ポケットモンスター蟲スカーレット   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。今回の時系列はシュウメイ達がカチコミしかける辺りとなります。

今回はアイアールとペパーの話。楽しんでいただけると幸いです。


VSオラチフ

 コライドンの後部にペパーを乗せてオージャの湖を横断し、西3番エリア、列柱洞、西2番エリア、ロースト砂漠、西1番エリア、南2番エリア、南4番エリア、プラトタウンを経由してコサジの小道の灯台までやってきた私達。全速力でダッシュし数時間はかかる長旅で疲弊したコライドンをボールに戻して労わりながら、以前ペパーが出てきた灯台に併設されている建物の扉を見やる。

 

 

「ここがアイツの研究所……小せえ頃よく遊びに来てた、第二の家みたいな場所だ。俺たち呼びつけて何の用なんだろうな?プラトタウンが騒がしかったがなんか関係あるのか?」

 

「そういえば慌ただしかったね。なにかあったのかな?」

 

「まあいいや。今、開けるぜ」

 

 

 テレビもなんも観ずに真っ直ぐここまで来たからなあ。鍵を取り出して開けようとするペパーを見ていると、鍵を開けずになにを思ったのか静止した。

 

 

「ペパー?」

 

「……天才的なポケモン博士なんだとさ。……俺の母ちゃん。ポケモン博士志望のアイアールにとっては憧れの存在ちゃんかもしれないが、間違ってもアイツみたいになるな」

 

「…たしかに久しぶりの会話にしては淡白だなとは思ったかな」

 

 

 そう思ってたことを言うと、暗い表情を浮かべるペパー。

 

 

「いくら天才だろうが権威だろうが、子供の俺にとっては最悪だった。物心つく前に父ちゃんはいなくなってたから俺にはあの人とオラチフ…今のマフィティフしかいなかったのに、いつも仕事ばっかで全然家に帰ってなんて来ねえし。遊んでもらった記憶もねえ。いっつもマフィティフだけが俺の傍にいてくれたんだ。…開いたぜ。行くぞ、ちゃちゃっと終わらせようぜ」

 

「う、うん……」

 

 

 扉を開けたペパーに続いて研究所に入って行く。……でもねペパー。真正面から「お前がいなければよかった」と言われて存在を否定されるよりは、オーリム博士はましだと思うんだ。だって、出会えさえすれば仲直りすることもできるかもしれないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中は真っ暗で、長年放置されていたとよくわかる埃が降り積もっている状態だった。机やキッチン、冷蔵庫に本棚など生活空間と研究する空間が仕切りもなく繋がっていて、奥には複数のモニターとコンソールが存在し、勝手に起動して光が灯って行き私とペパーは顔を見合わせて頷き、近づく。

 

 

《「頼みがある」》

 

 

 ジジジッ!と点滅してそれが納まるとモニターに映ったのは、いつぞや校長室でモニター越しに出会ったオーリム博士その人だった。

 

 

「…頼みってなんですか?」

 

《「私は今、パルデアの大穴…エリアゼロの最深部にあるゼロラボという研究所にいる。この場所でずっと特殊なポケモンの研究をしているのだ。君達にはオーリムの輝かしい研究……その、最後の手伝いをしてもらいたい」》

 

「…最後の?」

 

 

 なんだろう、なにか引っかかる言い方だ。まるで自分を別人として扱ってる様な……。

 

 

「最後の手伝いってなんだよ?」

 

《「手伝いに必要な鍵がその研究所のどこかにある。その鍵とはオーリムの愛読書、スカーレットブックだ」》

 

「ペパー、それって……」

 

「ブックってもしかして…これか?」

 

 

 そう言ってペパーが取り出したのは秘伝スパイスのことについて調べるのに使っていた本だった。これが…鍵?

 

 

《「ああ、ペパー。君が持っていたとはな。ならばなおさら都合がいい。実は協力者にとりにいかせたのだが研究所の鍵は今現在ペパーしか持っていないから探索すらできなかったのだ。スカーレットブックを持ってエリアゼロ最深部にまで来てくれ。そうすれば宝物のような経験ができると約束しよう」》

 

「…それだけ、なの?」

 

《「む?」》

 

「アイアール?」

 

 

 私はいつの間にかわなわなと拳を震わせていた。怒りが抑えきれず、怒鳴り散らす。

 

 

「あなたは……!ここまで一切、ペパーに何も言ってない。オーリム博士以外で唯一の家族のマフィティフのことで大変で、私とラウラに会うまでずっとひとりで頑張って来て……それに関して何も言わず、言うにこと書いては都合がいい?ペパーは!宝物なんかよりも、あなたと一緒に過ごすことの方がずっと…!」

 

「アイアール……」

 

「親なんでしょ!?ペパーにとって唯一の肉親なんでしょ!?まだお母さんがいた私と違って、ペパーには貴方しかいないんだよ!?それに、エリアゼロってイダイナキバみたいなポケモンがいるところでしょ!?そんな危険なところに、息子を行かせる?また、マフィティフが怪我するかもしれないのに冗談じゃない!私たちは絶対に行かない!むしろ、そっちが来い!」

 

 

 止めようとするペパーを押しのけ、モニターに顔を近づけて捲し立てる。ゼーハーと肩で息をする。すると返ってきたのは、冷静な言葉だった。

 

 

《「まったくもって正論だ。私は、オーリムはペパーを確かに愛しているが……ああ、そんなことになっていたとは知らなかった。もう少し気にかけるべきだった。だが……私はここから離れることができない。だから君達にスカーレットブックを持って来てほしいんだ。頼む」》

 

 

 そう言って頭を下げるオーリム博士。ああ、この人は……愛するのが下手なんだ。愛情表現が本当に苦手なんだろう。でも、それはそれ。これはこれだ。ペパーが悲しんでいたのは事実なんだ。私は拳から人差し指を立てて突きつける。

 

 

「ああ、分かりました。行く!行ってやる!首を洗って待ってろオーリム博士!一発ぶん殴ってやる!」

 

《「ああ、存分に殴ってくれて構わない、だが気を付けてくれ。アイアール、君の言う通りエリアゼロは狂暴なポケモンと強固な電脳システムに守られている。君達二人では少々手こずる苦難があるだろう。他に頼りになりそうな仲間を集めてからで構わない。なんなら今はゼロゲートに滞在している私の協力者たちの手を借りるのもいいだろう。…エリアゼロ最深部にて君達の冒険を待っているよ」》

 

 

 そう言い残してオーリム博士は通信を切ってしまった。……仲間を集めて、か。そう言われて真っ先に浮かんだのはラウラだった。今どうしているんだろう。勝手に偽龍のヌシを倒した私に怒ってるかな?電話がなにもないのが気になるけど……。

 

 

「エリアゼロ……アソコはやばい。アイアール、お前は知らないで言ってくれたんだろうが…マフィティフが怪我したのも大穴の奥……エリアゼロなんだ。母ちゃんに会いに行こうとして、それで……正直トラウマで、もう二度と勘弁って場所だけど……お前は行くんだな?」

 

「…うん、一人でだって行くよ。ペパーが嫌なら無理にとは言わない」

 

 

 正直、仲間を集めるのは怖い。お父さんやフラダリさんの様に優しい仮面を被っているかもしれない。ラウラだって記憶を失う前はプラズマ団かもしれないんだ。私でも知っている。かつてイッシュ地方でポケモン解放を謳い、イッシュを氷漬けにした宗教団体の悪の組織。その一員かもしれないだなんて、記憶を取り戻してほしくない。私は、裏切られるのが怖い。大好きな人間が敵意を向けてくるのが、本当に怖い。

 

 

「…たのまれちまったもんな」

 

 

 押し黙ってしまった私をじっと見て、ふっと笑うとそう言うペパー。驚く私に不服そうにする。

 

 

「水臭いちゃんだぜ。友達(ダチ)が危険な場所に行くのを黙って見てられねえよ。今のお前は心配だし、一人で行かせられるわけがねえ。俺も行ってやる!」

 

「ペパー……」

 

「お前みたいに殴る、とまでは行かないけど母ちゃんに文句も言いたいしな。よし、アイアール!表に出ろ!エリアゼロでもやっていけるか、ポケモン勝負で力試しだ!……いや、お前の実力は何も心配してねえよ?主に!俺の!力を!試すの!」

 

「…ふふっ。いいよ、やろう。手加減しないからね」

 

 

 必死に弁明するペパーに笑ってしまう。ああ、ペパーは……安心できるな。

 

 

「望むところだ!そして全部吐き出しちまえ!」

 

「…なにを?」

 

「………もちろん、ラウラの事だよ」

 

 

 その言葉に思わず固まるのも、しょうがないと思うんだ。




このあとオーリムAIはグレイの通信に応えます。

アイアールの心情が明らかに。大好きな人に悪意を向けられることに臆病になっている子供、というキャラです。フラダリと父親の裏切りが根強いトラウマになってます。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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