今回はパルデアに来た直後のラウラの話。楽しんでいただけると幸いです。
オーリムAIからラウラがこの世界に来たことを伝えられ、安堵する一同。しかし安心している場合じゃないとユウリが尋ねる。
「ラウラが!?無事なんですか!」
《「無事だ。運がいいのか悪いのか上空を飛んでいたコライドン…ああ、私のポケモンだ……に激突してエリアゼロの洞穴エリアに不時着。それに気付いた私が連絡をつけて事情を聞いていたところ、そこでラウラはある一団と遭遇した。青いスーツとサングラスの一団だ」》
「スーツとサングラスの一団?」
その言葉にグレイに振り向くジュリ。グレイもまたジュリを振り向いていて。彼らの頭の中で、赤装束の一団と合致した。
《「奴等はブルーフレア団と名乗った。タイムマシンを使って最終兵器を目覚めさせると語った彼等はそのまま、手持ちがいないながらも太古の蟲ポケモンであるチヲハウハネを味方につけたラウラと交戦。一騎当千とも言うべき大立ち回りを演じたラウラだったが、圧倒的なポケモンを持つ彼らのボスにより敗北。拘束され、連れて行かれてしまった。スマホロトムも敵に奪われ消息不明だ。それが、一年と半年以上前の出来事だ。それから太古のポケモンとは思えない鉄仕掛けのポケモンも現れ始めた。十中八九奴等だろう」》
「そんな前なんですか…」
「時間の流れがそんなに違うんだ…」
ちなみにこの時のユウリたちは知る由もないが、サニアがクラベルに保護されたのと同時期であることをグレイは後から知った。
「ラウラの、記憶はどうだったんだ…?ウルトラホールを彷徨った者は記憶に影響が出てしまうんだ」
《「記憶?なるほど、異世界に来ると記憶も飛ぶのか…なるほど合点が行った」》
「というと?」
《「ラウラは自分がジムリーダーであること、ガラルから来たことは理解していたが、何故そんなことになったのか肝心な部分を忘れていた。ただ単に別の地方に迷い込んだと思っていたが、ラウラの記録が存在しないことを知って異世界だと理解していた。何故か分かるか?」》
「…俺達と同じで、異世界があると知っていたからだろうな」
「ああ、フェローチェたちウルトラビーストの存在か」
納得しているユウリにそれだけじゃないんだけどなと思いつつ口に出さないグレイ。
《「そしてつい先日、ラウラが見つかった」》
「え?」
「は?」
「ん?」
「お?」
そう言ってオーリムAIが手元のコンソールを操作したかと思えば巨大なモニターの端に何故かきっちりしたメイド服姿のラウラの画像…角度からして監視カメラの映像だろうか…が映し出され、マヌケな声を出すユウリ、ダフネ、ジュリ、グレイ。その反応にオーリムAIは満足げにしながら映像を再生すると、買い物しているらしきラウラにネモが駆け寄り、品物を見つくろうと共にどこかに帰って行く光景が音声と共に流れていく。
《「ラウラ、ラウラ!何買ったの?」》
《「夕飯の材料だよネモお嬢様。今日は旦那様も奥様も帰ってこないそうだから俺が作ることになったんだ」》
《「その呼び方やめてよもー。あ、じゃあ好きなもの買ってもいいかな!?」》
《「好きにしろ…してください。雇い主はアンタだ。記憶を失った俺を拾ってくれたんだからな」》
《「かしこまるの禁止だってば!私達はライバルだよ!今日こそ
メイドラウラとネモの仲睦まじい様子に、約一名が鼻血を垂らしながらわなわなしだす。それを見て察する他三人。特にダフネはモンスターボールまで構えだす始末だ。
「なにこれうらやまし、いやラウラ可愛い、え、怒るところトキメクところ?どっち?この風景、さっき上空から見た!確か南の町だ!今すぐ行って……」
「ダフネ。やれ」
「どうどう。落ち着いてくださいユウリさん。イオルブ、さいみんじゅつ」
「あびゃっ!?」
ルナアーラを持ってるジュリの首根っこを掴んでゼロラボから飛び出そうとするユウリに、グレイの指示でダフネが容赦なく繰り出したイオルブのさいみんじゅつを行使。ジュリを掴んだままその場で固まり、うつろな目で静止するユウリ。
「悪く思うなよ、これ以上事態をややこしくされたくない」
「あの上空から見れるとかどんな動体視力なんですか…」
「しかしお兄ちゃん、なんて姿に……」
グレイとダフネがユウリに呆れ、なんとかユウリの手から抜け出したジュリが何とも言えない表情で映像のラウラを見つめていると、オーリムAIは映像を消すと別のデータを提示した。
《「これはプラトタウンの映像だ。私はAIなのでね、ネットに「ラウラ」という検索ワードが上がったのを確認して映像を捜した結果がこれだ」》
「検索?」
《「ラウラの素性、ガラルのジムチャレンジの記録がスマホロトム会社の大手やポケモンリーグのサーバーからアクセスされていた。これを見るに、ラウラは私と会話した時以上の記憶、そのほぼすべてを失っている。覚えているのは名前と蟲ポケモンへの愛のみだ。恐らくブルーフレア団に連れ去られたあとになにかしたのだろう」》
「そんな……プラズマ団の時とは雲泥の差じゃないですか…」
「蟲ポケモンへの愛を忘れてないのはお兄ちゃんらしいけど……」
「…記憶を取り戻さないと無理に連れ帰ってもどうしようもないだけだな」
《「今はスマホロトム会社の大手のご令嬢…チャンピオンランクのネモと言う少女に拾われメイドとしてその屋敷で働いているようだ。ポケモンリーグに戸籍登録の申請があったから恐らくこのパルデア最大の都市、テーブルシティのオレンジアカデミーに入学することになるだろうな」》
そう言ってネモの写真とデータを提示するオーリムAI。学生の身分故にラウラも同じオレンジアカデミーに入学することになる確率などが示されている。
「チャンピオンランク…?」
《「そうか、別の地方から来たから知らないのか。このパルデアではポケモントレーナーはランクが存在し、チャンピオンと呼ばれる者も複数いるのだよ。この世界だけかもしれないがね」》
「つまりこのご令嬢はユウリと同じぐらい強いってことか。無理に取り返しに行っても捕まるだけだなこりゃ」
キュレムやゲノセクトがいればなあとぼやくグレイを尻目に、ダフネはオーリムAIに尋ねる。
「…ラウラさんの記憶を取り戻す方法はありますか?」
《「まだ未確定だが、あるにはある。秘伝スパイスというものが存在する。全てを摂取すれば普通の医療では治せないような不調も治せるというこのエリアゼロ由来の植物だ。恐らく私……いやオーリムの息子が近々行われる宝探しのタイミングでそれを手に入れるべく旅立つだろう。そして恐らく、秘伝スパイスを守る強力なヌシポケモンを倒すためにラウラもしくはネモに協力を申し出るはずだ」》
「つまり放っておけば記憶が戻る可能性が高い…?」
「いや、でも…ブルーフレア団がいるならラウラさんのことです、絶対関わって二の舞になる!それはなんとしても避けないと!」
「…ならやることは三つだ」
少し考えてからそう言って二本指を立てるグレイ。ダフネとジュリ、オーリムAIの視線が集まる中で冷静に述べて行く。
「まず一つ目。記憶を失ったラウラが記憶を取り戻すことをこの世界で待つこと。俺達が秘伝スパイスを集めてもいいが、俺達ははっきり言ってこの世界では戸籍も実績もない胡散臭い存在だ。そんな奴等から渡されても摂取したりはしないだろう」
「だろうね。お兄ちゃんは元々重度の引き籠もり。記憶がないならなおさら絶対警戒心が高くなってる」
ジュリの言葉に頷きながらグレイは指を一本下ろして続ける。
「二つ目。ブルーフレア団の目的と、ラウラの記憶を失わせた手段を探る事。こればかりは探し出して潜入するしかないだろうな。これは俺達の存在をばれると利用されてしまうかもしれないから細心の注意を払わなければならない。手段を選んでいる場合じゃないだろうな」
「…手段、ですか」
そう言いながらもグレイの視線はダフネに向いていて。自分がそれをできることを知っているダフネはユウリに申し訳なさそうな視線を向けながら神妙そうに頷く。
「そして三つ目。同時進行でブルーフレア団に対抗できる戦力を得る事。知らない太古のポケモンとはいえ蟲ポケモンを使ったラウラが負ける相手だ。間違いなく強い。ユウリでさえ負けるかもしれない。これは必須だ。ブルーフレア団は俺達が元の世界に戻るために絶対邪魔になる」
《「戦力か。ならば私が役立てるかもしれない。私はオーリム博士をコピーしたAIだからな」》
オーリムAIの言葉に頷くグレイ。すると、何を考えたのか扉に向かい出て行こうとするジュリ。
「どうしたジュリ、まさかお前もユウリみたいに今すぐにでもラウラに会いたいっていうんじゃないだろうな?」
グレイの問いかけに寂しげに振り返りながらもジュリは否定して。
「ううん、少しさびしいけどそれがダメなのはわかってるから。……四つだよ。私は――――」
ラウラが来て、ブルーフレア団がタイムマシンの出力を上げたのは時系列的には一年と半年、あと二ヶ月ぐらい前。実はサニアと同時期なのだ。つまり…?
暴走ユウリ。止められるのは実績があるダフネのめちゃつよさいみんじゅつだけっていう。
そして救出組で唯一ジュリだけがいない理由とは…?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。