ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
いざキッサキ神殿へ。
神殿にたどり着いた俺達を待ち受けていたのはハガネールによる熱烈な歓迎だった……。
そんな冗談はさておき、一応は歴史ある遺跡だ。資格のない部外者が侵入することは許されない。
事情を説明して大人組だけでの調査も考えたが。
「え、いーよいーよ。入って大丈夫!」
それでいいのかキッサキジムリーダー。
子ども達は喜んでるけども。
「パルデアのチャンピオンなんでしょ? それにウズさんが認めたトレーナーなら問題なし!」
「スズナさんの言いたい事、分かります。なんとなく……ですけど……くちゅん」
なんともはや、信頼がむず痒いぜ。
そんでスモモは何でいるの。スズナに会いに徒歩で雪山踏破? 慣れたらそんな寒くないって問題か?
……おーけー分かった、バトルもポケモン交換も後でやるから……別にシンオウジムリ全員とポケモンを交換してるわけでは……あるな……? わざと二人だけ仲間はずれにしてたとかじゃないからステイだ。それ以上詰め寄られると俺がしぬ。社会的に。
すんなりと入口を通過して、神殿の地下に。
ゲームでは地下五階が最深部だったはずだ。
床一面に氷が張っていて足場が悪い。
行きたいところに行けないもどかしさを懐かしく思いながら、今回は急ぎなので全てショートカットする。
「あの先生。僕ら壁は走れません」
俺も走りたいわけじゃねえのよ。
コツはクロバットに掴まって助走すること。
よいこは真似をしてはいけません。危ないのでね。
てか、君達ライドポケモンで崖登るじゃん。
「ロープを渡しますので捕まって。一人ずつこちらに」
「ハッハァ! やっぱキングだぜお前はよ!」
大声を出すヒゼンに野生ポケモンの相手を丸投げする。体力は温存するに越したことはない。
この面子を襲う野生ポケモンはいないだろうが。手練れ揃いだし、用心のゴールドスプレーを散布したし。
神殿内はどこか張り詰めた雰囲気だ。
緊張感とは少し異なり、そうだな……厳かという表現が適切か。ポケモン達も普段見慣れない俺達を警戒しつつ、遠巻きに眺めている、というより見守っている?
「着いたみたい。あれが」
「きょじんポケモン、レジギガス」
遺跡の最奥、巨人の王は静かに佇んでいた。
こちらの接近には気が付いているはずだ。
しかし石像のように微動だにしない。
「……寝てる?」
「四災みたいな封印状態だったりして」
「いいや俺には分かる。起きてるなレジギガス! 起きてなくたって構わねえ、今からこの俺がキングに起こすからだ!」
『レジジジジ……』
ヒゼンの阿呆な呼びかけが一体どれだけの効果を発揮したのか。レジギガスは体の中央にある三対の模様を明滅させて、こちらを認識する。
まず、アオイとハルトを見た。
次にヒゼンを見た。ここまでは来訪者(あるいは侵入者)を一瞥したという様子だった。
問題は最後。俺に視線を向けて。
『レジジ、ギガ』
もの悲しげに――明らかに、落胆した。
はっきり「お前は違う」と態度で示されて。
レジギガスがどこか遠く、俺という存在を通り越して、仄かに香る縁に想いを馳せて。
そのまま再び長い眠りにつこうとする。
「ちょっと待てよ」
待ったをかけるのはヒゼン一人。
「何を終わりにしようとしてやがる? まだ俺の用事は済んじゃいないぜ」
「こらヒゼン」
「黙ってろ。ここから先は俺の仕事だ」
ヒゼンはモンスターボール片手に、無防備にレジギガスの目の前まで歩いていく。
俺はすぐ飛び出せるよう身構えるしかできない。
「俺はヒゼン。シンオウポケモンリーグ営業部長。最高にキングな男だ。そんな俺だがよ、お前に言いたいことがあったんだぜレジギガス」
『ジ』
「こっちの提案は単純だ。俺と来い」
『…………』
「あぁ、別に即答するとは思ってねえよ。だから……ちっとそこで見とけ」
ヒゼンは更に歩みを進める。
振り返り、レジギガスを背にして立つ。
使い古したモンスターボールを片手に。
真っ直ぐな瞳で俺の目を見つめた。
「ウズ、バトルしようぜ」
「脈絡が掴めないのですが」
「キングじゃねえな。目と目が合ったらポケモンバトル、だろうが。初めてポケモンを貰った日から何も変わっちゃいねえ。俺もお前もポケモントレーナーだ」
「……そういえば、初めてのトレーナー戦はあなたが相手でしたね。忘れていました」
「忘れんな。俺のライバルはお前だったんだからよ」
「光栄ですね」
そうだわ。ご近所さんだったからな。
俺は祖父さんの手解きを受けていて、しかも前世の知識があった。最初ヒゼンをボコボコに叩きのめしてしまったのだ。今になって思えば鬼畜の所業だよ。
そんな事はともかくとしてだ。
今はバトルするタイミングじゃないだろ。
俺の答えはノー。当然断るだが……。
懐のギガトンボールが三つ、それぞれ揺れた。
なんだよ爺さん。勝負してやれってか。
ヒゼンとは関係ないだろ。え、そっちじゃない?
……ああ、そういう事もあり得るわけで。
遠い日の出来事なんて俺は知らない。
もはや影も形も定かではない。
ただ白い石像は、幾星霜を越え、しかと
であるならば。
「いいでしょう。その勝負、ポケモントレーナーのウズがお受けします」