魔法少女アンダーバーエックス   作:MOPX

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朱里の奮戦!! 唸れ対艦刀!!

夢を思い出していた。

 

私が襲われて、私が助けて、私がそれを見てる、あの夢を。

あの時、助けに入ったのは、華美なドレスを纏った少女。

 

しかし、今まさに、『私』の手で支えられているのは、そのドレスを身に纏った少女だった。

窮地に追い込まれ、泣きはらしている。

助けに入らねば危ないところだった。

 

夢なんてやはり、夢ということか。

自分を都合よく守ってくれる者など、存在しない。

 

あるいは、だ。

 

これから夢でないことを証明するのか――。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと夕花……メチャクチャやられてたけど大丈夫なの?」

 

「うう……ぐす……わたしが……よわいから……ぐす……」

 

とりあえず、大丈夫じゃなさそうだ。

自分が泣きじゃくっているようで、何だかバツが悪い。

 

態勢を立て直そうとしてると、罵声が飛んできた。

 

「ははは!! 本当に情けない魔法少女っすね~。戦えなくなって介護してもらうなんて!! お母さんのおっぱいでも吸うっすか~……うお!?」

 

ブン、と赤く巨大な刀がダーク柴のいた位置に振り落とされる。

 

カラっと、下駄が一歩を踏み出す音がした。

 

「あなたの相手は私がするのです!!」

 

「ふん……!! 変身した私に敵うと思ってるっすか!! 赤の魔法少女!!」

 

朱里一人で?

私が止めに入ろうかと悩んでいると、朱里の持っている巨大な刀がより強く輝きを放った。

 

――ここは私が。

 

そう伝えているのだとわかった。

 

「すぐ戻るから……待ってて朱里!!」「うう……ぐす……うわああああん!!」

 

夕花、むっちゃ叫んでる。

ダーク柴によっぽど酷いことを言われたのか。

 

とりあえず安全なところへ運んで……それから……。

 

 

 

どうしよう。

 

 

 

「ああ……もう……!! 私も慰めたりするキャラじゃないんだって……!!」

 

「うう……あなたも……迷惑だったよね……私なんか……お節介で……」

 

「ああもう!! そういう言い方やめて!! 自意識過剰だから!!」

 

「じ、自意識過剰!? う、うわああああん……!!」

 

「し、しまった……」

 

夕花の泣きじゃくりは、もはや咆哮に近い。

このままでは戦うどころではない。

一方で自分もまた、自分自身に向き合わされていた。

 

 

 

どうすればいい?

 

いや、どうしたい?

 

考えてもみれば私は人が泣いたり、怒ったり、そうした揉め事から距離を置いてきた。

ケンカが起こって学級会が開かれれば、なるべく無言で通したし、SNSで炎上や揉め事の類を見ても特に何も感じず、無反応を通した。

 

今、その場に自分はいない。

そういうことにすればいい。

 

リスクを犯して、無理に行動する必要などないのである。

物心ついてから、ずっとそれを続けてきた。

 

 

 

言ってみれば私は、選択することにとても慣れていなかった。

 

 

 

どうする?

 

夕花をあやして、また戦ってもらうか?

もう無理そうだから置いといて、私も朱里に加勢するか?

 

いや、変身した夕花が敵わなかった相手だ。

朱里と一緒に逃げるのも手で……いや、逃げ切れるか?

 

「うう……私のせいで……しばも……あなたも……あかりさんも……みんな……」

 

「だから自意識過剰だって!! 間違ったことやってないんだったら胸を張ってよ!!」

 

「……まちがえてたのよ!!」

 

「何を!?」

 

「なにもかも……ぜんぶ……!! 流されるままにやってただけ!! 魔法少女をやっていたのも、私が戦うしかなかったから!!」

 

「……う」

 

思わず、唸り声をあげてしまう。

 

 

 

一緒だったんだ、見かけは活発に見えたこの少女も。

 

私と同じで、決めれないことを悩んでいた。

 

慰めれるはずがない。

だってそうだ。

 

自分で自分を慰めれる人間なんて、いない。

 

「ああ……もう……」

 

こうしている間も、朱里はダーク柴と戦っている。

何の迷いもなく時間稼ぎを買って出て。

 

それに比べて、自分はなんだ。

 

「……意気地なしの優柔不断」

 

「う……。やっぱり私のことをそう思ってたんだ!! びええええぇぇぇぇん!!」

 

「あ!! そうじゃなくて!! ああ、もう……!!」

 

ふと、脳裏によぎる。

この時代に飛ばされてから聞いていなかった、憎らしい声が。

 

――やっぱり私の助言が必要なんじゃないの?

 

頭で反響するように何重にも声がする。

ただの球体だったはずのあいつが、なぜだか笑っている気がした。

 

 

 

 

 

 

公園の奥では少女と少女が対峙していた。

漆黒のドレスに身を包んだ方――怪人が口を開いた。

 

「なかなかやるじゃないっすか……!! 赤の魔法少女!!」

 

「……」

 

「んー? せっかく話しかけたのに、だんまりっすか?」

 

「怪物と話すことなど、ありません」

 

「手厳しいっすねえ」

 

戦いは先ほどから膠着状態と言えた。

巨大な真紅の対艦刀。

これを警戒したため、怪人は積極的に射程距離には入れなかった。

 

しかし赤の魔法少女もまた、機動力が不十分であり距離を詰めれない。

結果として、互いが距離を測りながら、睨み合いのような状況が続いていた。

 

「ひとつ聞かせてください。あなた達は私のことを最強の魔法少女だと言った……あれはどういう意味ですか?」

 

「言葉通りっすよ? 『全ての私』が出会った中でお前は一番魔法力が高かった……最強の定義通りでいいはずっすよ?」

 

「……」

 

少女は、戦闘中であったが思案をする。

 

『出会った中で』

 

何気ないはずの一言が妙に、気になった。

それに自分が最強などと、そんな――。

 

 

 

「隙ありっす!!」

 

黒い糸が乱れ飛ぶ。

四方八方、縦横無尽。

 

ならばと、少女が刀を振るう。

 

阿狼大刀(あろんだいとう)!! 右往左往!!」

 

巨大な刀が、右へ左へ。

叩きつけるように力強く、全てを薙ぎ払うように。

 

まさに快刀乱麻。

赤い光が闊歩した後、糸は全て呑み込まれ、消えていった。

 

「面攻撃っすか……!! まともに食らったら変身でも致命的っすね……!! だが!! っす!!」

 

糸が再び少女へと飛ぶ。

先ほどと同じ要領で、刀が振るわれる。

180度撫でるように、ぶん回され――。

 

そして、向きを変えようとする一瞬、止まる。

 

「ここっす!!」

 

怪人がスカートから黒いエネルギーを噴出する。

通常では考えられない加速で、少女との距離を詰める。

 

先ほどの橙の魔法少女の攻撃の、真似。

あの魔法少女などもはや敵ではないが、身に付けている技に関しては掠め取るだけの価値があった。

 

おかげで、こうして奇襲に――。

 

「受け止めた……のです」

 

「ぐ……!!」

 

怪人の奇襲は失敗した。

静止したかに見えた刀は、そのまま勢いを付けて後ろへと向いた。

そのまま刀は、逆向き(・・・)に突き出された。

 

結果として、怪人の右ストレートは刀の柄で止められた。

 

「く……何者なんすか!! お前は!! どうしてここまで戦るっす!!」

 

「……信じているからです」

 

「……なに? っす」

 

「夕香ちゃんのことを……友達のことを……信じているから……!! 夕香ちゃんが諦めない限り、私も諦めない!! 私がそう、信じているからなのです!!」

 

「何っすか!? 全然わからないっす!!」

 

「怪人には、そうでしょう!!」

 

「……ちっ!!」

 

怪人が再び距離を取る。

戦いが終わる兆しは、依然としてなかった。

 

 

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