魔法少女アンダーバーエックス   作:MOPX

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成人化したライバル!? 瑠璃の珍道中!!

 

ワタクシ、姫小路瑠璃は未来を担う小学六年生。

魔法少女として日夜、その力を平和のために奮っていたのですが、ひょんなことから荒野へと放り出されてしまいました。

この世界でも私を待ち受けていたのはモンスター。

 

きっと私の中にある英雄素質的なアレが敵を引きつけてしまうのでしょう。

ヒーローのつらいところですわよ……。

 

「嗚呼、私はみんなを守るために……」「ふざけるんじゃねえ!! お前が敵を呼び寄せてるんだ!!」

 

これをテーマにするだけで1話つくれてしまいます。

 

 

 

――KANNWA・KYUUDAI.

 

怪物との死闘で私の精力も尽きかけんとした時……奇跡が起こったのです!!

我がライバルにして親友、心の友の宮寺朱里さんが、しなやかさとふくよかさを兼ね備えたボディラインとなり、私を助けてくれたのです!!

 

かくして大きくなった朱里さん(仮)におでこにキッスをされた私は、荒野のど真ん中で青く発光しているのでした。

 

 

 

「ふおおおおぉぉぉぉ!? ワタクシの体がどこまでも蒼く蒼く……!! 青色発光LEDなど目じゃありませんことよーーーー!?」

 

「これは魔法力譲与を応用した能力把握方法。つまりあなたの力を解放して、使えるようにしたのですけど……」

 

「つまり潜在能力解放ですわよーーーー!? ここにきてパワーアップするなんてワタクシやっぱり『持って』ますわああああぁぁ!!」

 

ライバルとのキスで覚醒。

実に主人公的ではございませんこと?

 

……おでこに一方的にされたのが、不本意ではありますが!!

 

「どうせならもっとロォマンチックなシィチュエーションで……!! はっ!! ヤマシイことはございませんから勘違いなさらぬことね朱里さんーーーー!?」

 

「そのことなんですが……」

 

「なんでしょう朱里さん!! あなたとワタクシは宿命のライバルですが恩はもちろん忘れませんよ朱里さん!! ですが調子乗らないことですね朱里さん!! この借りはいつか必ず返しますわ朱里さんーーーー!!」

 

「朱里さんとはどなたでしょうか?」

 

「……ほへ?」

 

 

 

真っ赤なお目目に長い髪。

おまけにキャラ性をこれでもかと表現した巫女装束的ピチピチバトルスーツ。

これが朱里さんでなくて何なのか。

 

冗談は胸だけにしてほしいですわ。

 

「名乗り遅れました。私は宮堂輝里(みやどうかがり)。この地域をおさめる魔法少女をしています。あなたは? 見たことのない子だけど……別のムラからの伝令かしら? もしかして迷子?」

 

「あ、あうう……。何を言ってますの……?」

 

穏やかなムードから一転、急に尋問みたいなノリになり私に年相応の防衛機構が働きます。

すなわち、泣いてしまいました。

 

この防衛機構、ワタクシは体質のためか良く動作するのですが、決して泣き虫ではございません。

 

「ご、ごめんなさいね!! いきなりワッと言われても困りますよね……!! どうしよう……。さっき倒したのは”ボス”じゃない……つまりまだこの地域は安定していないからまだ探さないと……」

 

「……まだ強いやつがいますの?」

 

「ええ、そうですが……。いったんムラに戻ってあなたは、休んでいてもらえればと。……別のムラの魔法少女、ですよね? あれ、でも服があんまり見ないような。せーらー服、というやつでしょうか?」

 

「……」

 

「えっと……? どうしましたか?」

 

「ワタクシ、この世界を守りにきたヒーロー魔法少女ですわよ」

 

「ええええ!? ヒーロー魔法少女!?」

 

「ええ。私の出身は全くの別世界。何やら混乱に陥っているこの世界に流れ着いたのです」

 

 

 

そう、これは完全に異世界に飛んだ救世主文脈。

自分ですら気づいていませんでしたが、そういうことでしょう。

 

「そうだったのですか……!! そうとは知らず無礼を……!! しかし、あなたの魔法力はものすごい高いわけでもありませんが……?」

 

「こ、これから頑張るのです!! 少しワタクシよりも大きいからと言っていい気にならないことです!!」

 

「そ、そうですね……ごめんなさい!! とはいえ、いきなりモンスターと戦うのも危ないですからいったんムラに……」

 

その時でした。

ほんの数十秒前まで聞いた気がする、巨虫のうめき声が聞こえた気がしたのは!!

 

 

 

「グギャアアアア!!」

 

 

 

「本当に出てきましたわああああ!! 100メートル程度先でしょうか!? さっきより一回りも二回りもでかいですわああああ!! 絶望・DE・SU・WA・よーーーー!!」

 

「どうやらあいつが報告にあった首魁のようです……!! 脅威度は7コンマ0から7コンマ2といったところでしょうか……」

 

「な、ななぁ!? ウチの地元で出たらてんやわんやの大騒ぎになるレベルですわああああ!? あか……じゃなくて輝里さん、あんなのと常日頃!?」

 

「いえ、勝てるかはわかりません。実力でいえば、私が負けてもおかしくはないでしょう」

 

「だ、だったらどうして……そんなに落ち着いていますの!?」

 

「決まっています」

 

巫女装束に身を包んだ、その人から私へと微笑みが返されたのでした。

 

「私は魔法少女ですから。……ムラのみんなを、大切な人を守りたい。ただそれだけです」

 

 

 

大きな朱里さん……そう呼ぶのはもう失礼でしょう。

彼女は信念を持った一人の人間だった。

 

体が大きくとも変わらないその志は、正に『魔法少女』と呼ぶにふさわしいものでした。

 

声をかけようとしたその時には、既に輝里さんはモンスターの元へと飛んでいました。

先の戦いでもわかる通り、輝里さんは遠距離攻撃を得意としている様子。

……私を巻き込まないための配慮かもしれません。

 

 

 

しかし、さっきも言っていたではありませんか。

自分は勝てるかわからない、と。

 

この姫小路瑠璃12さい。

決死の覚悟で戦う魔法少女を、指をくわえて眺めているほど薄情ではございません!!

 

「お、お待ちになってくださいまし~~~~」

 

靴に砂が入ってザラザラする感触を我慢しながら、私はその後を追うのでした。

 

 

 

 

 

 

「千本刀・千雨(ちさめ)!!」

 

赤と白を基調とした戦闘服に身を包んだ魔法少女が、無数の刃を黒い巨虫へと放つ。

虫の腹に当たる部分を削り取るも、その勢いは瞬く間に落ちた。

 

単純に、力が不足しているのだ。

赤の魔法少女も子供の頃は巨大な刀を創造し、それを振り回して戦っていた。

あるいはその戦法なら一瞬で、この巨虫を引き裂けたかもしれない。

 

だが、それはもうできない。

 

宮堂輝里が大きくなるとともに、皮肉にも刀のサイズは小さくなっていった。

小さな頃にはあった万能感に、いつまでも浸れなかったのだ。

 

その代わり、彼女は手数を増やした。

大きくなったら味覚が変わるように、輝里は知識と技術に根差した戦法にシフトしたのだ。

 

それが、宮堂輝里が今の戦闘スタイルとなった理由だ。

 

なおも暴れ回る巨虫を見て、輝里が歯噛みする。

 

もっと自分に力があれば、と。

 

 

 

視線を外さず、怪物の動きを見極めていると妙なことに気づいた。

怪物が己とは違う方を向いているのだ。

 

今、この場にいる者と言えば――。

 

「危ない!!」

 

赤の魔法少女は足に力を溜め、先ほど会ったばかりの少女へと急加速した。

 

 

 

 

 

 

「うおおお!! こっちにきてますわああああ!!」

 

ビシュンビシュンビシュンビシュン!!

 

「グオオオ……!!」

 

「ぱ、パワーアップしたワタクシの力が通用しない……!? なんて敵ですの!! なんて敵ですの!!」

 

驚きのあまり同じ言葉を二回繰り返してしまいました。

そしてこれだけ攻撃を繰り返せば、相手も黙ってはいないのが道理です。

 

ぱっくりと口のごとく開いた大穴がこちらへと迫り――。

 

 

「冷"静"に"実"況"な"ど"し"て"る"場"合"で"は"あ"り"ま"せ"ん"わ"あ"あ"あ"あ"!!」

 

 

視界が覆いつくされ、真っ暗。

失神しかけて、こけてしまいました。

 

いっそこのまま気を失った方が楽かもしれません。

痛みすら感じぬまま、ひと思いに――。

 

 

「そ"れ"は"そ"れ"で"い"や"で"す"わ"あ"あ"あ"あ"!!」

 

 

最早、叫び声というより獣の咆哮。

ノドが千切れんばかりの痛みをうったえている。

 

 

 

その瞬間でした。

 

赤い光が、目の前に浮かんだのは。

 

「っ……大丈夫ですか?」

 

「輝"里"さ"ん"!! あ"り"が"と"う"で"す"わ"あ"あ"あ"あ"!!」

 

巨虫の動きが、輝里さんの目の前で抑え込まれています!!

 

刀がまるで輪のように!!

日輪のように円を描き、結界的なアレを形作っていたのです!!

 

ですが、焦燥はむしろ募っていきます。

 

黒い虫がガンガンと!!

巨体にものを言わせて結界的なアレを小突いているのです!!

一撃ごとに輝里さんの顔が苦痛に歪んでいました。

 

「ぐっ……かはっ……」

 

「だ、大丈夫ですの!?」

 

やっと普通にしゃべれるようになったワタクシ。

しかし事態はむしろひっ迫していたのです。

 

「グオオオ!!」

 

「け、結界がああああ!?」「……!!」

 

刀が、粉々に砕かれていくのが目に映りました。

 

「きゃあああああぁぁぁぁ!!」

 

今度こそ本当に、巨虫の一撃を受け――。

私は思わず目をつぶったのでした。

 

 

 

――。

 

 

 

まだ、生きている。

 

恐る恐る目を開けるとそこには――。

 

全身ボロボロの輝里さんが、私を抱え込むように守っていたのです。

 

「か、輝里さん!!」

 

「ぐ……だいじょう……ぶ……ですか……?」

 

「言ってる場合ですか!? あなたが……!!」

 

恐怖を通り越したのか、私の頭は妙にすっきりと理路整然と状況を把握しようと努めていました。

おそらくは輝里さんのスーツはこの世界の技術で、魔法力を防御機構に変換しているのでしょう。

そして、輝里さんの身を――いや、私の身を守るために衝撃を一手に引き受けたのです。

 

「あはは……こうやって怒られるの……やっぱりあなた……あの子に似てるかも……」

 

輝里さんの発言の意図はわかりません。

 

この状況でわかることといえばひとつ。

 

自分のせいで、取り返しのつかない事態が起こってしまったこと。

 

 

 

私は自分が泣いていることに気が付きました。

 

「なにが……なにがヒーロー魔法少女ですか……!! 意味もなく突っ込んで……足を引っ張っただけで……」

 

「……いいんです」

 

「なにが……!? わたし、ウソを言ってた!! なにもできないくせに……ただのなきむしなのに……」

 

「子供はみんな……未来を担うヒーローなんです……」

 

「……!!」

 

巨虫は輝里さんとぶつかった反動で、しなるようにその巨体を振り上げていました。

今度こそ、私達を押し潰すつもりなのでしょう。

 

渇いた音が、二発。

 

芋虫のどてっぱらに、青い弾丸が命中しています。

それから程なくして、自分の手が放ったものだと気づきました。

 

「うおおおおぉぉぉぉ!!」

 

吹けば飛びそうな、小さじ一杯もないだろう勇気を。

どこにも行かないように握りしめて。

 

私は蒼い弾丸を撃ち続ける。

 

臆するな、瑠璃。

 

 

目の前の自分をかばった人間を見捨てて逃げ出す?

 

 

ここで逃げ出して、なにがヒーローか!!

目の前の人間も助けれず、なにが英雄か!!

 

蒼き雲の下の狂騒曲(うおあおおおおぉぉ)!!」

 

不規則に撃ちこまれた弾丸の一発一発が、怪物の巨体を揺らす。

普段の全力の一撃を、連続で叩き込んでいる感触。

そう、確かな手応えはあった。

 

あったのだが――。

 

 

 

「グ……グギャアア……」

 

「……まだ……生きてる……!!」

 

やはり、力不足ということなのか。

後ろで輝里さんの「逃げて……」という弱々しい声が聞こえます。

 

しかし私も腹を決めました。

どんな手を使おうが、こいつは倒す!!

 

そう決意した瞬間でした。

 

あらぬ方向から飛んできた、蒼い(・・)巨大な弾丸が巨虫をとらえたのは。

 

「グギャアアァァ!!」

 

「な……!? これはもしや……このドタンバでビットを飛ばすオールレンジ的な能力に覚醒したやつですの!? ワタクシの勇気が生んだ奇跡!! やっぱり持ってますわああああぁぁ!!」

 

 

――そんなわけないでしょう!!

 

 

遠くから、至極真っ当なツッコミが飛んできます。

それは弾丸が放たれた彼方から。

 

やはり蒼い(・・)光を纏った人影が、こちらへと飛んできたのです!!

 

「あの子は……!! 来てくれたんだ……!!」

 

後ろで輝里さんが華やいだ声を出します。

ワタクシ少し妬けてしまいました。

この状況で助けにくるなど正にヒーロー。

 

一体、どんな人で――。

 

蒼い影が目の前に降り立った瞬間、ワタクシ、思わず息を飲みました。

 

 

 

――長く美しい蒼い髪。

――宝石を思わせるきらびやかな瞳。

 

――そして両手に握られていた、二丁の蒼き巨銃。

 

そうその姿はまさしく。

 

「大きくなったワタクシですわああああぁぁ!!」

 

 

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