今回はラウラとユウリ、そしてアイアールの話。楽しんでいただけると幸いです。
「グロリア、じゃなくてユウリ…だったか?俺の事を知っているのか?」
「もちろん!私達、夫婦だもん!」
「………は?」
「え、そうなの…?」
「おや」
オルティガとネルケが驚きの声を上げるが俺はそれどころじゃなかった。
は? は? は? は???
「なんて?」
「だから、私達夫婦だよ。ちゃんと婚姻届出したもん」
「……ちょっと待て」
ユウリを手で制し、こめかみを押さえて考える。ちらっとユウリを見る。当たり前でしょと言わんばかりに踏ん反り返っている。その自信に溢れた佇まいは本人の意思はともかくお嬢様っぽい。育ちがいいんだろうな。
「いくらでも待つよ!悩んでるラウラ可愛いから退屈しないし!」
「…その、ラウラさん。なんというか…」
「言わないでくれネルケ。励ましは俺に効く」
記憶を失う前の俺はなにを思ってそんなことになったって言うんだ。頭を抱えていると、首をかしげるユウリ。
「いやでもなんでそんな他人行儀……あっそうか、記憶喪失なんだっけ。プラズマ団の時といいラウラらしいといえばそうなんだけど……かふっ!?」
するとバチン!という音と共に火花が散ってユウリが崩れ落ちる。その背後には、今の今まで透明になってそこにいた人物が立っていた。
「エスプリ…!」
「グロリアの回収任務完了。帰投する」
「させるな、レクス!」
ユウリを右腕で抱えるとファイアローを繰り出して左手で脚に掴まり、離脱しようとするエスプリ。ファイアローってことは前にアケビを回収したエスプリと同一個体か?咄嗟に指示して攻撃するが指示もなく放たれたねっぷうでレクスが吹き飛ばされてしまい失敗する。すると反応したのはオルティガだ。
「そのファイアロー……!お前、まさか……本当に裏切ったのか、メロコ!」
「なんだって!?」
オルティガが呼んだその名はメロコ。スター団ほのお組チーム・シェダルの元ボスの名だった。あの中身がメロコだって!?
「どういうことですかオルティガさん!」
「グロリアに見せられたんだ。ブルーフレア団の庇護下に入ることをよしとしたボスの署名に書かれた、ビワとメロコの名前を…!おいウソだろ、ビワはまだわかる!あいつはスター団のためなら何でもする!でもお前はそんなんじゃないだろ…!」
「私はエスプリ。邪魔をするなら排除する。ファイアロー、ひのこ」
「レクス、防げ!」
エスプリとユウリを持ち上げたまま、まるで弾丸の様な火の粉を飛ばしてくるファイアロー。レクスは足を振るい風圧で打ち消す。くそっ、不味いぞ。俺の手持ちで動けるのはレクスだけ…!
「逃がすなレクス、とびかかる!」
「おいかぜ。ひのこをばら撒け」
レクスが飛びかかるが回避し、おいかぜを放ち、散らばせたひのこを炎の波にして放ってくるファイアロー。炎に撒かれ、レクスの体力が削られていく。
「ラウラ、オルティガ!今回復する!」
「助かる、ネルケ!」
するとネルケがげんきのかけらとまんたんのくすりで俺とオルティガの手持ちを全快させてくれた。さらにヤレユータンを繰り出して臨戦態勢。俺もレクスを戻しジャックを繰り出し、オルティガもマリルリを繰り出す。
「アクアテールで炎を消すんだ!」
「ヤレユータン、さいはいでおいかぜ!」
「ジャック、がんせきアックス!」
「ぐっ……邪魔をするな」
マリルリが炎を消し飛ばし、ヤレユータンがファイアローに無駄行動をさせて、その隙をジャックが突くと手を翳してくるエスプリ。するとジャックが俺達に振り向き、岩斧を振るってきた。ボールジャックか…!どうでもいいけどボールジャックでジャックをジャックする、ややこしいな!
「だが無駄だ!ジャック!洗脳から自力で復活したらかっこいいぞ!」
「! グラッシャァアアアアアッ!!」
「むっ!?…ならば!」
俺が呼びかけると、ジャックは自分で自分を斬りつけて復帰。自分に向けて向き直ったのを見て驚愕するエスプリは、クイックボールを取り出すと繰り出したのはコータス。メロコのポケモンか…!
「コータス、しろいきり」
「しまっ…」
してやられたと思った時には既に遅く。コータスの鼻息で白い霧が発生して何も見えなくなり、霧が晴れる頃にはエスプリも、ユウリも、ファイアローもコータスの姿も無かった。逃げられたか。
「やられた……メロコがあのエスプリってのは間違いなさそうだな」
「ユウリと名乗った彼女は連れらされたみたいだな……」
「あいつ、ブルーフレア団の幹部のはずだから悪いようにはしない筈だけど…」
「そうだといいがな」
グロリアから戻ったユウリがなにされるかわかったもんじゃない。……いやしかし爆弾残して行ったな、おい。
「プラズマ団のどうの言ってたし…記憶を取り戻すのが怖くなってきたぞ」
一方その頃。チャンプルタウン北西の巨大な湖、オージャの湖の中央にある比較的大きな島。そこでは、様子を窺っていたペパーとアイアールが合流していた。
「アイアール!ラウラはどうしたんだ?」
「ラウラは自分のやらなきゃいけないことを優先するって。こっちは任されたんだ。だから私が偽龍のヌシをなんとかするよ」
「そうか、ラウラに任されたなら頼もしいな!お前もアイツに負けないぐらい強いしな!ようし、マフィティフやラウラの為にも頑張るぜ!」
笑って宣言するアイアールに、頼もしそうに頷くペパー。そのまま見下ろせば、湖を雄大に泳ぐ巨大なヌシのヘイラッシャがいた。その頭の上には赤いたれたすがたのヌシのシャリタツが横たわってのんびりしていたが、アイアールとペパーの姿を捉えると驚いてヘイラッシャの頭をぺしぺしと叩き、開いた口の中に入る。
「シャリタツのとくせい、しれいとう。ヘイラッシャの中に入って合体して指示することで強くなるんだって。ラウラもアレにやられた。多分、二匹で一匹が偽龍のヌシなんだと思う」
「じゃあどうするんだ?ただでさえあのヘイラッシャは強いんだぜ。ギャラドスだろうがワンパンしてた。でもそんなに頭はよくないみたいだ、絶対追い付けないミガルーサを延々と追いかけてた」
「じゃあシャリタツをまず追い出そう。確かヨクバリスいたよね?」
「いるがどうするんだ?」
モンスターボールを構えながら頷くペパー。アイアールもモンスターボールを取り出して頷く。
「ヘイラッシャの攻撃を耐えてくれたら私のポケモンが何とかするよ」
「分かった、任せろ。援護するぜ。ヨクバリス!タネマシンガン!」
浅瀬まで飛び降り、ヨクバリスを繰り出してタネマシンガンで気を引くペパー。その様子を高台から窺い、チャンスを窺うアイアール。そしてヘイラッシャが咆哮を上げようと口を開いたその瞬間、ボールを投げつける。
「今だ!ハルクララ!こおりのつぶて!」
その刹那。ハルクジラのハルクララを繰り出して氷の礫を射出し、口の中に叩き込むアイアール。するとたまらずシャリタツが飛び出てくる。
「出たぞ!のしかかりだヨクバリス!」
「アイススピナー!」
一斉攻撃を受けて怯むシャリタツ。慌ててヘイラッシャの口の中に戻ると、ヘイラッシャが島の壁を破壊し、そこに口から飛び出たシャリタツが現れた洞窟に入って行く。
「今のうちにヘイラッシャを!ドーちゃん、どくづき!」
「任せろ!タネマシンガン!」
水技が効かないドオーのドーちゃんに交代して水中から攻めるアイアールと、引き続きヨクバリスでタネマシンガンを叩き込むペパー。すると洞窟からりゅうのはどうが放たれてヨクバリスが吹き飛ばされ、シャリタツがやってきて口の中に飛び込むと、赤いオーラを纏ってパワーアップするヘイラッシャを前に、構えるペパーとアイアール。
「大丈夫かヨクバリス!踏ん張りどころだ、食物連鎖を見せてやろうぜアイアール!」
「うん!……ラウラが来る前に、終わらせる!」
それぞれの思惑を胸に、パルデアを覆う闇は蠢いて行く。
攫われるユウリ、エスプリにされていたメロコ、ペパーと二人で偽龍のヌシを攻略するアイアール。原作で言うと終盤に入る頃だろうか。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。