ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

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 荒ぶるレジドラゴを鎮めよ。

 

 とはいえ俺の出番はなかった。

 アオイとハルトがあっさり倒したからだ。

 

「アコさん。状況は?」

 

「負傷者なし。周囲の被害は軽微ですわ。今はナイトウを使いに出して、混乱を落ち着かせております」

 

「よろしい。訓練は怠っていないようで何よりです」

 

 トレーナーズスクールに残した資料のあれこれ、マニュアルをしっかり活用してくれているようだ。

 いざって時に動ける腕利きがいると違うからね。

 

「それでレジドラゴに関してですが」

 

「今は落ち着いてますわね」

 

「見世物扱いが嫌だったのでしょうか?」

 

「いや、それはねえな。祭りに来た客が触ったり、よじ登っても、抵抗するそぶりは見せなかった」

 

 俺は視界の先、広場に座るレジドラゴを見やる。

 先程の暴れっぷりが嘘のように大人しい。

 微動だにしないので石像と間違えそうなくらいだ。

 曰く、昨日まではずっとこうだったとか。

 

「バトル中も敵意はありませんでした」

 

「なんか慌ててる感じ、みたいな」

 

 ふむ。ますます分からない。

 昨日まではよくて、今日は暴れる理由とは……。

 俺は様子を伺うためレジドラゴに近づいた。

 

『ざっ』

 

 レジドラゴは飛び退いた。

 

「…………」

 

 一歩、距離を詰める。

 

『くっ』

 

 レジドラゴは少し後退した。

 

「…………」

 

『ど、ど……』

 

 レジドラゴとにらみ合い、奇妙な膠着が生まれる。

 

 うーん。これアレだわ。

 もしかしなくても俺に怯えてるな?

 どうして。俺が何をしたって言うのさ。

 

「安心してください。あなたが暴れない限り、僕から敵対する意思はありません」

 

 本当に? みたいな仕草をするな。

 お前レジ系の例に漏れず無表情なくせして、やけに感情表現が達者だな。空気感がゆるいのよ。

 まるで親類縁者の仇を見るかのように。

 レジドラゴは俺への警戒心を緩めてくれない。

 

「選手交代ですわ。しっしっ」

 

 次に、雑に俺を追い払ったアコの番。

 

「ほーらおいでなさいまし。怖くないですわー。美味しいラーメンもありますわよ」

 

 レジドラゴはそっぽを向いた。

 

「なんですの!? こっちが下手に出りゃいい気になりやがりまして、いいご身分ですわね!」

 

「えーとアコ、さん? インスタントラーメンで気を引くのは難しいんじゃ」

 

「コトブキ一番の何が不満なんですのよ!」

 

「あなたうどん屋の娘でしょうに」

 

「うっさいですわねクソ恩師!」

 

 餌付けするにしても、もっとこう、あるだろ。

 イモモチとか。もりのヨウカンとか。イモモチとか。

 

「あ! ポフィン食べた!」

 

「よし。キズぐすりで回復完了」

 

 大人の見苦しい口論をよそに、アオイとハルトは傷ついたレジドラゴと打ち解けていた。

 やつは上機嫌でくるくると回転している。

 とりあえず、また暴走する様子はないな。

 

「一件落着でしょうか」

 

「そうですね。レジドラゴには、元いた台座に戻ってもらって」

 

 展示ブースというのだろうか。

 ポケモンの彫像や雪像を並べて鑑賞するスペース。その一角にレジドラゴは立っていたようだ。

 

「というより、レジドラゴが現れた場所を会場の中心にしたって表現が正しいな。スペースはキングに余裕を持たせてあるぜ。名付けてキング場だ!」

 

 ネーミングセンスくそダサちゃんか?

 

「ときにヒゼン。僕の目が確かならば、台座がまだ四つ空いているのですが」

 

「そうだな。他のポケモンは逃げちまったか」

 

「……アコさん?」

 

「ええ。あと四体、似たポケモンがおりましたので。その件については目下捜索中ですわ」

 

 なるほど、なるほどね。

 岩のようなポケモン、氷のようなポケモン。

 鉄のようなポケモンに電気のようなポケモンか。

 残るレジ系が揃い踏みってわけだ。

 

 キッサキ神殿に眠る巨人の王を除いて、だが。

 ここまでの符合でまったく無関係とは思えない。

 一応スズナに連絡しておくか……?

 

「ウズ先生、ちょっと」

 

「はい。なんでしょうアオイさん」

 

「レジドラゴが何かを伝えたいみたいで……大きな地図とかありますか?」

 

「トレーナーズスクールの備品にタウンマップがあるはずです。ですね、アコさん?」

 

「そう仰ると思いまして事前に準備しておりますわー! オホホホホ!」

 

 そうしてレジドラゴが示した点は。

 

「こうてつじま、テンガンざん、228番道路、たにまのはつでんしょ……ですか」

 

 どう考えても仲間の居場所だろうなあ。

 問題になる前に保護を試みたい。

 しかしレジ系が俺から逃げ出したと思われる以上、直接出向くのは悪手だろう。となると。

 

「ヒゼン。人手を借りても?」

 

「構わないぜ。アコとナイトウ、リーグから一人。すぐ動けるのはそれくらいだが」

 

「十分です。あなたを入れて四人ですから」

 

 お互い責任持ってキリキリ働こうな。

 

「アオイさんとハルトさんは待機を……」

 

 と言っても聞かないよな。知ってる。

 もはや言葉にするまでもなく、無言の抗議。

 連れて行けってことね。わーかったよ。

 

「失礼。先行した面々と協力して逃げたポケモンと接触。可能なら捕獲して連れ戻してください」

 

「「はい!」」

 

 はい元気なお返事ありがとう。

 実力はもはや疑いようもない、頼りにしてるぜ。

 

 俺? 近づくと逃げられるので万一の後詰めだね。

 気配消すのは疲れるからな……一部のポケモンは不思議パワーでこっちを察知するから苦手だわー。

 たとえばサイキックなエスパータイプとか。

 波動を感じ取るかくとう・はがねタイプとか。

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