログラムを起動します
オーリム/フトゥーIDを除く
すべてのモンスターボールをロック
プログラム準備中……
テラスタルエネルギー集束開始……
オーリムAI/フトゥーAIは
楽園防衛プログラムに上書きされました
最悪だ。
俺が追いついた時には、AI博士二人が従えたコライドンとミライドンが子供たちの前に立ち塞がっていた。
モンスターボールを使わせないとかアホか。戦略としては大変有効だけどさ、考えてもやれないだろ。
御一行の護衛兼監視として先行させていたクロバットを除いて手持ちはボールの中。一匹で双竜を相手にしつつ、全員を守りながら撤退……厳しいがやるしかない。
物陰に隠れて隙を窺う。
めかくしだまで煙幕を焚いて、クロバットのエアスラッシュで相手を怯ませたら逃走を促す。よしこれで、
「君ならやれる! 頑張れコライドン!」
「お願い……ミライドン」
なんでボール使えてるの。
飛び出した二匹はハルト、アオイと視線を交わして勇気を振り絞り、フォルムチェンジを遂げる。
ボールロックには抜け道がある?
考えられるとしたら、あのボールがもともと博士のものだったとか。じゃあ俺は無理じゃん。こちらの手持ちは全部ボールに俺のIDが登録されて……いや待て。
「わわっ、ポケモン軍団まで来た!?」
ネモの声で思考から引き戻される。
俺が隠れている通路から、ぞろぞろと現れる過去と未来のパラドックスポケモン。
まずい、挟み撃ちにされるぞ。人工知能が二人分で処理能力に余裕があるからか? 確実にこちらを倒しに来てやがる。コライドン同士、ミライドン同士の力量はほぼ拮抗している。新手に対処する余裕はない。
俺は物陰から飛び出した。
「クロバット、あやしいひかり」
「! ウズ先生? なんでここに!?」
まあバレるわな。でも話は後回しだ。
「皆さんはそちらに集中してください。背後は僕がどうにか抑えますから」
「いやどうにかって、クロバットだけであの数と戦うのは無茶だぜ! 先生が危ねえ!」
「大丈夫ですよ。秘策がありますからね」
「……黒い、モンスターボール?」
君たちは見たことがないよな。あのレホール先生なら歴史の授業で触れていそうなものだが、さすがに個々のボールの種別までは学んでいないか。
古ぼけた年代物の骨董品。
その名をギガトンボールという。
未来を切り開くのは
本当なら、一度死んでる亡霊が出しゃばるべきじゃないのだろうな。だが、既にあれこれとたくさん口を出してしまったことだし……何より。
この世界と、ポケモンと、教え子たちは、俺にとっての宝物みたいなものなんだよ。
それを害するというならこっちも容赦はしない。
「
いつの未来、どこの過去だかは知らねーが。
時空を超える。
それがお前らの専売特許だと思うなよ?
「ヒスイの末裔――伝承者ウズ。推して参る」