今回はアイアールVSペパーその2。楽しんでいただけると幸いです。
「ヨクバリス…!?」
じしんを受けたらなまけるで回復、タネマシンガンによる妨害もかえんほうしゃで怯ませて、撃つたびに徐々にとっこうが上がって行くフレアソングを乱射して黒焦げとなったヨクバリスが転がり、ペパーが慌ててボールに戻す。さっきから頭が澄み切って冴えわたってる。
「ラウラの提案で育てた要塞型ラウドボーンのシングだよ。そう簡単には落とされない」
「そうらしいな。だから全力全開!俺の手持ちフルコースで突破してやるぜ!パルシェン!」
そう言ってペパーが繰り出したのはパルシェン。岩壁のヌシのガケガニとサニアと戦った時にペパーが使っていた、ダイヤモンドよりも硬い殻に籠れば、ナパーム弾でもびくともしない鉄壁の防御力を誇るポケモンだ。……ナパーム弾ってなんだろ。わざ?
「でも無駄!焼いてしまえば焼きパルシェンの出来上がりだよ!かえんほうしゃ!」
フレアソング×5でとくこうが五段階上がって極太の火柱のようになったかえんほうしゃをぶちかます。しかし、火柱が通り過ぎた後にパルシェンの姿はなくて。
「え…?」
「からをやぶるだ!当たらなければモーマンタイだぜ!アクアブレイク!」
見れば、甲殻を罅割れさせて防御力を捨てたパルシェンがいつの間にかシングに肉薄して水を纏った体当たりを叩き込んでいた。からをやぶる、防御・特防を1段階下げる代わりに攻撃・特攻・素早さを2段階上げると言う破格の性能を誇る技だ。威力が上がり過ぎたかえんほうしゃを逆手にとって隠れ蓑にそれを使うだなんて…!?
「か、回復を……なまける!」
「その隙を与えるな!ロックブラストぉ!」
なまけるで体力を回復させた隙をついて岩の弾丸を連射してくるパルシェン。ロックブラスト、いわゆる連続技はランダムで2~5回発動する低威力の技だ。二回なら……と思ったが、最大数の五回放たれてさすがのシングの耐久と言えど耐えきれず崩れ落ちてしまった。
「そんな…イカサマダイスでも持ってるの!?」
「いいや違うぜ。こいつのとくせいはスキルリンク!連続技を必ず最大数で撃てるんだ!ポケモン博士志望なのに知らないだなんて言わせないぞ!」
そうだ、失念していた。私は知っていたはずだ、なのに焦って考えることを放棄していた。
「ツムヅム!」
シングが倒れた今、パルシェン有効打があるのはいわタイプのキョジオーンのツムヅムだけだ。だけど身軽さじゃ圧倒的に不利だし、みずタイプも弱点だが……ツムヅムなら、いける。
「しおづけ!」
「塩漬けにされちゃたまらないぜ!もう一度からをやぶるだ!」
身震いしてさらに甲羅を罅割れさせると目にも留まらぬ速度で移動し始めるパルシェン。ダメだ、追い切れない。鈍重なツムヅムじゃなおのことだ。ならば。
「ツムヅム、連続でのろい!」
のろいで素早さが1段階下がる代わりに攻撃・防御が1段階上げるのを繰り返し底上げしていく。そっちがバフで来るならこっちもバフだ。さらにテラスタルオーブを取り出す。切るならここだ。
「ぶちかませ!アクアブレイク!」
「そこ!テラスタル、受け止めて!」
二回のろいを積んだのを確認してから、テラスタル。高速で突撃してきたパルシェンが激突する直前にゴーストテラスへと姿を変え、ボディで受け止め両腕を伸ばしパルシェンを拘束するツムヅム。
「んなっ…効いてない!?」
「キョジオーンは最高峰の防御力を持つポケモン。それがのろいでさらに二段階防御が上がっている。からをやぶるを二回使用したパルシェンでも、突破できない!」
「っ…つららばり!」
「いわなだれ!」
そして両腕で掴んで拘束しているパルシェンに、二段階攻撃力が上がっている状態でのいわなだれを直撃させる。防御が二段階も下がっているんだ、いくらパルシェンでも耐えきれられない。崩れ落ち、戦闘不能となった。
「よくやったパルシェン。あのラウドボーンを突破する姿は最高だったぜ!キョジオーンにはキョジオーンだ!」
次に繰り出されたのは、大空のヌシことオトシドリと戦った時にペパーが使っていたコジオが進化したであろうキョジオーン。でものろいでバフを積んでゴーストタイプになっているこっちが有利だ。
「ステルスロック!」
「のろい」
何故かステルスロックをばら撒いてきたペパーのキョジオーンに対して、私がツムヅムに指示したのはのろい。バフるのではなく、巨大な金属釘の幻影を出現させて自身に打ち込むツムヅム。ゴーストタイプとそうでないタイプではのろいは効果が変わる。ゴーストタイプが使うのろいは自身の体力を最大HPの半分削り、相手のHPを最大HPの1/4ずつ削る技になるのだ。しおづけも含めてとんでもないスリップダメージを技を発動するたびに叩き込める。
「おまっ…自分のポケモンを犠牲にするのか!?ストーンエッジだ!」
「これがゴーストテラスになれてのろいも覚えているツムヅムの強みを最大限にいかせる戦法だよ。それにただ犠牲にしたわけじゃない。じこさいせい」
地面から突き出てきた岩の刃ストーンエッジを腕で受け止めながらじこさいせいする。じこさいせい、体力を半分回復させる技。これで全快近くに回復したツムヅムが咆哮を上げる。しおづけ、のろい、いわなだれ、じこさいせい。アームハンマーは忘れさせて私のツムヅムはのろい特化型にした。じこさいせいできる数は五回なので、最大五回はのろいを叩き込める。テラスタル前にのろいを積んでおけば盤石だ。
「私のツムヅムは絶対に突破できない」
さらにキョジオーンのとくせいは「きよめのしお」どく・まひ・やけど・ねむり・こおりの目に見える状態異常にならない(こんらんとかメロメロにはなる)上に、ゴーストタイプの技を半減するとくせいだ。これでこのツムヅムはあくタイプ以外弱点が無い要塞と化した。もともと防御が高い上にのろいで底上げし、弱点の比較的低いとくぼうも自分にしおづけして特殊攻撃に強い装甲を身にまとうソルトアーマーも使えば決して崩れぬ白亜の城壁となる。ラウラも「突破できる気がしない」と言わしめた私の切札の一つだ。
「それにペパーもからをやぶるを使ったじゃん。パルシェンも危険になるのに、私に勝つために使ってる。同じだよ」
「同じじゃねえ!こいつらは、お前の悩みを聞き出そうとしている俺のわがままに付き合って命張ってくれてんだ!お前とは、覚悟が違う!」
「っ……私に、ラウラを守る覚悟が無いって言うの!?いわなだれ!」
激昂した私の指示に合わせて、いわなだれでキョジオーンを叩き潰す。こうかはいまいちだが、のろいとしおづけのスリップダメージも合わせてキョジオーンは崩れ落ちた。結局、なにがしたくてキョジオーンを出したんだろ。ステルスロックをばら撒くのが狙いだった?なんのために?
「ラウラを守る、か。なにがどうしてラウラの記憶を取り戻さないことが守ることになるのか知らねえが……これだけはわかるぜ。お前は迷っている。迷いながら勝てる程ポケモンバトルは甘くないぜ!キョジオーンだけにな!」
「……甘くない、けどしょっぱいってこと?」
「人のボケをツッコむのはボケ殺しちゃんだからやめような?」
疑問符が浮かんだので聞いてみたら真顔で怒られた。ごめん。
「…きよめのしおで状態異常は効かないんだったな。ならもう、お前が行くしかねえよな!マフィティフ!」
「っ……」
繰り出されたのはマフィティフ。ペパーの相棒にして切札だろうポケモンだ。来た。今の無敵のキョジオーンの唯一の天敵、あくタイプ。いくら防御力が硬くても弱点は弱点だ。突かれたら一気に崩される。でも普通の威力なら大丈夫、そう言い聞かせているとテラスタルオーブを取り出すペパー。持っていたの…!?
「出し惜しみはなしだ!快気祝いのテラスタルだ!光っとこうぜマフィティフ!」
ペパーが逆手に持ったテラスタルオーブが光り輝き、マフィティフは結晶化。頭にいかにも悪そうな結晶を乗せたその姿はまさしくあくテラスタル。……それは、まずいかな。思わず冷や汗を流した。
無敵キョジオーン爆誕。このゴーストテラスキョジオーンの進化前のジオヅムが普通に手に入るのよく考えたらやばいよね(ロースト砂漠と列柱洞の間にいる)
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