ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
スイリョクタウンに妙な噂が流れている。
なんでも見慣れない人影が目撃されたらしい。
それは仮面をかぶっており、人間と思えない身のこなしであったそうな。新種のポケモンかな?
「ときにハルトさん、なぜ僕を呼び出したのです? まだ林間学校の途中とお見受けしますが」
「先生に相談があるんです。ここに来るまで、誰にも見られてないですよね」
「ご安心を。内密とのことでしたので」
持てる全力で忍んで参ったでござる。ニンニン。
おいそこ、なんで不安そうに頭を抱えている。
「まあいっか……実は、友達のことなんですけど」
ほうほう。林間学校で新しい友人ができて。
そのキタカミ出身の姉弟とオリエンテーリングを回っているが、弟くんの様子がおかしいと。
「原因には心当たりがあるようですね」
「……はい。僕たち、隠し事をしてて」
きっかけはキタカミの里に住まう鬼。
アオイとハルト、そしてキタカミ姉弟の姉の方ことゼイユは、オモテ祭りで鬼に出くわした。
だが弟くん、スグリだけは鬼に会えずじまい。
鬼の大ファンであるスグリが悲しまないように、オモテ祭りの一件は三人の秘密にした。
しかし、些細なすれ違いでスグリとの関係がギクシャクしているようである。
「どうすればいいか、というのは今さら僕が口にするまでもないでしょう。あなたは理解しているのですから」
「正直に話して、謝る?」
「ご名答です。難しい顔をしても時間が過ぎるばかり。今が一番、白状しやすいタイミングですよ」
謝って許してもらえるかは弟くん次第だが。それは言わぬが花だし、ハルトだって十分に分かっている。
許してもらえないから謝らないってのは違うからな。
だが、彼らが再び笑顔になれるような後押しはするし、良い結果を祈るよ俺は。
「仲直りできたら、全員に特製キタカミイモモチスペシャルを振る舞いましょう」
「あ、それはいらないです」
なんでさ。しっかり食え若人。
スグリは現在アオイとオリエンテーリング中らしい。
キタカミの里各所にある看板巡りで時間を稼いで、ハルト・ゼイユのペアが解決策を考える作戦だ。
連絡のため取り出したハルトのスマホロトムが、ひと足先にメッセージを受信する。
「アオイからだ。……え!?」
声を上げて固まるハルト。
俺は横からスマホの画面を覗き込む。
『ごめんバレた! どうしよう!?』
なんつータイミングだよ。
楽土の荒地。
自然豊かなキタカミの里にあって、なぜか岩肌があらわになっている北西部一帯である。
村から離れているからか出現する野生ポケモンは平均以上の強さを誇り(無論キタカミの里での平均)、凄腕のトレーナーとて油断は禁物だ。
もうすぐ日が暮れる。
夜は危険だ。平静でないならなおのこと。
駆け足で三枚目の看板を目指す。
アオイの連絡では、オリエンテーリングの最後でスグリが感情を爆発させたらしい。
静止を振り切って先に帰ってしまったのだとか。
地元の子だし、何があるとは思わんが、大人としては不安なんだよ万が一を考えると。
引率のブライア先生は他のグループにも目を配らなきゃならん。つーか教師一人だけっておかしいだろ。
だからジニア先生も付いてきたのか? フィールドワークは見守りの一環……かも。タブンネ。
そうこうしているうちにスグリを発見。
ブルーベリー学園の制服だ。間違いない。
「どうして……」
俺は気配を殺して様子を窺う。
「ねーちゃんも、アオイも、ハルトも……みんなグルだったんだ。三人でおれを笑ってたんだ」
スグリは怒っていた。
「友達さ、言ってたのに」
泣いていた。
「嘘つき……嘘つき!」
叫び疲れて、それでも気持ちが収まらないのだろう。
スグリは八つ当たり気味に拳を振りかぶる。
ああもう、見てられん。
俺は声をかけさせてもらう。
合言葉は……そうだな。
おーす! みらいのチャンピオン!