ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
我が校の図書館、配架めちゃくちゃじゃね?
司書教諭の業務もこなすべく、授業の合間に足を運んでいたところ、本の並びが不規則の極みすぎて仕事が全く捗らないという問題に直面した。十進分類法とは言わないから、せめて新書と文庫と雑誌は分けようぜ。
特に月刊オーカルチャーというオカルト雑誌があちこちの棚に点在しており、探すだけで一苦労だ。
生徒が返却したのかポケモンが棚に戻したのかは知らないが、きちんと元の位置に戻してほしい。折を見て図書館の利用方法についても指導した方がいいだろうか?
『サアナ』
「手伝ってもらいすみませんサーナイト。これを仕上げたら終わります」
月刊オーカルチャーのバックナンバーをファイル綴じにする作業も、ようやく目処がつきそうだ。ちらと内容を流し読みすると、ポケモンのような機械兵器の情報がつらつらと書き連ねられていた。胡散臭い。
「さて……また授業が始まる……」
「おや貴様は……奇遇だな」
席を立った瞬間、歴史のレホール先生に捕まった。
「どうされました? 僕に何か?」
「そう身構えなくてもいいだろう。ボール製作の授業、あれはなかなか興味深いものだと感心してね。温故知新……半ば忘れ去られた先人の技を拾い上げる姿勢が特にいい。ぜひ話を聞きたいと思っていたところだ。なに、そう手間は取らせない。二、三質問させてくれ」
どうやら拒否権はないらしい。まだ少し時間はあるから、始業時間までの立ち話程度ならいいか。
「答えられる範囲であれば構いませんが」
「では単刀直入に聞こう。あの技術をどこで学んだ?」
「親族に手先が器用な方がいまして。クラフトの基礎はその人から教わりました。以降は独学です。あとボール作りはガンテツさんに多少手解きを受けましたが、職人の才能はありませんでしたね」
「そういえば貴様はシンオウの出身と言っていたな……そうか……なるほど」
なるほどって何さ。そこでどうして俺の生まれが出てくるの? やましいことは何もないというのに、尋問を受けている気分になるぞ。
「シンオウ地方には、数多くの神話が残されているそうだな。たしか時間と空間を司る伝説のポケモン……ああ、名前はなんといったか」
「ディアルガとパルキア、ですね。古くにはともにシンオウ様と呼ばれ崇められていました」
「博識だな。そう、まるで――実際に体験してきたかのような語り口だ」
「いえいえ、まさか。僕がタイムトラベラーだとでも? レホール先生は冗談がお好きなのですね」
俺がシンオウ神話に詳しいのは前世でゲームをプレイしたからで、この世界の過去の時代に行ったことはないし、伝説のポケモンとエンカウントした経験だって皆無だ。
「では、授業がありますのでそろそろ失礼します」
ボロを出す前に、俺はそそくさと退散した。
この学校の女職員みんな怖えーよ。
技術室に入ると、何やら生徒たちが騒がしい。
「スマホをしまってください。授業を始めますよ」
「先生! 見てください!」
「はい?」
生徒の一人が差し出したスマホロトムには、有名な動画配信者のチャンネルが表示されていた。どうやら最新の投稿動画が問題のようで……あ"あ"!?
動画には、素手でモトトカゲを捕獲するトレーナーの人間離れした動きが収められていた。顔はモザイク加工されていて断定できないが、周囲の風景から推察するに。
「これ、ウズ先生ですよね!?」
「違います」
「いやでも背格好とか」
「人違いです。実は僕には生き別れの兄弟がいるんですよ(大嘘)。ということで感動の再会をするために出かけてきます。今日の授業は後日何らかの形で補填しますので。では失礼」
ちくしょうやられた。人の目が無いと思って油断したのが運の尽き、まさかあれを撮影されていたとは。
絶対に許さんぞ……ナンジャモぉッ!