ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

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 ともっこから受けた傷を回復するぞ。

 

「さてアオイさん、ハルトさん。処置は?」

 

「はい先生。怪我をしたスグリとポケモンは寝かせて安静にしてあります」

 

「どくけしは使いました。でも、スグリの傷が」

 

「よろしい。僕が見ましょう」

 

「ちょっと、あんた誰? スグリになにする気?」

 

「ご家族が心配なのは理解しますよ。ですが、ご安心を。応急処置は慣れています。念のためドクターを呼んでもらえると助かります」

 

「あのね、明らかに怪しいやつを信用できるわけないでしょ!? なんなのよその変な桃のお面! 警察呼ぶわよピーチメン!?」

 

 おっと、つい癖で仮面をつけていた。

 今回は別に素性を隠す必要がない。

 

「アカデミーの技術教師、ウズと申します」

 

「……こんなのが教師?」

 

 おいこら何が言いたい。

 

「不安なら処置はあなたにお任せします。今から言う通りに止血して、この薬を塗ってください」

 

「大丈夫だよゼイユ。ウズ先生の薬はよく効くの。なんたってどく使いだからね」

 

「今のところ大丈夫な要素がないわ」

 

 なんだかんだ言いつつも、ゼイユは手際良くスグリの治療を進めた。ひとます安心だ。

 

「ねーちゃん、これしみる……」

 

「文句言わない。男の子なら我慢しな」

 

「うぅ……」

 

 手持ち無沙汰の間に、俺はアオイとハルトに詳しい説明をしてもらう。詳細の把握は大事だからな。

 

「その前に先生、さっきイイネイヌのわざ、思い切り当たってましたよね。怪我はしてませんか?」

 

「そうですね。毒攻撃でしょうか。まあ、軽いもうどくですね。ご心配には及びません」

 

「へーそう。よかったわね〜……じゃないわよ! 軽いもうどくって何!? 言葉の意味わかってる!?」

 

 よそ見をするのはよくないぞゼイユ。

 あと、この程度ならツバつけときゃ治る。

 もちろん言葉のあやですよ? 衛生的に唾液はよろしくないので、いい子は真似しないように。

 消毒・解毒を徹底しような。毒をそのまま摂取するなどもってのほかだ。同時にモモンのみを頬張るといいぞ。

 

 というわけで、情報をまとめるとしよう。

 

 キタカミの里に伝わる昔話は偽りだった。

 悪い鬼、オーガポンは心優しいポケモンで。

 三匹のともっこは、オーガポンの宝物を奪い、その報復として殺された。

 だが、かつてのキタカミの人々は鬼を恐れ、悪者であるはずのともっこを英雄視した。

 

 そして現代。

 オモテ祭りでオーガポンと遭遇したアオイたちは、鬼に忘れ物……碧のお面を返そうと考えた。

 ただお面が欠けていたので、今日はてらす池に修復用の材料を取りに行っていたそうな。

 

 スグリはスグリで、家で一人考え事をしていたところ、復活したともっこがのこのことやってきた。

 ともっこは村人にとっての英雄だ。なんとまあ、盛大な歓迎で迎えてしまったらしい。

 キタカミセンターに保管されていた鬼のお面……四枚あるうちの三つと、ご馳走を捧げて。

 

 ともっこは残る碧のお面を奪い、オーガポンに復讐するつもりなのだろう。

 しかしスグリが抵抗したことで最後のお面はともっこの手に渡らずに済んだ。

 

「ごめん……おれがもっと強かったら、鬼さまのお面を取り返せたのに……」

 

「それは違うよ。スグリのせいじゃない。それに、こんなに頑張って、お面を守り切ったじゃないか!」

 

「このお面を直してオーガポンに届けてあげよう。きっと喜ぶから。ね?」

 

「ともっこに盗られたお面も取り返すわよ。ついでに落とし前をつけてやらないとね……地の果てまで追い詰めて、二度と娑婆の空気を拝めない体にしてやるわ」

 

 うんうん。美しき友情かな。

 

「ですがドクターストップです(ギュッ)」

 

「先生はお医者さんじゃないのに」

 

 たしかに医師免許は持っていない。

 教員免許とポケモンリーグ公認のジムリーダー資格なら取得しているが。

 まあ自慢にはならないわ。俺が受かるのだから、さほど難しい試験ではないのだろう。

 

「自覚していないでしょうが、皆さんはともっこの毒を受けています。スグリさんは言うに及ばず。他の方も遠隔で少量の毒素を送り込まれているようですね」

 

 直接触れずとも相手を毒に侵す能力とはな。

 猿鳥犬のくせして実に厄介だ。うらやましい。

 

 知らずいつもより弱った状態で、ともっことバトルするのは体に堪えるだろう。

 ふざけた見た目だが長年祀られてきたポケモンだ。伝説には及ばないとしても、それに準ずる強さのはず。

 

「毒が体から抜けるまで無理は禁物です」

 

「大人しくしてろっていうの?」

 

「いいえ。あなた方にはオーガポンとの接触をお願いします。僕では警戒されてしまう」

 

「でも、ともっこを放っておいたら何をするかわからないですよ。……まさか先生一人で行く気ですか。もうどくを受けているのは僕たちと同じなのに」

 

「もう毒は治りましたから」

 

 この俺を誰だと思っている? シンオウ地方で一番の、どくタイプのエキスパートである。

 

 皆が戻るまで足止めすればいいのだろう?

 実に“単純”な話よ。“悪事”かます前にやればいい。

 

 鬼退治ならぬ、お供退治だ。

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