ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
ブルーベリー学園は危険に満ちている。
校内を歩けばそこかしこで勝負を挑まれ、部活棟では黒歴史を掘り返されるのだ*1。
なぜ俺のポケウッド出演作を網羅してやがる。
誰がズバットマンの人じゃい。スタントとスーツアクターのバイトまで把握されてるのは恐怖なのよ*2。
リーグ部では邪悪が同僚に魔の手を伸ばそうとするしさあ……成人男性を供物に捧げようとするな。あなたも率先して協力するんじゃありませんジニア先生。
なお邪魔すると海底遺跡に拐かされる模様*3。
実質これ生贄扱いなのでは。
「極めつけにこれですか」
テラリウムドームは四つの自然環境が再現されており、徒歩での移動が困難なほど広大だ。
よってそらをとぶタクシーが整備されている。鳥ポケモンの力を借りることで、ひでんわざを使わなくても楽に長距離移動ができる点は非常に素晴らしい。
問題は鳥ポケモンにある。
「やめなさい。髪と懐をついばむのはおよしなさい。そのイモモチは僕の昼食です。言っても聞かないようなら戦争ですよ頑丈持ちよろいどり……アァァァァァーーー!? 食べましたね容赦なくいきましたねッ!?」
エアームド。ガラルのアーマーガアと並ぶ、凶悪で恐ろしいポケモン。はがね・ひこうタイプ。
たった今、俺の弁当を食い散らかした輩である。
「その喧嘩、買ってやりましょう」
「す、すみませんすみませんお客さん! 普段はこんなこと絶対にしないんだけど……こらお前たち! それペッしなさい、ペッ!」
「何をふざけたことを。イモモチを無駄にすることは僕が許しません。残さず腹に入れなさい」
「じゃあどうしろと……?」
ポケモンとて生き物だ。しつけをしていても、イモモチを前にしたら辛抱堪らなくなってしまうのは当然ではないだろうか、いやそうに違いない。
はがねタイプでもイモモチを愛するものに悪いやつはいないと俺は信じる。信じたい。
だが、おかわりの要求は厚顔が過ぎるぞ。
よろしい。欲しければ力尽くで奪い取ってみせろ。それが野生のルールである。
おら真剣白刃取りぃ! 燕返し返し!
「騒動を確認。対話による穏便な解決を推奨」
「ネリネさま!」
つい先日見た顔だ。そうか、ブルベのそらをとぶタクシーは彼女が運営に携わっているのか。
「エアームドの行為を謝罪。代わりに、ネリネが可能な範囲で要求を受け入れます」
「つまり何でもすると?」
想定外だがこれは行幸だ。
ちょうど聞きたいと思っていた話がある。
「空飛ぶ丸薬のレシピを教えていただけますか」
ドームに自生する葉っぱをどうにかすることでクラフトできる、飛行能力を増幅するらしい薬。
ネリネが独自の調合で作成したそうな。
技術教師としては興味を引かれるものがある。
「構いません。ただ」
「ただ?」
「人間に効果があるかどうか……」
「僕が使う前提で話すのはやめていただきたい」
食わねーよ。それに飛べねーよ。
モトトカゲ*4じゃあるまいし。