ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
謎のチャンピオンはゼイユだった。
そしてテラスタルした謎のポケモンは、自らの力を制御できていない様子で暴走している。
全員が束になってどうにかなるものなのか?
っと、スマホロトムに着信だ。
誰だよこんなときに。
「はいもしもし?」
「私です」
オモダカ女史ですか。後でいい?
だが電話越しの声はどこか憔悴している。
「ウズ先生。今どちらに?」
「ブルーベリー学園です」
「……なるほど。ではブライア先生の居場所はご存知でしょうか。火急の要件でして」
「いえ、すみませんが。今立て込んでいるので後で折り返します」
「では簡潔に要点だけ。ブライア先生がパルデアの大穴に無断で立ち入ったと報告がありました。その際、同行者の少女が見慣れないポケモンを連れ出す映像が監視カメラに残されています」
スマホが受信した映像を投影する。
ブライア先生と? ゼイユと? あとテラスタル前の亀さんがばっちり写ってますね?
というか大穴はリーグで管理しているのでは。この映像だと職員が手助けしてるじゃん。責任者ー!?
「その少女とポケモンは今ここに。暴れてますが」
「こちらも様子のおかしい職員がいます。おそらく原因は同じでしょう。気絶させれば大人しくなりますので対応をお願いできますか」
「応援を寄越してもらえるとありがたいですね」
「その余裕がないと言ったら?」
一見いつも通りのようでガチトーンじゃないの。
さては向こうも相当やばいな。
「例のポケモンについて何か情報は?」
「すぐに送らせます。……お願いします、ウズ先生」
通話が切れると複数のメッセージが届く。
パルデアリーグとブライア先生の研究資料らしい。
円盤のポケモン、名前はテラパゴス。
冒険家ヘザーの手記に記された存在であり、大穴の結晶やテラスタル現象と深い関係があると。
他にはパラドックスだの、テラスタル現象だの云々が書かれているが、役立ちそうな記述はない。
せめて弱点とかないのかよ。
テラスタイプの名前の由来とかどうでもいい、なぜタイプ相性の考察をしないのだ研究者。
「先生そっちわざ飛んだ!」
「おちおち考えてもいられませんね……!」
結晶の照射を前転回避。
ついでにキズぐすりを投げて味方を回復する。
「アオイさん。状況は?」
「ダメ。テラスタルしないと攻撃が通らない」
包囲され、わざの集中砲火を受けるテラパゴスはたしかにまるで応えた様子がない。
かといってテラスタルをすると即座にエネルギーを奪われて相手の装甲が強化されるようだ。
「加えて、向こうのわざはどれも強力と。例の虹色のテラスタルと同様の仕組みですか」
すべてのタイプの力。たしかに創造神を連想するが、アオイはどこでそんなことを知ったのやら。
……図書館で神話の勉強をしていたら山男が現れた? どう考えても不審者だろ通報しろよ。
いや、今はそれどころじゃない。優先順位を考えろ。
「前に出ます。援護を」
「え? あ、はい」
飛び交うわざの嵐を駆け抜ける。
第一目標はゼイユの安全確保だ。テラパゴスの真後ろに立つ彼女を配慮すると戦いづらい。
まあ、接近したら標的になるのは当然。
テラパゴスのクラスター爆撃……もう呼び方テラスターでいいか。テラスターを避けてやつを迂回する。
牽制に煙幕を焚きつつゼイユのそばに。抵抗されると面倒なのでねむりごなを嗅がせて横担ぎで離脱。
ついでにテラパゴスのボールを見つけたが、うん、とっくに壊れて使えませんね。
あともうひとつ壊れてるが気にする余裕はない。
「ボールが有効なら楽だったのですが」
他に何か使える道具はないか。
あれでもない、これでもない……ん?
「この光は……」
ポーチの奥底が虹色に光っている。
光源は巨人の力で作られた十八のプレートに似て。
そのいずれとも異なる見覚えのない白い板。
「……そのもの、あらゆるうちゅうでポケモンとひとをみる」
裏の文字を読み上げると、プレートは籠いっぱいの光の玉に形を変えた。背負って投げろと。
まあいいさ。みんな悪気はないんだろ。
お前のせいで誰かが傷ついて悲しむ前に。
正気に戻ったゼイユとスグリが悩まないように。
沈めてやるよ、テラパゴス。