今回はネモの屋敷にて。楽しんでいただけると幸いです。
また旅に出ると決めた訳だが。さすがに昏睡中のユウリを連れて出る訳にもいかないので、俺達はネモの屋敷で寝泊まりしていた。ここ数日間、俺は再度メイドとして働いている。オレンジアカデミーでもよかったのだが、校舎の一部が破壊されたり生徒の大部分がブルーフレア団だったこともあって大混乱に陥ってるからこっちの方が都合がいいのだ。
「マトイさんから事情聴取したリラさんから教えられたけどエスプリにされてた人達はラウラと同じで脳に負荷がかかって脳が疲弊した状態になってるんだって」
「俺と同じみたいに記憶が?」
「ラウラの時とは改良しているからその心配はないってマトイさんは言ってたみたい?遅くても停止してから一週間で目覚めるってさ」
「俺の犠牲のおかげだな」
そう皮肉るのは昼下がりのネモ邸の庭。パラソルの下で海風を浴びていたアイアールにミックスオレを持って来たときの話だった。一応アイアールとペパーは客扱いだから丁重に扱わないとメイド長に怒られるからな。傍ではペパーが気分よさそうにバーベキューしている。マフィティフが助かって余裕を持てたみたいでなによりだ。
「オレアさんはあの時話してからすぐにぶっ倒れたけど、戦いの最中にヘルメットを無理やり外したメロコさんを始めとした人達は無事だったみたい?予期せぬエラーでかかる負荷が緩和されたらしいよ」
「じゃあ全員ヘルメットを外しておけばよかったのか」
「ユウリさんの暴れっぷりはそんな隙なかったけどね…」
もう一人の俺が相手してたから被害は最小限ですんだが、その前は四天王全員を相手に圧倒して押し止めていたらしい。ガラルに四天王はいないが、もしいてもあんまり変わらないことが証明されたな。こっちの世界のムツキが四天王になってると気付いた時は驚いたが。あいつ絶対こっちでもぶっ倒してやる、蟲をなめてるのは変わらないみたいだからな。
「ラウラお待たせー。修理完了したってお父様が」
すると、ハッコウシティに外出していたネモが戻ってきた。その手にはむしタイプカラーのスマホロトムが握られている。あっちの世界で俺が持ってたスマホロトムだ。国際警察がマトイさんから押収していたのだが壊れていたので、スマホロトムを扱っている会社の社長であるネモの父親…旦那様に修理を頼んでいたのを、ネモが預かって来たらしい。
「助かった、お礼を言っといてくれネモ」
「お父様は今日の夜に帰ってくるらしいから自分で言ったらどうかな?」
「ああ、そうするよ。…さて。ヘイ、スマホロトム。ネモになんかされたか?」
『変なアプリを入れられたロト』
「やっぱりか」
メニュー画面では非表示になってるらしいので、設定の項目からアプリ一覧を開いて見覚えの無いアプリを消してやる。異世界のスマホロトムだ、ネモにすべて用意してもらったために例の保護者追跡機能とかいうのが付けられていた今のスマホロトムと違うからなんか仕掛けてると思ったが追跡アプリか。やだこの子怖い。ユウリはまだ俺のプライバシーを守って………なかったわ、掲示板でよく暴露しているとかモコウに聞いたわ。
「ばれた?ごめーん」
「ごめんですんだら警察はいらん。いい加減にしないと国際警察に突き出すぞ」
「そんなことで呼ばれるほど国際警察も暇じゃないと思うよ?」
それはそう。前世なら間違いなく犯罪だから遠慮なく警察に突き出せるんだがな、ポケモンの世界だと普通に行方不明が多発するから安全管理が第一とされているから追跡系統は合法だ、強く言えん。
「とりあえず今のスマホロトムの連絡先とか入れておくか…」
「今のスマホロトムはどうするの?」
「予備に持っておくさ。最新モデルだからな」
「そっちをメインにすればいいのに」
「こっちに愛着あるんだよ」
写真も確認する。よし、消えてないな。あっちの手持ち達蟲ポケモンたちとの集合写真も、ユウリとモコウとムツキと一緒に撮った写真も、そのまま残ってる。さすが旦那様だ。…そう言えば、デンチュラたちは無事だろうか。ユウリが目覚めたらそれも聞かないとな。
「あ、これが例の奴?本当だ悪の組織だ…」
「それがアイアールが騙されてた理由?」
「勝手に見るな。オイヤメロ写真で写真を撮るんじゃない。ん"やぁーめぇーろぉぉぉ!?」
プラズマ団に洗脳されてた時の服を出来心で着て深夜テンションで撮影したもののできがいいから残してた写真をアイアールとネモに撮られそうになってスマホロトムを抱えて逃げる。ああ、くそっ、ロングのメイド服だから歩きにくい!普通に恥ずかしいからヤメロオ!?
「何してんだお前ら。ほら焼けたぜ。めしあがれちゃんだぜ!手を洗いな!」
「「「おおー!」」」
するとペパーが完成したらしいバーベキューの串を手にして笑い、俺たちは言われるままに手を洗いに一度屋敷に戻り水で手を洗っていると、轟音が外から轟いた。
「え、なになに!?」
「爆音がしたけど…!?」
「なにごとだ!?」
慌ててアイアールとネモと共に外に出ると、そこではボーマンダ…ではなく、トドロクツキがペパーの肉を匂いに釣られたのか暴れ、バーベキューの串を両手に持って庭を駆け回って逃げるペパーの光景があった。トドロクツキってことは…ユウリの手持ちのアイツか!?
「今畜生!両手が塞がっててマフィティフが出せねえ!でも俺は恥も外聞もなく叫ぶぜ!助けてくれラウラ!アイアールー!」
「止めるよツキカゲ!きずなへんげ!」
「ダーマ、糸でふん縛れ!すばやく!いとだまバルカン!」
「マスカーニャ!顔にハットトリックフラワー!」
情けなく絶叫して助けを求めるペパーに、アイアールは出ると同時にきずなへんげしたゲッコウガのツキカゲを、俺はワナイダーのダーマを、ネモはマスカーニャを繰り出す。マスカーニャがトリックフラワーをオーバーヘッドキックで蹴り飛ばす昇華技を顔にブチ当て、ダーマが当たったら拘束する糸が巻かれる糸玉を乱射して四肢を縛り、ゲッコウガが結晶化したみずしゅりけんを手に頭上から叩きつける。
「グオアアアアアッ!」
しかしトドロクツキは翼を上げてゲッコウガを吹き飛ばし、首を回して糸を噛みちぎり、マスカーニャに突進。噛み付いて天高く投げ飛ばしてしまう。
「強い…!でもなんで出てきたの!?」
「ごめんなさいお嬢様!わた、わたしが……眠っているお客様の部屋の掃除をしていた時に、珍しいポケモンだからちょっと見たいと思って触ってたらテーブルから落ちてスイッチが…」
そうのたまうのは新人メイド。そんなことある!?って思ってみて見たらユウリの寝ている部屋の壁に大穴が開いていた。……それで肉の匂いに釣られて庭に出てきたってことか。
「くそっ…ユウリが育てただろうから強いぞ!全力で止めろ!ダーマ、はいよるいちげき!」
「ツキカゲ、かげぶんしん!からのつじぎり!」
「マスカーニャ、じゃれつく!」
一斉攻撃を仕掛けるも、尻尾の一振りで薙ぎ払われる。指示なくここまで強いとかどんだけだユウリのバカ!
「五月蠅いなあ。ゆっくり寝れないよ…インテレオン、とんぼがえり!」
すると壊れた壁からヒョコッと顔を出した手に握られたモンスターボールから出てきたインテレオンが待ってましたと言わんばかりに地面を駆け抜け、サマーソルトキックをトドロクツキの顎に叩き込んで怯ませ、ボールに戻って行くと代わりに空中に飛び出したのは、セキタンザン。
「セキタンザン、じしん!」
「あぎゃあああ!?」
そして急降下して接触した瞬間に振動を叩き込んで、トドロクツキは泡を吹いてセキタンザンに押し潰された。
「…あ、ラウラだ!無事だったの!?」
「それはこっちの台詞なんだが?ユウリ」
そして壁の穴から顔を出して満面の笑みのユウリに、思わず苦笑するしかなかった。
目覚めるユウリ。スマホロトムとか、メロコが何故無事だったのかなどのフラグも回収させていただきました。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。