ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
夜空に浮かぶ満月を見上げる。
人目を避けたかったので、今晩はグラウンドを貸し切らせてもらった。クラベル校長には無理を言ったが……これからやることは極秘事項なのでな。
約束より五分早く、アオイとハルトが姿を見せる。
「決意は変わらず、ですか」
お互いに考える時間は取った。
その上でここに現れた。
準備も、覚悟も、十二分に整えている様子。
ならばもう止めはしないさ。
「エリアゼロで発生した時空の歪み。その調査に力を貸してもらいましょう。ただし条件があります」
時空の歪みから中型・大型のポケモンが出現しているとの報告が入っている。
当然だが小型のポケモンと比べて危険度は段違いだ。
なかでもオヤブンと思しき凶暴な個体は、通常より強力な技……高速の連撃や渾身の一撃を繰り出してくる。
だからあれだ。要は予習をしようってことね。
「ゾロア。お願いできますか」
ストレンジボールから出てきたゾロアは頷く。
保護してからこの方、この時代に慣れたのか随分ふてぶてしくなった迷いフォックス様である。
衣食住の対価と言ってはあれだが、俺の頼みをひとつ聞いてもらうという話はつけてある。
今から行うのは興味本位の実験だ。
失われた進化の道筋。
それは現代で再現できるのか。
失敗する可能性は高い。
しかし今回の、過去からやってきたゾロアの存在は千載一遇の好機だった。
リージョンフォームは特定の環境に適応したポケモンの姿だ。条件さえ整えれば再現できるのが道理。
古い地層から掘り出した石炭や黒曜石、あるいは特有の磁場。これらの調達は不可能ではない。
しかし極寒の大地や霊峰に集う怨念なぞ、どうやって用意すりゃいいのか。
答えは簡単だ。
「わぁ……」
「これ、ゾロアのイリュージョン!?」
寸分違わぬ幻を以て、真に迫る。
ゾロアだけでは認識を騙す技量が足りない。
ゆえに爺さん……ゾロアークの手を借りる。
記憶と恨みが摩耗した爺さんでは、郷愁の念だけでは、どうやっても上手くいかなかった。
ゾロアのイメージを元に、ゾロアークが補助することで、ようやく成立する裏技にしてバグ技。
どうだ爺さんたち。
束の間の夢で悪いが、里帰りの時間だぞ。
そして手持ちのリングマさんよ。
おめー文献によると進化を残してるそうだな?
栄養剤、もといピートブロックをこうして、こう!
「僕からの課題はひとつ。ヒスイのポケモンと戦える強さを、チャンピオンクラスに至るまで磨いた技術を、僕に見せてください。そして……」
煙玉を焚き、装束を着込んで跳躍する。
朝礼台から見下ろす構図、現役時代を思い出す。
「自然の過酷さ、非情さ、残酷さを! その身で学んでいきなさい!
でんしょうしゃの ウズが
しょうぶをしかけてきた! ▽
とまあ、大仰に格好つけたわけだが。
おそらくアオイとハルトに釘を刺す最後の機会だ。
どう頑張っても勝たせてやらん。
事前にどくびしを撒いたバトルコート。
外野の手持ちには妨害工作を頼んでいる。
ドクロッグのさしおさえで道具は使えない。
ゲンガーのくろいまなざしで交代は潰す。
積み技や壁を使おうものなら、クロバットがくろいきりときりばらいで打ち消す。
あとは都度アイテムで向こうの能力を下げて、こっちの能力上昇、と……。
「ずっるい! さすがに今のはなしでしょ先生!」
「しかも動画で使っていた連撃に、エリアゼロで見たポケモンまで……あれがヒスイのポケモン? でもそれだと時系列が合わないような……」
はっはっは。死ぬ直前も同じ文句つけるつもり?
べ、別に学校最強大会の憂さ晴らしとか、そんなつもりじゃ全然ないんだからねっ。
大人げないという非難は受け止めよう。
だが、あれだけ早業と力業を浴びたのだ。もう初見殺しではなくなったな?
「あ、今見たものはオフレコでお願いしますね」
公開されたら目立つどころの話ではない。
これ以上仕事が増えたらぶっ倒れるから。
はいちょっとそこの手持ちー。
その「今更?」みたいな視線やめなー。
ウズ先生との
きずなが 芽生えた!
伝承者 ウズ
初戦 手持ち
ゾロアーク(ヒスイのすがた)
ハリーマン
オオニューラ
サーナイト
エルレイド
ガチグマ(※)
初戦以降、夜のグラウンドで再戦可能(賞金/Zero)
学校最強大会の手持ちがジム戦用のスタメンで固定化
※再戦時はヒスイのポケモンをランダム選出