今回はジュリの決意、グレイとダフネの誓い、グロリア誕生。楽しんでいただけると幸いです。
グレイが提案した三つの「やるべきこと」をよそに、一人ゼロゲートの出口に向かうジュリは、グレイたちに振り返り寂しげな笑顔で告げた。
「ううん、少しさびしいけどそれがダメなのはわかってるから。……四つだよ。私は――――元の世界に一度戻るよ」
ラウラに会いに行く。グレイは知っている。ダフネやユウリの知っている“兄貴分”のラウラではなく、不幸な死により引き裂かれた本当の兄妹だったジュリにとってそれは、なによりも優先すべき願いだと。それを捨てる理由とは何か考えて、そして察する。
「…重量オーバーか」
「うん。ルナアーラ、四人で既に限界だった。ここまで来るのにも一週間かかった、お兄ちゃん失踪から数えたらもう半年近く。こっちの時間では一年と半年も、だよ?帰りに五人で乗って、万が一それでまたお兄ちゃんを失ったら…考えたくもない」
「あ…」
反論しようとしていたダフネも納得したらしい。グレイ達が乗ってきたのは疲れない乗り物なんかじゃない、ポケモンだ。グレイもゲーム基準で考えて失念していた。そもそもルナアーラはポケスペのサンムーン編曰く最大三人乗りである。四人で乗っただけでも無茶だったのだ。だから、ルナアーラを操れるジュリが行くのは道理だった。
「私は一度戻ってミヅキさんを連れてくる!ルナアーラだけじゃなくソルガレオもいれば、みんな余裕で乗れる!例え会う方法がアローラのポケモンリーグの四天王を突破してチャンピオン防衛線に辿り着くしかないのだとしても、私は絶対やる!やってみせる!もう、お兄ちゃんと離ればなれだけはぜっっったいに嫌だ!」
思いの丈を一心不乱に叫んで吐きだすジュリに、さいみんじゅつで固まっているユウリはもとより、グレイも、ダフネも、オーリムAIも押し黙る。なにか別の方法があると反論しようとしたが、コスモッグの特定の波長が薄まっている現状、ラウラを連れてすぐ戻れないならそれしかないとグレイも理解する。即ち、一度戻ってから虱潰しにでもここに戻ってくることを信じるしかないと言う事だ。
「だから、お兄ちゃんと一緒にみんなで帰ろう!任せて。…必ず戻るから」
可能性は薄く脆い。しかしそう宣言したジュリに、グレイとダフネは顔を見合わせ頷いた。
「わかった。ジュリ、そっちは任せる。こっちは任せろ。俺とダフネと……ユウリもいる。お前の兄貴分は絶対取り戻してやる」
「はい、グレイに言われるのは癪ですがジュリさん!私達に任せてください!ユウリさんもいますし!」
「……ユウリさん私と一緒に一度帰った方がいいまでない?」
「いやお前は我慢強いがユウリは駄目だろ」
「そうですよ、我慢なんかさせたらまたグローリアビーストになりかねません。でもこのまま固めているわけにもいかないんですが…」
不安からか顔を曇らせるジュリに、グレイとダフネは冷静にツッコみつつイオルブのさいみんじゅつで虚ろな目で固まっているユウリを見る。するとジュリは何か思いついたのか、顔を輝かせて続けた。
「じゃあさ、ユウリさんを別人にしちゃえば?強さはそのままに、お兄ちゃんへの愛を別物に置き換えちゃえばいいんだよ!それなら私達の事はばれずにブルーフレア団に潜入できるんじゃない?名前はそうだな、グロリアとか!」
「ユウリは眠らせて別の人格を作って行動させるってことか?…ありだが、どうする?」
「私のイオルブのさいみんじゅつですね…。本人にとって最も都合のいい夢を見せて肉体を操る、という技術です。応用すれば別人格を作るのは可能だと思いますが……」
《「人格を増やすのはおすすめしない。私も制御できない別の
「大丈夫、短期間の期限を設けて目的を果たすまで何度も催眠し直せばいいんだよ。そう言うの…えっと史上最強のなんちゃらで読んだことある!あれやってたの悪役だったけど、改心したグレイの悪知恵と知識、ダフネの技術と悪を許さない意思があれば大丈夫!」
割り込んだオーリムAIの言葉にも根拠のある自信を返すジュリ。ユウリが勝手に出向いて勝手に暴走すればラウラの記憶が戻らなくなる可能性の方が高い。そして自分たちでは正攻法ではユウリを止められない。故の奇策だった。
「…じゃあ後で三人揃ってユウリさんに怒られますか」
「そうだな。誰も止めなかったんだ、怒られてもしょうがない」
「私は提案しただけだけど…私達、共犯者だね?」
そう嘯くジュリに、グレイとダフネはそれぞれの顔を見て、笑って頷くと拳を軽く突き出した。首をかしげるジュリに元悪役コンビは不敵に笑う。
「何年かかってもいい、必ず迎えに来い。お前は俺でもキュレムなしじゃ倒しきれなかった強者だ、四天王ぐらい楽勝だろ?」
「約束です!私達もやるべきことを果たします!だからそちらも……信じてますよ、親友!」
「うん!任せて!」
三人で拳を軽く突き合わせて誓い、そしてジュリはウルトラホールのある上空へと飛び立っていった。青空が広がる上、煌めく光の穴に吸い込まれていく小さな夜空が消えたのを確認し、一息つく二人。
「いっちゃいましたね」
「ああ。ここからは二人か。寂しくなるな」
《「…いい仲間を持ったようだな、ラウラは。少し羨ましいよ。何せ私は、仲間がいなくなったから自分自身のコピーで補おうとしたオーリムの夢の残骸だからね」》
話しながら戻ってくると、オーリムAIが感慨深げに話しかけてきた。その言葉に顔を見合わせ、何がおかしいのか笑うグレイとダフネに、オーリムAIは不満げに抗議する。
《「なんだ、なにがおかしい?私がAIらしくないと笑っているのか?」》
「何を言うかと思えば。ラウラさんを案じ、助けてくれようとした時点で貴方もラウラさんの仲間ですよ、オーリムAI!」
「アンタの作る、ブルーフレア団にも負けない戦力!期待しているぞ!」
AIである自分にも分け隔てなく話す二人に、オーリムAIは呆気にとられて笑う。
《「そうか、そうか……これが、オーリムになかったもの……仲間、か。心地いい物だな。これを知らずにオーリムは逝ったのか……どうか、ペパーにもこんな仲間が……いや、任せてくれ。君達仲間の期待に応えよう」》
「よし。じゃああとはユウリ、改めグロリアの設定だな。どうする?とりあえずパルデアにいるポケモンの種類を調べて、ユウリの手持ちのメンバーの調整しないとだが。ムゲンダイナとか駄目だろ」
「絶対ありえないんですけど、ラウラさんがこの世界に来た直後に負けてしまってリベンジを誓うプライドの高いお嬢様とかどうでしょう!」
キラキラと目を輝かせながらそう進言するダフネ。グレイは顎に手をやり一考する。
「ああそうか、ブルーフレア団がラウラがいつこっちに来たのか知らなければ誤魔化せるか。ラウラにリベンジを誓うってのもユウリらしくていいな、強い感情にも申し分ない。……だがなんでお嬢様なんだ?」
「私の趣味です!いいでしょう!?」
「今お前にとあるマッドサイエンティストのムカつく笑顔が重なったよ」
「私達はその執事とメイドでですね、お忍び旅行としてパルデアにやってきて、リベンジを誓うあまりその手段としてブルーフレア団に潜入して……」
「こんな妄想癖があるとか聞いてないんだが?」
《「ハハハハハッ!愉快だな君達は!」》
そうしてグロリアは生まれ、グレイとダフネのパルデアでの隠匿同居生活が始まったのだった。
「そのグロリアが敵に鹵獲されるのは想定外だったがな…!エスプリを量産している情報が分かった時点で察するべきだった!オーリムAI、聞こえるか!アレの出番が来たぞ!応答しろ!」
これまでの出来事は頭に浮かんでは消えていたグレイはそれを振り切り、真っ黒なモニターに叫ぶ。するとジジジッと点滅しだし、オーリムAIの姿が巨大モニターに現れた。
《「すまないグレイ。研究所のアイアールとペパーと話していたタイミングだった。いい報告だ、君達に探してもらっていたスカーレットブックの所在を見つけたぞ。ペパーが持っていたんだ」》
「ってことはゼロラボを開けるんだな!だが今は時間が無い。第二プランだ。ちょうどいいところに
ちょっとした反則でアクロマに匹敵する頭脳を持つグレイがコンソールに手をかけ、オーリムAIは笑う。
《「了解した。ネット経由で送り込もう。君達の協力で私の作った、オーリム博士の楽園防衛プログラムにも負けない秘密兵器を…!」》
というわけでジュリはルナアーラと共にソルガレオを持つミヅキを迎えに行ってました。バーネット博士の説明通り、時間がたてばたつほど痕跡は消えて行くのでこれはかなりの博打になります。
ユウリの知らないところでグロリアにされていたの巻。ユウリのままにしておいた方が全ての計画がおじゃんになるからしょうがなかったのだ。
そして現代に。ブルーフレア団に打ち勝つ「戦力」こと秘密兵器起動です。そして視点はテーブルシティに戻ります。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。