魔法少女アンダーバーエックス   作:MOPX

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波乱のオープン!? 友情と鉄球のマリアージュ!!

「ネオ・ダーク柴……? いったい何すか、それは? あとしゃべり方が絶妙に聞き取りづらいっす」

 

「聞きたいssuかあ……魔法少女ぉ……? 地獄から甦り、パワーアップしたんsuよ……多くのモンスターを吸収統合することで!!」

 

「……!! 落ち込んでる場合じゃない……!! 柴ちゃん!! 早くこいつをいっしょに倒すのです!!」

 

「わかってるっすよオラァ!!」

 

ぶん投げる。

糸を丸め、紫の鉄球を。

 

バシィ!!

 

「ふん……こんなもんsuか魔法少女……? がっかりssu……」

 

「攻撃が受け止められたことより、露骨な見下し口調が腹立つっす……!!」

 

「……柴ちゃん!! 私がやるのです!! 出でよ!! 阿狼(あろん)……」

 

「おおっとそこまでssuうううう!! あれを見るssuよ魔法少女ぉ!!」

 

「な……あれは!!」

 

喫茶店の中央にあった大型筐体に、グルグルと黒い糸が巻き付けられていたっす。

これはつまり――。

 

「人質ならぬモノ質ssu!! モノジチ……モノジチ……言いにくいssuねええええ魔法少女おおおお!! あーっはっはっは!!」

 

「何がおかしいっすかてめええええ!! 宮寺ぁ!! 対艦刀をぶち込んでやれっす!!」

 

「く……ダメ……なのです……」

 

「宮寺ぁ!?」

 

「前の戦いで私は大型筐体を盾にしてしまったのです……これ以上、巻き込むわけにはいかないのです……」

 

「喫茶店に持ち込む時点で大概だと思うっす」

 

「ククク……そのこだわりこそが魔法少女の隙ssu……さあて、それじゃあ好き勝手させてもらうssuかね……それ!!」

 

棚に糸が――。

目で追った時にはもう遅かった。

 

派手な音とともに、粉々になった破片が床にばらまかれる。

棚に小綺麗に並べてあった、カップ類が。

 

宮寺が小さく悲鳴を上げる。

少し、体温が上がる。

 

「や……やめるのです!! 記念すべきオープンの日にこんな……なんて酷い……」

 

「一体なんの目的っすか!! クソみたいなしゃべりのモンスター!!」

 

「ククク……目的ssuか……。知れたことssu……。モンスターのやることといえばただ一つ……ssu」

 

「そのしゃべり方やめろおおおお!!」

 

ぶん投げた紫の鉄球が空を切る。

扉にめり込むイメージで、球は止まった。

 

 

 

瞬時に移動していたクソ口調の人型モンスターは、扉側から向かって右へ。

うっとりと虚空を見詰めていやがった。

 

「モンスターの目的……無限に増え、無限を生き、その外側へと向かうこと……そしてそのために、ダーク柴の欠片が他のモンスター達と融合して復活したのが私ssu!! しょせん人間をベースにした魔法少女にはできない芸当ssuよーーーー!!」

 

「この世界をめちゃくちゃになんて……させないのです!!」

 

「ククク……威勢だけは良いssuねえ魔法少女。こーんなチャチな喫茶店なんか作ってる癖に」

 

「……!!」

 

宮寺がうつむくように下を向いたっす。

 

「だいたいなんssuか? 小学生で働くの労働基準法でアウトssuよ? まさか……そんなことも知らないで経営しようとしてたssuか!?」

 

「それは……知っています……ですがその……」

 

「かあ~ダメssuね~外で会話聞いてたssuけど、こんなのが店長なんて店の程度もわかるもんssuね~」

 

宮寺が、唇をきゅっと噛んでいたっす。

 

「内装も暗くて地味だし店員の対応も最悪ssu。猫耳を付けてるのも意味不明。自己満足のクソ店舗ssu。お店たためば? ギャハハハハ!!」

 

「……」

 

宮寺の眼が赤くなっていたっす。

それはきっと魔法力じゃなくて――。

 

 

 

「ギャハ、ギャハ、ギャハハハハ……」

 

「おいっ」

 

「ギャハ……」

 

「死ねオラァ!!」ブォン!!

 

「ぶへへへへぇぇ!?」ゴッ!!

 

 

 

気付いた時には紫の球を憎たらしい顔にめり込ませていたっす。

自分、行動した後に考えるので。

 

「や、やったssuね……モノジチのことを忘れたssuか――あれ……反応が、ない!? 糸が動かない!?」

 

「テメーが気持ち良くしゃべってる間に全部切ったっす。こういうのは宮寺より私の方が得意っすからね……」

 

さっき扉にめり込ませた球。

あれを消さずに解いて、細い線にしていた。

ピアノ線のように鋭く、奴と大型筐体を繋ぐ糸を全部切っていた。

 

「ククク……よくそんな間抜けな魔法少女の味方をするssuねごふ!?」ゴッ!! ゴッ!!

 

「うちの店長を悪く言ってんじゃねえええええ!!」ブンブンブンブン!!

 

「柴ちゃん……!!」

 

右に左に。

紫の球をぶち当てる。

 

「確かに宮寺の経営にはツッコミどころがあったかもしれないっす……!! 資金繰り……材料の調達……衛生管理……経営許可……私だって疑問に思ったっす!!」ブォンブォン!!

 

「な、ならばなぜグヘエ!?」ゴッ!! ゴッ!!

 

「だからといってその気持ちを!! やろうとしたことを嘲笑うなんて許さないっす!! 壊すだけがノウのクソモンスターが石投げてくんなっす!!」ブォォン!!

 

「だ、だったらお前ブヘエ!?」ゴッッ!!

 

 

 

頭によぎったのは、昔の映像。

私をせせら笑うたくさんの声。

 

そして、そんな私を庇うように目の前で声を上げてくれた一人の少女――。

 

 

 

「ククク……魔法少女、いいのかそんなグギャアアアア!?」ゴッ!!

 

「先にチョッカイ出したのはそっちだろうがああああ!! 今更ウダウダ言ってんじゃねええええ!!」ブンブンブンブン!!

 

「その……柴ちゃん……少ししゃべらせてあげてもいいのでは……?」

 

「この手のヤカラは黙らせてからレスバするっすよ宮寺ぁ!!」

 

ムカつく口調も聞かずに済んで一石二鳥っす。

私もすっきりすれば一石三鳥!!

 

 

 

……などと考えていたら、球が外れた。

どうやら、しょっぱなにカマされた瞬時に動くやつを使われたみたいっす。

 

 

やっぱり、何も考えずに攻撃した方がいいっすね!!

 

 

「ぐ、ぐおーーーー!! よくもやったssuね……!! もう許さんssu狼形態変化!! このモードで私の反魔法力は約30倍跳ね上がる!! てめえみたいなチンピラの魔法少女の攻撃、屁でもないssuよおおおお!!」

 

「お前こそ何で自分にアドがあったかわかってねえのか!? ”モノジチ”とってたからだろうがああああ!! やっちまえ宮寺ぁ!!」

 

「はい、なのです!!」

 

宮寺の手に赤い光が集まり、武器ができる。

それは、瞬時に天井を突き抜けるくらいの大きさになった。

相変わらず、バカでかい刀っす。

 

「たああああ!!」

 

宮寺が狼に、刀を突き立てる。

狼がこちらを睨むが知ったこっちゃない。

 

宮寺は、そのまま扉に向かって走る。

カラカラと下駄の音が鳴っていた。

 

 

 

阿狼大刀(あろんだいとう)!! 入店拒否!!」

 

「ギ、ギャ、ギャアアアア!!」

 

 

 

扉が開く。

外の空間に向かって、狼が突き刺さったまま刀をぶん投げる。

 

真っ赤な太陽と見まごうほどに派手な爆発。

終わった後には、反魔法力の気配は感じない。

 

今度こそ、本当にあのナンタラ柴を……あー、自分の名前を使われてるの腹立つっす。

とにかくあのクソモンスターを完全に倒したっす。

 

 

 

一仕事やり終えた宮寺がこっちを向くっす。

何やらモジモジしている。

 

「柴ちゃん……ありがとうなのです……」

 

「宮寺……じゃなくて、店長もお疲れ様っす」

 

拳を突き出してみる。

宮寺は最初困ったような顔をしていたけど、やがて綻ぶような笑みを見せた。

 

拳と拳が軽く当たる。

 

これが友情パワーってやつっす。

 

 

 

 

 

 

「割れた破片はこんなもんっすか……。掃除も終わりっすね」

 

「……。はい、なのです」

 

「いやーあのトンチキ口調のモンスターのせいで大変だったっすね~」

 

「……」

 

「……宮寺、上の空っすよ」

 

「あ……ごめんなさいなのです!!」

 

割れたカップの破片を箒ではきながら、思わずため息が出る。

どうやら気にしているようっすね、さっきのモンスターの言ってたこと。

 

破片を入れた袋を縛っていると、宮寺が声をかけてきたっす。

 

「片付けも終わったし……柴ちゃんにはお店を見ててほしいのです!! きっといろんな人が来るはずなので!! 私はその……事務室にいるのです!! あ、もちろんさっきみたいにモンスターが出たら呼んでほしいのです!!」

 

「事務室って……宮寺は大丈夫なんすか? そもそも何をするのか知らないっすけど……」

 

「……。心配しなくても大丈夫なのです。おいしいコーヒーの淹れ方を勉強するだけなので!! それでは!!」

 

こちらの返事を待たず、宮寺はゴミ袋を手に取ると奥の扉へと消えていったっす。

まったく、この子はこの子で強情というか何というか……。

 

「……ま、それもいいっすけどね」

 

人生、何がどう転ぶかわからないし好きにすればいいだろう。

友達がいきなり喫茶店を開くことがあれば、自分が猫耳をつけて接客をすることもあるだろう。

 

魔法少女とはそういうもの、らしい。

 

 

 

外からノックの音が聞こえた。

 

思わず体が震える。

 

「何すか……? お店はノックするもんじゃないっすよ……。紫の鉄球、ダブル装備っす」

 

扉へと向かう自分は、無意識に武器を出していた。

先ほどのこともあるからだろう。

 

店長の手をわずらわせることもない。

変なやつが来たら、追い返してやろう。

 

「入っていいっすよ。ただし変な行動をしたらすぐに紫の鉄球がお前の頭をとらえるっす。ダブルで」

 

(え、ええええ!? 私はその迷子みたいな感じで……少し入れさせてもらえたら……。ん、その声……)

 

まあ魔法力で攻撃できるのはモンスターだけだから問答無用で投げるという手はある。

それに思い当たっても鉄球をぶん投げなかったのは、扉の向こう側の人物が何かに気づいた様子だったからだ。

 

 

 

扉が勢いよく開く。

思わず後ろにのけぞりつつ、その人物の姿を確認する。

 

橙の髪、橙の瞳。

自分と同じ年頃の少女――。

 

一瞬、友人の朝霧夕香かと思ったが、すぐに違うとわかった。

 

夕香(・・)のやつはこんな愛らしい満面の笑みで手を振ったりなんてしない。

だとすればこの人物は――。

 

「やっぱり!! 未来からきた柴だ!!」

 

「お前は……まさか!!」

 

1時間ほど前に見た覚えがある。

朝霧と同じ顔をした、朝霧とは別の人間――。

 

「西暦2000年の夕香に似た人っす!!」

 

喫茶てふてふ、来客第二号は人間だったっす。

……時空を飛び越えてきたようっすけど。

 

 

 

 

 

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