ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

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 改造ライドポケモン、スターモービル。

 

 風の噂では、スター団が改造を施したブロロロームは通常種と異なるタイプやとくせいを有しているらしい。

 どうすればそんな芸当ができるのか。

 その謎を解明するため、我々調査隊はしるしの木立へと向かった――。

 

「その技術、僕に教えていただけませんか」

 

「設計担当はオルティガ殿ゆえ、我はさほど詳しくないのでござるが……」

 

 ドーモ、シュウメイ=サン。

 技術教師です。

 

 スター団のことはスター団に聞け。

 そう考えてSTCに足を運んだのだが、どうやら訪問先を間違えたらしい。人間誰だってミスはする。

 

 それはそれとして普通にうらやましいんだが。

 こちとらテラピース必死にかき集めてるのに。

 

 ちなみに後日オルティガに製作方法を教わったが、複数の要因により断念せざるを得なかった。材料費が予算オーバーしたとかじゃないぞ。教師が率先して校則違反するのはダメだからね。仕方ないね。

 

「というわけで、第一回ぼくが考えた最強のスターモービル決定戦を開催します」

 

 実現できないと分かってはいても諦めきれない気持ちがしこりとして残る。じゃあどうにか発散しようという企画である。妄想はプライスレスだからな。

 人の夢は! 終わらねえ!

 

「わ、わぁー?」

 

「えっと……」

 

 スター団はこんらんしている!

 それはそう。いきなり変なテンションでネタを振られても困るだろう。いい反応を返されたら俺がビビる。

 どく組はクラフトに熱心なメンバーが多いとはいえ、あくまで生徒と教師という関係上、友人レベルで打ち解けてはいない。日頃の行いの積み重ねなんだよなぁ。

 

 とはいえ。俺の娯楽に付き合う対価はすごいぞ?

 

「見事、最優秀賞に選ばれた一人には……この特製イモモチ十人前を進呈しましょう……!」

 

「別にいいや」

 

「そうだね」

 

 なん……だと……?

 

「い、イモモチですよ? この焼き加減と香ばしい匂いにいったい何の不満があると」

 

「量でござろう」

 

 みんなで食べたら秒でなくなるだろ。

 まだまだ育ち盛りのくせにお前らときたら。朝昼晩しっかり食べておやつを足すくらいでちょうどよかろうもん。

 なおイモモチは一人前で十分なボリュームがある模様。残念ながら当然の結果である。

 

「しかし他に渡せるものは……これぐらいしか」

 

 取り出したのはわざマシン06「どくどく」。

 現役時代、ジムバッジと一緒に渡していたものだ。

 なぜ手元に残っているかって? 辞める時に箱ごと渡されたんよ。記念品とかなんとか言いくるめられたが体のいい在庫処分である。あげく自分では使わないから置き場所に困るだけというオチでした。くそがよ。

 

「どくどく……!?」

 

「本気、出してみる?」

 

「スーハー」

 

 なぜかスター団の目の色が変わった。

 よく分からんがとにかくヨシ。

 

 さてさて、ぼくが考えた最強のスターモービル以下略、はっじまっるよー。

 

 主催は俺。司会進行も俺。協賛はチーム・シー。

 飛び入り参加歓迎、ただしレギュレーション違反だけは勘弁な。具体的には複合タイプはアウト。当然とくせい二つ持ちなんて論外だ。

 条件がきつい? 専用技とパッシブ状態異常無効でお釣りがくるわ。なんでどくづきより威力高いんだよ。普通のブロロロームにも教えろ。

 

「どくタイプにふゆうで決まりだろ!」

 

「ふむ、どう思いますか。特別審査員のヒロノブさん」

 

「弱点を減らす組み合わせはやっぱり強いね。パルデアだとゴースとゴーストしかいない。どくタイプ使いとしては真っ先に考えちゃうと思います」

 

「そうですね。やはりじめんタイプを無効化できる点は順当に強い。僕はクロバットで対策としていますが、よその地方では同じとくせいを持つドガースやマタドガスを連れているトレーナーがいますね」

 

 カントーの忍者父娘とかはその筆頭だ。俺はどくタイプ使いの先達として彼らを尊敬している。キョウさんは薬学に通じているから教わることも多い。でも娘さんからは蛇蝎の如く嫌われてるんだわ俺。

 マジで心当たり皆無なんだよな……ポケモンリーグで行き倒れた時に(キョウさんから)もらった弁当は美味かったから俺はいい人だと思ってる。なぜか感想を伝えたら激怒されたけど。解せぬ。

 

「ただ、タイプにこだわりがないのであれば、ふゆうでの弱点補完はでんきタイプの方が優れています。今回は評価が分かれるところです」

 

「ふむ……ならば、これはどうでござろう?」

 

 名乗りをあげたシュウメイが、スケッチブックにさらさらと書きつけたのはデザイン画だ。

 歯車にピストンとスチームパンクなガジェットを搭載しつつ、和風の絡繰を思わせる意匠。レトロな近未来像と格式高い伝統を見事に組み合わせて昇華している。

 

「はがねタイプにじょうききかん! さすがシュウメイ殿、デザインセンスはスター団ピカイチだ!」

 

「ふっ。同胞、褒めても何も出ないでござるよ」

 

「先生。これはもうシュウメイ殿が優勝では?」

 

 そうだねすごいね。芸術点は抜群だ。

 正直なところ驚いた。手先が器用なのは知っていたが。好きが高じて身についたのだろうか。やはりどの世界でも熱量を抱いたオタクは修羅だ。

 

 しかしはがねタイプ。

 

 これは俺の好き嫌いでしかない。それを理由に生徒の才能を否定するのは教師として間違っている。

 いや別にはがねタイプが悪いとは言っていない。強いし硬くてかっこいいよな、シャキーンだもんな?

 

 結局、紆余曲折を経てどくタイプ&どくげしょうの組み合わせが栄えある第一回優勝を勝ち取った。

 そりゃそうだ、どく組だもん。

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