魔法少女アンダーバーエックス   作:MOPX

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合流!! 本物柴!!

「やった……!!」

 

脅威は去った。

ダーク柴はチリも残さず消えていった。

 

弾むような笑顔を夕花が見せた。

目は、彼女の姿を追っていた。

 

「……じっと見てるけど、どうしたの? あ~、さっきまで泣いてたくせに……とか思ってるんでしょ!!」

 

「いや、その……」

 

視線を思わず逸らしてしまう。

 

「笑ってる顔の方が素敵だなって、そう思っただけ」

 

「え……? そ、そうかな……?」

 

照れてぽりぽりと頭をかく少女。

やっぱり自分とは似ても似つかない。

 

 

でも、それでいいかと思った。

 

 

夕花が視線を落とす。

胸にあったはずのリボンはない。

心なしか、寂しそうなデザインになってしまった。

 

「リボン、どうしたの?」

 

「……。あいつにもぎとられちゃった……」

 

なくなったらもう一度作ればいい、というものではない。

魔法少女の変身は魔法力で形成される。

 

だからこそ、取られたリボンはもう戻ってこないのだ。

 

取られて、なくなったという認識だから。

 

 

 

だったら――。

 

 

 

「ふん!!」

 

「……!! あなた自分のリボンを!?」

 

自分の胸に付いていたリボンを引きちぎる。

驚く夕花へと、それを差し出した。

私のも戦闘で大分ぼろぼろになったけど、まあないよりはマシだろう。

 

「あー、なんだ。私にはやっぱり似合わないというか……。あげるわ。……魔法少女の愛と勇気の証なんでしょ?」

 

「……!! ありがとう、夕香……」

 

夕花が胸にリボンを付ける。

もとの橙のドレスにリボンの恰好になる。

 

夕花は嬉しそうに微笑んだ。

私もきっと、同じ顔をしていた。

 

「夕香、なんだかお母さんみたい」

 

ぶほっ。

 

 

 

「そ、それは老けてるみたいに聞こえるから……せめてお姉ちゃんにして……」

 

「えー、そう? ステキだと思うけどな……。じゃあ、ありがとうお姉ちゃん!!」

 

「もう……たぶん血は繋がってないでしょ私達……」

 

「えへへ……」

 

二人で変身を解除する。

 

こうして戦いは終わり、この町の平和は守られた――。

 

 

 

とは、いかなかった。

 

 

 

「夕香ちゃん……夕花さん……!! ご無事ですか!!」

 

朱里が血相を変えてこちらへと飛んできた。

お互い、怪我はないことを確認する。

 

朱里の姿を見た時、あの本体が消えたことで朱里を拘束していたリボンも消えたのだろうと思った。

 

だが、そうではなかった。

 

「あの"りぼん"……私の足から離れて飛んでいったのです!! 叩き斬れたらよかったのですが……」

 

「えっ!? ということは……!!」

 

驚く私をよそに、夕花が冷静に補足した。

 

「リボンは体の一部……それならまだあいつは生きてるってことだよ……!! いや、むしろリボンが本体だったのかも……!!」

 

「で、どうするの? 私達、けっこう消耗してるけど……」

 

夕花は、力強く頷いた。

もう迷いはないようだ。

 

「私、あいつを探すよ!! 夕香と朱里は待ってて。もともと私だけで戦うつもりだったし」

 

私と朱里は顔を見合わせる。

こちらも、いまさら必要ないやり取りだったかもしれない。

 

「私達も付いて行くわよ。ここまで来て帰るなんて中途半端でしょ」

 

「はい。夕花さんのお手伝いをして、この町を守るのです!!」

 

「二人とも……!!」

 

感極まって抱き付いてきそうな夕花をいなして、私達は歩を進めるのだった。

 

 

 

夕花が再度変身して、意気揚々と前を歩く。

胸にあるリボンは、心なしか嬉々として輝いていた。

もう何も心配はいらなそうだ。

 

朱里が私の隣に寄る。

 

「夕花さん、よかったですね。……リボン、さしあげたのですか?」

 

「うん、私にはやっぱり似合わないからね。愛と勇気の証らしいし」

 

ふっ、と笑みがこぼれる。

アニメか漫画みたいな話だと思うが、それも悪くない気がする。

 

少なくとも、夕花にとっては意味のあるものなのだ。

 

「どうしたの? 朱里も私のリボンほしかったとか? なーんて……」

 

「……」

 

「……朱里?」

 

「いえ、何でもありません。行きましょう」

 

「あ、待ってよ朱里!!」

 

カラカラと下駄の音が先行し、慌てて付いて行くのだった。

 

 

 

 

 

「その通りだなんて……言えるわけないのです」

 

 

 

 

 

 

商店街はものものしくなっていた。

つい先ほどまでモンスターが公園に大量にいたからだろう。

 

等間隔で電柱のように伸びたスピーカーから、モンスターの現状がアナウンスがされている。

仕留め損ねた個体がいるその情報は、正しく伝搬されているようだった。

慌ただしく、人が動く中を橙の髪の少女――三吉夕香は大きな端末を両手で抱えて通り抜けていった。

 

後ろから、追いつく。

 

「夕花、それってもしかして……」

 

「うん、モンスターを探索する最新の機械!! 伸びたアンテナを通して自分の魔法力をセンサー替わりに使えるの!! あなたたちの時代にもあるの?」

 

「いや、うん、あるにはあるけど……」

 

片手で持てるサイズだよ、とはさすがに言えなかった。

 

 

 

「まるで"すぱい映画"に出てくる秘密の道具なのです」

 

「ゲーム機は? 携帯型のゲーム機って昔はあれくらいデカかったんじゃないの?」

 

「"げーむぼーい"はちゃんと持ち運べる大きさなのです!!」

 

朱里はぷんぷんと態度に出した。

本気で怒ってはないだろうが、ちょっと地雷を踏んでしまった。

2000年を舐めすぎか、私。

 

 

 

夕花の手にした持ち運ぶのに不便なサイズの機械が、ピピーと甲高い音を上げた。

 

「……!! 近くにいる!!」

 

「あそこなのです!!」

 

朱里の示した方向で、真っ黒なリボンが、こちらを向き宙に浮いている。

商店街という日常の光景に混じったそれは、間違いなく異物だった。

 

夕花の肩がわずかに震えているのに気づいた。

手をそこに乗せる。

 

「夕香……?」

 

「大丈夫、あなたは愛と勇気の魔法少女なんでしょ? またやっつけてやりましょうよ、あんなやつ」

 

「……うん!! ありがとう」

 

――茶番はそこmadeっすyo……。

 

リボンが弾けるように黒が氾濫する。

一度ドロドロな液体になったそれが、人の形を作る。

 

ドレスと体が混じり、ドロドロに溶けあったかのような、異様な姿を。

 

「ma……ほう……syou……女……消してやる……ssu……」

 

周囲から悲鳴が上がる。

だがこいつの目的は、もはや魔法少女そのものみたいだ。

だったら、私達が抑えつけておけば被害は出ないはず。

 

私が変身をしようとすると、朱里が対艦刀を構え、一歩前へ出た。

 

「こいつは私がやるのです」

 

「……朱里? なんで? 三人でやろうよ」

 

目の前の小さな少女が、振り返らないまま答える。

 

「いえ、こいつを取り逃がしたのは私の責任なのです。それに夕香ちゃんも夕花さんも疲れている……ここは私がやるべきなのです」

 

「でも……」

 

「もうkattaつもりssuか……まhou……しょうjo……おほん。口と喉が上手く形成できたっす。普通にしゃべるっす」

 

「どういうことなのですか!?」

 

気勢良く発する朱里に、怪人がせせら笑いながら答える。

 

 

 

「簡単な話っす。私を倒しても、お前らはモンスターを倒すことはできないっす。私は"モンスター"の一部にすぎないっす。この世界を、ぜーんぶ取り込むまで止まらないんすよ。ちまちまと寄り合ってる人間なんか及びもつかないんすよ」

 

夕花が啖呵を切った。

 

「何をわけのわからないことを……!! 人間はちまちま集まってるんじゃない!! 互いに助け合い、協力しあえるの!! 私達、魔法少女は悪いやつに絶対に負けたりなんかしない!! 」

 

「あっはは!! 私にボコボコにされてた魔法少女が言うと説得力が違うっすね!!」

 

「……っ!!」

 

怪人の高笑いが、鳴り響く。

 

夕花の肩がまた、震えた。

やっぱり前の戦いの影響が残っているらしい。

 

 

 

怪人が笑うのを止めた。

 

「さあ、これからが本当の戦いっすよ……!! 真の力をみるがいいっす……!!」

 

「二人とも!! 下がるのです!!」

 

黒い渦が、怪人を中心に発生する。

まだこんな力を隠し持っていたなんて……。

 

怪人がその力を蓄え、黒いオーラを放っている――。

 

 

その時だった。

 

 

場違いな紫の巨大な光柱が、怪人の隣に立ったのは。

 

「……!? 何あれ!?」

 

「わからない……モンスターが何かしたの?」

 

私と夕花がうろたえ、怪人の方を確認する。

 

「何っすか!? 何っすかこれは!? 魔法少女!! この巨大なエネルギーは!!」

 

怪人も普通にうろたえている。

じゃあ一体誰が何のために……?

 

 

 

朱里だけは冷静に、その光を見詰めていた。

澄んだ赤い瞳で。

 

「あれは、魔法力なのです……!!」

 

魔法力は魔法少女が有しているもの。

ということはだ――。

 

紫の髪をした友達の姿が、脳裏によぎった。

 

 

光の柱が、細くなり消える。

そこに残っていたのは、紫の髪で、片眼を隠した少女――。

 

「ふう……転送完了っすか。初めてだけどスリリングっすね、なかなか」

 

 

 

「柴!!」「柴ちゃんなのです」「……柴!? どうして……!? あなたは……!!」

 

紫の光を身に纏い、私達のよく知る友人の姿がそこにあったのだ。

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