ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

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後半スグリ視点


069

 林間学校も終わりが近づいている。

 

 なぜかブライア先生を探して連れてきてくれと頼まれた俺はてらす池を訪れた。

 でもいなかった。他に心当たりないぞ。

 

 池のほとりにいるのは野生のドガースくらいか。

 じばく、だいばくはつ、みちづれ、おきみやげ。

 こいつら夏の蝉より儚い命をしてやがる。

 

 淡い光が水面に反射する光景は神秘的だ。

 BGMが爆音じゃなければなおよし。

 ここは亡くなった人に会えるという伝承があるそうな。前に覗いたが、池に映ったのは『自分の顔』でした。

 

「…………」

 

 人の気配がする。先客は静かに座り込んでいたらしい。ほなブライア先生とちゃうか。

 

 あれは……スグリ?

 思わず岩陰に隠れてしまった。なぜだか今の彼に声をかけるのは憚られる。

 

 スグリは黙って立ち上がり、こちらに気づかないまま、てらす池に背を向けた。

 

「お面? なんでこんなとこに」

 

 落ちているお面を拾ってスグリは首を傾げる。

 俺が落としたモモンのお面ですね。

 くっ、咄嗟に飛び退いたものだから。

 

「にへへ……そっか。いいこと思いついた。悪いけど借りるな。ちゃんと、あとで返すから」

 

 独り言の後、スグリはモモンのお面をしまい、乾いた笑いを浮かべて立ち去った。

 

 スグリよ。それ貸すのは別に構わないけどさ。

 めっちゃ通気性悪いよ。いいの?

 

 

 

 

 

 〜ブルーベリー学園〜

 

 スグリは学生寮の自室で荷解きをしていた。

 

 パルデアの大穴に関する調査が進み、引率のブライア先生が急ぎ学園に戻ることとなって。

 スグリとゼイユもまた、ブライア先生とともに林間学校を切り上げて帰ってきた。

 

 アカデミーの生徒はまだキタカミの里に滞在しているのだろうか。飛行機の時間が迫っていたので、別れの挨拶もなしに去ったのはみんなに申し訳ないと思う。

 

「大丈夫。きっとまた会える」

 

 林間学校の日々はとても色鮮やかで。

 スグリにとって苦くも喜ばしい思い出で。

 このまま時間が止まってくれたらと、ふと願ってしまうくらい甘美な宝物だった。

 

 だが、夢はいつか覚めるもの。

 

『ねえ、ひょっとしてオーガポンってさ……』

 

 スグリは主人公になれない。

 物語の一幕を飾っても、それはたった一頁。

 

『アオイとハルトについて行きたいんじゃない?』

 

 輝きの中心にいるのはいつだって『彼ら』だ。

 

 心を通わせて、共に戦った。

 でも最初に手を差し伸べたのはスグリではない。

 スグリがひとときの夢を許されたのは、いうなれば、物語に彩りを添える脇役として。

 

『よかったな。オーガポンを仲間にできて』

 

『ありがとう。また一緒に遊ぼう。約束だ』

 

『オーガポンも、仲間になってくれてありがとう』

 

 勝負なんて必要ない。だって無意味だ。

 はじめから、戦う前から負けていた。

 

 彼らと一緒にいるには物語が必要だ。

 ともに冒険する理由と、ゴールが不可欠だ。

 

 勧善懲悪のストーリーが最適だ。

 悪い敵に団結して立ち向かう。

 シンプルな方がわかりやすくて、創りやすい。

 

「そうすれば、きっと。みんなで」

 

 また宝物のような時間を過ごせる。

 主人公になれない自分でも、彼らの隣でキラキラと輝くことができるのだから。

 

「待ってるから……『主人公』」




鬼→スグリの好感度は原作より高め
みんな一緒がいいよね

可能性はあった
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