ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
ちょっとしたボヤ騒ぎがあった。
図書館のカウンターに座ってたら邪悪な気配を感じたので顔を出してみれば、いかにも凖伝説と言わんばかりな四匹のポケモンがボールから出ていたのだ。
隣に誰がいたかは名誉のために伏せるがな。
ウッヒョー! じゃないんだわ。
下手に刺激さすな。
驚いてわざを繰り出したポケモンを宥めるため、通りすがりのDJ悪事を含めた面子で突発レイドバトルよ。
幸い普段は意思疎通が取れているようで一安心。
あまり無茶はしないでほしいものだ。「自分たちが捕まえないとまずいと思った」? それはそう。
生徒にここまで言わせるとかどうなんだ。大人として良心の呵責は感じねーのか。
この件はクラベル校長に報告するぞレホール先生。
「あのー、先生? それ返してあげて」
「うわぁ……ディンルー欠けてるー……」
「おっと。これは失敬」
盾の代わりにしていた木簡と破片を返却する。
素手だと火傷とか凍傷になるから。
ちょっと太刀筋刻まれてるけど問題ない? いらないなら叩き割って薪にしてもいい。こう、バキッと。
「災いのポケモンが怯えるってやばくない?」
何を言うか。最近はなぜか体の調子が良いだけだ。
滑舌だって現役時代を超えて全盛期である。コラッタッタタラタラダルマッカビリリリリ……ワンモア。
「あ、最近流行ってるやつ。先生も動画とか見るんだ」
「これでも技術教師ですからね。スマホロトムだって使いこなしていますとも」
最初の設定が分からずジニア先生に泣きついたのは今や昔。もはやからくりなど恐るるに足らず。はいてくであいてぃーなでじたる世代の爆誕でござる。
文明開花の音がするぜ。まあ前世じゃ普通にね、機械に囲まれた生活をしていたからね。
「でもこれ気になってるんですよね。ビリリダマってリージョンフォームあるんですか?」
「いい質問です。あまり知られてはいませんが、過去には今と異なる姿のビリリダマがいたという言い伝えが残されていますよ。ちょうど文献がここに」
カウンターに広げていた帳面を生徒たちに見せる。
ミオ図書館から取り寄せた資料だから丁重にな。
色褪せた写真からわかる、木彫りのような質感。
ちなみに隣にはこう記されている。
『モンスターボールと空似せし謎のポケモン。気昂るほど腹に蓄えし電流を解き放ち大笑す』
今も昔も自爆する厄介者なのは変わらない様子。
ビリリダマというポケモンはモンスターボールの流通と深い関わりがあるとされており、様々な研究が進んでいるらしいから驚きだ。生物学のほかに文化学的な視点が必要とされるそうな。
「以前授業で話した通り、大昔のモンスターボールは全てぼんぐりで作られていました。ゆえに過去のビリリダマは植物、くさタイプの性質を有していたと仮説を立てることもできるでしょう」
現在のモンスターボールが流通して、くさタイプのビリリダマが姿を消すのも妙な話だがな。モンスターボールに擬態できず自然淘汰されていったのか。
でもあいつら大して擬態できてねーじゃん。
「リージョンフォームが特定の環境に適応したポケモンの姿だというのなら、時代や環境の移り変わりによって失われていく進化の形も存在しうるということです」
少し難しい話になってしまったかな。
特別授業をする予定はない。だから君たち、単なる雑談として聞き流してくれていいんだぜ。メモまで取るとか真面目ちゃんか?
「じゃあ環境さえ整えれば、ビリリダマはこの姿になれるかもしれないってこと?」
「ご名答ですアオイさん。とはいえ一人で再現できるものではないでしょうね。特にビリリダマのケースは大勢の人間の力が必要です」
「もしかして先生、授業でぼんぐりボールを広めたのって……そのため?」
ふっふっふ。勘のいい生徒ボルね。
そう! これこそ俺、いや僕の百年革命!
古の時代に存在したビリリダマを従え、モンスターボール業界に反旗を翻す壮大な計画ボルよ!
ボ〜ルボルボル! 手始めに、まずはそこのお前からぼんぐりボールユーザーにしてやるボル!
……いや、やらねーよ。
ウズ先生と
ちょっと なかよくなった!