ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

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 ナンジャモにカチコミなんじゃあ!

 捕獲したばかりのモトトカゲを駆り、やってきましたハッコウシティ。近未来風の垢抜けた街並みは自然の多いパルデア地方の中でもどこか浮いた雰囲気を感じるがそんなことはどうでもいい。

 

「ようこそハッコウジムへ。チャレンジャーの方ですか?」

 

「違……いえ、そうです」

 

 挑戦者ということにした方が話が早そうだ。

 

「ジムバッジの数はおいくつですか?」

 

「0ですね」

 

「わかりました。当ジムリーダーナンジャモと勝負するには、ジムテストをクリアする必要があります」

 

 やっぱり、いきなり本人と戦えるわけではないんだな。まあ俺もコトブキジムではチャレンジャーにテストらしいものを課していたから当然と言えば当然だ。

 いいさ、来いよ。やってやる。お題は何だ?

 

「ナンジャモの番組出演です!」

 

「え」

 

 また顔出しっすか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆の者~! 準備はいい? 『ドンナモンジャTV』の時っ間っだぞー!」

 

 ジムを出ると、音声と合わせてスマホロトムに四方を囲まれた。これからの言動は全世界に配信されるわけだ。

 

「ドモドモー! あなたの目玉をエレキネット! 何者(なにもん)なんじゃ? ナンジャモです! おはこんハロチャオ~! 挑戦者、氏……」

 

 俺の顔を見るなりナンジャモの声量がしりつぼみになっていく。どうやら頭の回転は悪くないようだ。この状況と自分の立場を即座に理解したと見える。

 

「ち、ちょっとターイム!」

 

 配信を待機画面にしたナンジャモは自ら姿を現した。

 

「やっぱり動画(あれ)?」

 

「どういうことか説明していただけますか?」

 

「えっと、あれはたまたまカメラに映り込んだというか、それを見て面白がった人が切り抜きで拡散しちゃったというか……ボクもヤバいと思ったんだけど火消しできないレベルでバズってて……まあそのおかげで? 元動画の再生回数はシビルドン登り〜……なんつて……」

 

「削除してください。こちらとしてはそれ以上を求めるつもりはありません」

 

「はい……ごめんなさい」

 

 これで禍根を断つことには成功したわけだが、現在進行形で広がる切り抜きの方は穏便な対処が難しい。ナンジャモが注意したからと言って全部は消えないだろうからな。

 画質が荒いから俺とは分からないのがまだ救いだが……軽く調べたらネットミームにまでなってるじゃねーかよ。おいこれどうすんだ。自分のコラ画像が電子の海に出回るなんて嫌だよ俺は。

 

「それ以上の話題になる動画を撮るのはどうでしょう? たとえば、お二人のポケモン勝負とか」

 

「「!」」

 

 こ、この声は……オモダカ女史。

 

「何やら揉めているご様子でしたので、僭越ながら口を挟ませてもらいました。ナンジャモさん、この方はアカデミーの教師ですが元ジムリーダーで相当の使い手です。他の地方の珍しいポケモンを使われるでしょう。きっと視聴者からの反応も良いと思いますよ」

 

「ほほーう? そういうことならボクはオッケー! あんなネタ動画なんて秒で過去のものにしてあげるよ! このインフルエンサーのボクがね! ……そしてまたボクの人気が高まってしまう……ニッシッシ……」

 

「だそうです。よかったですね、ウズ先生」

 

「……いいでしょう。のせられた気がしますが」

 

 というかタイミング良すぎだろう。この展開を予想して網張ってたんじゃないだろうな。

 バトル配信ね。トカゲ捕獲動画以上の評価を叩き出さなくてはならないわけで、しかもジムリーダーが相手となると手は抜けないな。それに……伝わってくるんだ、ボールの中からポケモンたちの喜びがさ。トレーナーとしては応えてやるしかあるまいよ。

 

 バトルコートに移動して、配信は再開された。

 

「はーい、皆の者ごめんね〜! ちょっと手違いがあったみたいなんだけど、今日はなんと特別ゲストをお招きしてるよ! はてさて、いったい何者なんじゃー?」

 

 ナンジャモが前座のトークをしている間に、俺は心の準備を整える。ジムリーダーとして戦うのは数年ぶりだから自信がないんだよな。お、カメラがこっち向いた。

 

「答えは……シンオウ地方の元ジムリーダー! どく使いのウズ氏だー! イェーイ!」

 

「どうもウズです。ニンジャモ」

 

「おっと、もしかして緊張してるー?」

 

「それはもう。人気者のナンジャモさんは慣れていやがるので分からないと思いますが」

 

「んー辛辣! これがどく使いたる所以なのかなー?」

 

「トレーナーの性格と使うタイプは関係ないでしょう。ナンジャモさんほのお使いなんですか?」

 

「まるでボクが炎上してるみたいにいうな!」

 

 よかった。ナンジャモは対応してくれるな。

 俺はジムリーダー時代、それっぽいからと毒舌キャラを演じるようポケモンリーグに命じられていたんだ。今考えると酷い話だが、当時の営業も没個性の俺を売り出すのに必死だったんだろうな。まあ黒歴史で負の遺産よ。

 

 それでも今は使ってやる、こうして毒舌ヒールキャラを演じればナンジャモのファンからヘイトを買える、俺を叩く事に集中すればもうネタ動画なんて作ってる暇はなくなるよなあ? まさに肉を切らせて骨を断つだ。ああ、明日から生きづらい人生が始まる……。

 

「そんなわけで今日の企画はこちら! 題して〜? 『どくVSでんき! どっちがビリビリ? ジムリの全力エキシビジョンマッチ!』に決定〜!」

 

「わー」

 

「ルールは手持ち六体のシングルバトル! 道具の使用は禁止、でいいよね?」

 

「はい。御託はいいので始めましょう」

 

「後で泣いても知らないからねー?」

 

 

 

 

「――頼みます、クロバット」

「――出番だぞ、タイカイデン!」

 

 

 

 ナンジャモの先発は海鳥に似た黒と黄色の鳥ポケモン。知識にないが呑気に図鑑を調べる余裕はない。

 今ある情報から考えて予測しろ、ナンジャモはでんきタイプの使い手、あの外見ならひこうとの複合か? 両タイプとも素早さの高いポケモンが多い、ジムリーダーの先発となれば明確な役割があるはず、怖いのはでんじはでクロバットの強みを潰されること。

 

「タイカイデン! おいか「ちょうはつしなさい」

 

 刺さった。……読みとは違ったけど。

 おそらくおいかぜで後続を加速させるサポーターなのだろうが、これで変化技は使えない。

 

「続けてとんぼがえりです」

 

 でんき技で落とされては困るので攻撃しつつ控えのポケモンとスイッチする。ここまでは想定内。

 

「ロズレイド、かげぶんしん」

 

「まとめてぼうふうでやっちゃえ!」

 

 俺が出した二匹目、ロズレイドへ目掛けて迫るタイカイデン。こちらは撹乱目的で分身を出すが、激しい暴風によりその大半が役割を果たす前に掻き消える。本体のロズレイドもかなりのダメージを受けてしまった。

 

「ねむりごなで「でんこうせっか!」

 

 先程の意趣返し。俺より先にナンジャモの指示が差し込まれて、呆気なくこちらは戦闘不能になった。

 

「お疲れ様です、ロズレイド……もう一仕事頼みますよ、クロバット。あまごいです」

 

「それってわざと? だとしたらボクを舐めすぎ! タイカイデン、かみなりをお見舞いしてやれー!」

 

 再度繰り出したクロバットが天候を書き換えて雨を降らせる、しかしそれは相手のタイカイデンにとっても有利に働いてしまう。かみなりもぼうふうも、天気が雨の時は必ず命中するからな。

 

 弱点かつ高威力の雷撃に打たれたクロバットが耐えられるはずもなく……だが、わずかに時間がある!

 

「ふきとばし!」

 

 強風にあおられたタイカイデンはナンジャモのボールに戻っていき、強制的にレントラーがバトルに出る。それを見届けたクロバットは今度こそ力つきた。

 これで互いの手持ちは4対6。戦局はナンジャモに大きく傾いた。

 

「……ありがとうございます、クロバット」

 

 やはり強い。ポケモン自体の能力もさることながら、技の練度、反応、そしてトレーナーの判断が超一流だ。これ相手にいい勝負をしろとかオモダカ女史も無茶を言うぜ。こちとらブランク有りまくり祭りですからね。

 

 だが、二匹の頑張りで仕込みは終えた。

 見せてやるよ。どく使いの戦いってやつをな。




覚えるわざの種類については過去作含めわりと何でもありの無法とします。
SVのようにいつでも思い出しや入れ替えが可能ですが、同時に使えるわざは四つまで(公式戦でも定められたルール)……と、まあ雰囲気でお楽しみください。
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