ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

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番外編『LEGENDS 白の石像』
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 実家に帰らせていただきます。

 冗談混じりに休暇を申請したらクラベル校長も苦笑い。有給休暇じゃなくて資格支援制度の方で休みを取りなさいとか言われても。俺は別に……はい直します。

 まとまった休みをいただいてしまったぜ。

 

 帰省の連絡をしたら、すぐさま実家からファーストクラスの航空券が送られてきた。

 ただ嫌な予感がしたのでエコノミーに変更。

 差額料金は後で返せばよかろう。

 

 飛んでシンオウ地方。

 ただいま、我が第二の故郷よ。

 

 空港に降り立った瞬間、腰のボールが揺れた。

 手持ちの高揚が俺にまで伝わってくる。

 

 で、だ。

 

「なぜ出迎えにあなたが? 事と次第によっては、然るべき対応をしなければなりません」

 

「こっちのセリフだぜ。どうしてファーストクラスに乗ってないんだウズ。せっかく手配したのによ」

 

 ガラの悪い男、ヒゼンとは腐れ縁である。

 こいつはポケモンリーグの営業マン。

 元コトブキジム、つまり俺の担当だったのだ。

 

「先生、この人は?」

 

「知り合い?」

 

「僕はあなた達がこの場にいることにも疑問を隠せないんですよ、アオイさん、ハルトさん……」

 

 ファーストクラスのチケットが届いた?

 怪しい手紙をポンポン開けるんじゃありません。

 

「シンオウにようこそ、若きパルデアのチャンピオン! 思った通り、お前達からはキングな気配が漂っている! 強いトレーナーは大歓迎だぜ!」

 

 まあ、ヒゼンの企みだということは分かった。

 裏を返すとそれしか分からない……。

 

「俺はシンオウリーグ営業部長! 最高にキングな男! ヒゼンだ! よろしく頼むぜ!」

 

 は?

 

「あなたが部長? ポケモンリーグはニャースの手を借りないといけないくらい人手不足なんですか?」

 

「おいおい最高にキングなウズ。俺はニャースじゃねえ、見れば分かるだろうが」

 

 確かにヒゼンは有能だ。仕事はできるだろう。

 没個性の塊である俺を一端のジムリーダーとして整え、市場に売り出した実績がある。

 毒舌キャラ設定とか、衣装とか……インタビュー記事の校閲を取り消したこともあったな……右も左も分からない俺を(振り回して)支えた役者の一人なので感謝と恨みを半々程度に抱いている。

 でも上に立つタイプじゃねーだろお前はさぁ。

 

「とりあえず車に乗れ。コトブキまで送る」

 

 

 

 

 

 コトブキシティ。人が集う幸せの街。

 シンオウでも特に近代的な発展を遂げた都市であり、たくさんの人々が集まる大都会だ。

 ゲームだとナナカマド博士にポケモン図鑑を貰ってから初めて訪れる街。ポケッチが手に入る場所である。

 

 俺にとってはホームタウンであり、元職場という要素が追加される。懐かしい気分だ。時間があったらトレーナーズスクールに顔を出してみよう。

 

「祭りの時間だぜ!」

 

 ……余裕があれば、だが。

 

「わぁーすごい! 街中に飾り付けが!」

 

「屋台にブースに……先生、これは?」

 

 俺が聞きたいくらいっすね、はい。

 

 久しぶりのコトブキは様変わりしていた。

 都市全体が一体となったどんちゃん騒ぎ。

 まるで伝統的なお祭りのようだが、今世を生きるコトブキっ子の俺も初めて見るんですね。何これ。

 

「よくぞ聞いてくれた。キングなハルト」

 

「えっと、そのキングって……」

 

「深い意味はありません。気にしないように」

 

 子供の頃からの口癖なんだよな。キング。

 女性相手だとたまにクイーンも飛び出す。謎。

 

「最近コトブキシティに珍しいポケモンが現れた。そこで俺は考えた。これは祭りしかねえ……とな」

 

「珍しいポケモン? まさか野生ですか?」

 

「キングに心配無用だぜ。あいつらは大人しいし、いざって時のため、腕の立つトレーナーを呼んである」

 

 誰?と聞けば、もちろんお前という返事。

 ナチュラルに人員として組み込んでやがる。

 こちとら資格更新と休暇のために帰ってきたんだ、なぜボランティアでタダ働きせにゃならん。

 

「ウズ、お前ジムリーダーの資格更新期限が過ぎてるみたいだな。だが心配はいらないぜ。この俺がキングに話を通してある。祭りの警備をしてくれりゃ更新完了だ」

 

 それでいいのかポケモンリーグ。

 一応ジムリーダーって公認資格なんだぞ。

 本来は六時間超の研修、素行調査と筆記試験、ジムリーダー有資格者とのバトルで実力を示す必要がある。

 祭りの警備が楽とは言わないが……。

 

「お前なら問題ねえ。そうでなくたって、きっと手伝ってくれるんだろ?」

 

「ヒゼン……」

 

 へへっ、お前ってやつは本当に……。

 

「――せめて事前に話を通しなさい。社会人になって何年目ですか。あなたはいつもそうです、あの時も……」

 

「それじゃ早速だが説明をしていくぜ!」

 

 あ、こら逃げるな。この際だからわざマシンの在庫も引き取ってもらうぞてめー。

 

「ちなみにパルデアチャンプの二人は祭りを楽しんでくれていい。お客様の手は借りないぜ」

 

「当たり前です」

 

 マジでこいつ一回しばこうかな。

 

「それで珍しいポケモンとは何でしょうか。装飾の模様で予想はつきますが、念のため」

 

「見た方が早いだろうな。こっちだ」

 

 ヒゼンに案内された先は噴水前。

 テレビコトブキの向かいにある広場だった。

 祭りの人だかりは、しかし混乱に陥っており。

 

「やっべえですわ!? やっべえですわ!?」

 

「で、デゲスぅ!?」

 

 その中心でポケモンを繰り出す二人組。

 見覚えのある男女は元コトブキジムのトレーナーこと、おじょうさまのアコとにんじゃごっこのナイトウで。

 彼らがバトルしている相手は……明らかに平静を欠いて暴れる、異形のポケモンだった。

 

「あれが今回のイベントの目玉。やつらにちなんで、俺はこの祭りをこう名付けた」

 

 丸みを帯びた胴体。

 竜の上顎と下顎を模した腕。

 特徴的な点々マークの顔(?)。

 

 即ち、レジドラゴ。

 

「――キングレジ祭りだぜ!!!」

 

 言っとる場合かぁ!?




ヒゼン
シンオウポケモンリーグ営業部部長。
元コトブキシティポケモンジム担当。
最高にキングなウズの同期。
いつもコイキングを連れ歩いている。

ウズの目立ちたくない心理は理解しているが、そうは問屋が卸さない。
若いトレーナー育てるなら箔がないとなぁ!
悪名は無名に勝るのである。
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