IS×World Trigger 作:ガイストは男のロマン
(何故だ!何故姉さんだけ……!)
箒は苛立ちながら廊下を歩く。周りの生徒は怯えながら左右に退くが箒は気にしない。
箒が苛立ったのは先程束が記者会見を行った事が関係している。会見の内容ではなく、束が恭弥と同じ戦闘服を着た男……太刀川と馬鹿笑いしながら去っていく事だった。
(私はこんな思いをしてるのに、私の人生をメチャクチャにした姉さんは……!)
箒は小学校四年の時に幼馴染の一夏と剣道の全国大会で優勝したら付き合って欲しいという約束をしたことがある。
その時は小学生の部というくくりなので五年・六年といった上級生も混じる大会ではあったが、実家が剣術道場でもあった箒はそのキャリアの差から優勝を有力視されていた。
実際実力的にも箒はずば抜けていて、優勝は間違いない――はずだった。
しかし大会の当日は参加不能による不戦敗となった。理由は実の姉の束のせいである。
当時束が発表したISはその圧倒的な性能から発表段階ですでに兵器への転用が危ぶまれ、本人を含む親族の保護という名目で政府主導の転居を余儀なくされた。
その後も重要人物保護プログラムによって西へ東へ引っ越しをさせられ、慌ただしいばかりで何もできなかった。
一度一夏から来た手紙にも、『居場所が特定の第三者にわかるのは困る』と言われ、政府からの圧力で返事をすることができなかった。
そして気がつけば両親とは別々の暮らしを余儀なくされ、しかも元凶である束はボーダーに所属しては、「ボーダーに手を出したら世界中のISのコアを停止させる」と世界に宣言してから今日まで滅多に表舞台に立たなくなった。
実の妹ということで箒は執拗なまでの監視と聴取を幾度となくされたし、ボーダーの入隊試験を受けるようにも強要された。
その時箒は束に文句を言うつもりで受験したが、結果は不合格。納得いかないと人事の人を問い詰めれば「トリガーを使う才能がないから」と遠回しに返されてしまった。
思わずカッとなって前に出ようとしたら、額にサングラスをかけた青年が止めに入った。その時の彼の眼差しは束や千冬の眼差しに近く、逆らってはいけないと思い知らされた。
それからは苦痛に塗れた生活を送り、IS学園に行くようにも強要された。
そんな中、幼馴染の一夏がISを起動してIS学園に入学するというニュースが流れ、箒の中には歓喜が生まれた。離れ離れになったが同じ学校で過ごせることを嬉しく思った。
入学してからはまた一緒に剣道をする生活を送れる……そう思っていたが、その希望は粉々に打ち砕かれた。
クロエと恭弥はISに剣道は無意味と言って、一夏は剣道をやめていて、あろうことクロエを師事する事を望んだのだ。
許せなかった。簡単に剣を捨てた事が。
許せなかった。自分ではなく剣道を無意味と言った人間を師事する事が。
許せなかった。自分と過ごさない事が。
一夏を連れ戻そうとしたら恭弥やクロエには邪魔され、千冬に取り押さえられた。
千冬なら自分の気持ちをわかってくれると思っていた。
しかし……
今現在一夏と烏丸を疎ましく思っている人間がいて、実際烏丸はIS部隊に襲われている。烏丸はトリガーを持っているし実戦経験があるから蹴散らせたが、一夏にはそのどちらもない。
よって一夏には自分の身を守る為にも一刻も早く強くなって貰う必要がある。それは姉としても本気で望んでいる。
一夏の指導を望むなら具体的な方針を示せ。方針がないならクロエが指導するべきだ。お前が束に振り回されたことについては同情するが、一緒にいたいというだけで一夏の修行の邪魔はするな。
千冬もクロエを否定しなかった。文句を言おうとしても一夏を強くする具体的な方針を言えなかったので押し負けてしまった。
しかし悔しさは消えることなく、怒りを宿しながら過ごしていたら先程の記者会見だ。
自分は大切な幼馴染と引き裂かれて、漸く再開したかと思えば自分の剣道を無駄という連中と過ごしている光景を見せられている中で……
(何で姉さんだけが幸せになっているんだ……!)
姉の束が楽しそうにしているのが怒りを増幅させる。テレビで束が太刀川に見せていた顔は昔、自分や一夏や千冬に見せていた笑顔だ。
箒の知っている束は両親に対しても適当な反応で、他人に対して冷徹な反応を見せる人間だ。
しかしテレビに映っていた束は本当に幸せそうでボーダーで居場所が出来た事が一目でわかった。
自分の人生をメチャクチャにしておきながら、ボーダーで楽しそうに過ごしつつ、自分の言動を否定する2人を一夏につかせた束に対する怒りは増幅が止まらなかった。
肩を怒らせながら校外を暫く歩くが、怒りは収まらないのでやむなく寮に戻ると轟音が聞こえてくる。
何事かと足を早めてみると……
「うーん……ミサイルビットの回避はどうしたもんか……俺のISにもシールドが有れば良いのに……」
モニターと睨めっこする一夏がいた。モニターにはセシリアと金髪女性の模擬戦が終わる光景が映っている。轟音は模擬戦から生まれた音であると箒は理解する。
しかし一夏は直ぐに巻き戻しをして、セシリアの機体からミサイルビットが放たれる映像を流す。
「放つ直前に瞬時加速を使って距離を積めればば……でも試合当日にマスターするのは現実的じゃないし、ミスって普通のビットに蜂の巣にされるかもしれないな……」
言いながら一夏はモニターを二分割して違う戦闘データを流し始めるが、箒の存在には全く気付かず……
「でも何とかして考えないとな……データを集めてくれた恭弥や親身に鍛えてくれるクロエの顔に泥を塗らないように頑張ろう!」
箒からしたら忌々しい存在の名前が笑顔の一夏の口から出ると、怒りが更に増幅する。
「煩いぞ一夏!静かにしろ!」
箒は怒りの余り怒鳴りだすと一夏はビクンと跳ねる。
「うおっ!箒か!悪い悪い。試合の動画も音量を下げるな」
一夏は謝って音量を下げるが箒の怒りは収まらない。
「違う!お前の声の話だ!あの女から指示されたのだろうが、過去の記録を見るより実際に身体を動かすべきだ!」
「いや、もう夜だから無理だって。というか何で箒は毎回毎回クロエに突っかかるんだよ?アイツ、出来の悪い俺に対して優しく教えてくれる良い奴だぞ」
一夏の言葉に箒は歯軋りをする。自分の剣道はISに無意味と言って一夏の横で指導するあの女を一夏が庇うのは実に不愉快極まりなかった。
そんな中で……
「あ、実際に見たものしか信じないのか?だったら明日から一緒にクロエの指導を受けようぜ。わかりやすいぜ」
「っ!」
もう限界だった。
あくまでクロエを師事する一夏に箒は我慢出来ずに壁に立てかけている木刀を掴む。
それを見た一夏は反射的に距離を取って玄関を通って逃走に入るのだった。
「……と、いうわけです。どうか織斑に護身用トリガーをあげれないでしょうか」
『わかった。次の会議で議題にあげて、3日以内に返事をすることを約束する』
『宜しくお願いします、城戸司令』
最後にそう言ってから通話を切る。先程の束さんの会見から一部の女性は誰にでも使えるISは男性操縦者のデータを使って作ると思ってもおかしくない。
そうなると俺と織斑は女尊男卑の連中に狙われる可能性が高いので、アイツにも護身用トリガーを持たせるべきだろう。
だから俺は城戸司令に頼んだが、了承が得られる事を祈っておく。
そんな風に考えていると足音が聞こえてくるので振り向くと……
「だから何で追ってくんだよ?!俺悪い事してないぞ!」
「黙れ!貴様の精神を叩き直してやる!」
織斑が木刀を持った篠ノ之に追いかけ回されている。
(アイツは本当に頭がイカれてるだろう。何で外部の人間より内部の人間を危険視しないといけないんだよ)
俺は内心呆れながらもトリガーを起動して、一夏の声のする方向に向かうのだった。
入学後の構成を考えているが、ISのキャラが原作で過激だからどう構成を練ってもアンチネタが出てしまう……それはおかしいのか?
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おかしい
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おかしくない