今回はリップVSアイアールその一。楽しんでいただけると幸いです。
珍しく全然できずにボロボロなラウラはそのまま喜怒驚楽エクササイズを続ける中、私は一足先に街の中心にある建物の屋上にあるスタジアムまでやってきていた。リップさんはジムと兼ねている仕事…モデルの電話がかかったらしく遅れてきているとのことだ。ルールは4VS4でどうぐは持たせるのも使うのもなし、挑戦者である私だけ入れ替えが許されているいつものルールだ。
「そうね…わかった、こっちで進めておくわ。キャッチコピーは分かりやすく『ナチュラルに 美しさを』。アイシャドーの新色も発注シクヨロね。…いつもありがと。それでは失礼しまーす」
そんな電話をしながらスマホロトムを耳に当てて歩いてきたリップさん。すごく、業界人って感じだ。バトルフィールドの反対側に立ち、通話を終えてこちらに振り返るリップさん。
「こんばんはアイアールちゃん、ジムリーダーのリップよ。メイクアップアーティストが本業なんだけどね?キハダちゃん、褒めてたわ。あなた、とってもゴイスーだって。でもラウラちゃんはやっぱり苦手だったわよね。そんな気はしてたんだけど。メンゴメンゴよ」
「ラウラに苦手なことがあるだなんて意外でした…」
「んふふ……やっぱりアイアールちゃん、ラウラちゃんに対して盲目的なところがあるわね。可愛い挑戦者ちゃん。アオハルね」
「そんなこと…」
ないとは、断言できなかった。ラウラに対して理想を見ているところは、正直ある。ユウリとの関係を知ってショックを受けたのもそうだし、ラウラがジムテストでいきなり挫折するとは思ってもいなかった。ラウラも私と同じ人間だったんだなあと驚いたものだ。
「それはさておき、リッププロデュースのエクササイズでさらに美しくなれて嬉しいでしょ?」
「は、はあ…」
「ポケモンの身体もちゃあんと綺麗にしてるし、…出会った時から思ってたけどナイス美意識ね。特にゲッコウガがいいわ!ゴイスーよ!」
「ツキカゲのことを褒められるのは嬉しいかな…」
「人間もポケモンも身だしなみは大事だもん。誰でも変われるマジック…それがお化粧、それがメイク。アイアールちゃん、恋する乙女だからかしら。貴方は特に意識しているのを感じるわ、薄くだけどやってるわね?うんうん、感心感心」
なんか勝手に納得するリップさんに気圧される。確かに毎朝薄くだけどやってるのを見抜くなんてすごい。ラウラなんか同じ女なのに気づきもしなかったし。男っぽいとは思ってるけど意識も男っぽいんじゃないかなあれと最近思ってきたところだ。
「せっかくだから貴方もリップがお化粧してあげたいけどその前に……リップの
▽ジムリーダーの リップが 勝負を しかけてきた!
「美しく飾り立てなさい!リキキリン!」
「お願い、ツキカゲ!」
リップさんが繰り出してきたのはリキキリン。私が繰り出したのはゲッコウガのツキカゲ。右拳を顔の前に掲げ、大きく振り被って天高く突き上げる。私とツキカゲの意識がシンクロする。
「きずなへんげ!ラウラ命名、ゲッコウガIR!」
自分で言ってみたらクソ恥ずかしい名前だ。足元から発生した水流に包まれ、激流が吹き飛んで姿を変える。私の髪型と同じ三つ編みの茶髪の様な意匠に、星々が輝く夜空を思わせるサファイアの様な瞳と、背中に出現した水でできた巨大十字手裏剣は宝石の様に、テラスタルの如く光り輝く。ラウラの応援をしたいから最初から全力だ。一気に決める!
「つじぎり!」
「優雅にゴルフの如く。アイアンヘッドよ」
両手から飛び出した水流を煌めく硬質化させて二本の水の太刀を握ったツキカゲの交差する斬撃が、首を大きく振りかぶったリキキリンの鋼と化した頭部と激突。硬質化した水の太刀が砕け散るほどの勢いだったが弾き返して見せるリキキリン。ビリビリとした衝撃が私の腕にまで伝わってきた。
「ぐう…互角!?そんな…」
「私の専門はエスパータイプ。念動力で威力をカバーしているのよ」
「なら…みずしゅりけん!」
「かみくだきなさい」
宝石の様に煌めき硬質化した水の十字手裏剣を二本握って投げつけるツキカゲ。しかしそれらは首の軌道を念動力で操っているらしき変幻自在な動きでそのフードみたいな牙で噛み砕かれてしまい、まるで通じない。この人、強い…!
「リフレクターよ」
「なら回り込んで…!」
「しねんの、ず・つ・き」
念動力の壁を展開してくるリキキリンに、シンクロした意識で背後に回り込もうとするツキカゲだったが、なんとリキキリンはリフレクターをしねんのずつきで粉砕。その欠片を勢いよく散らばせて念動力の刃の雨を放って来て、全身を切り刻まれる。
「ゲコッ…!?」
「うああああっ!?」
「んん?もしかしてシンクロしている?明らかにパワーアップした代償みたいね」
全身を切り刻まれたダメージの感覚に、身体を抱えて蹲る。弱点を指摘されたばかりなのに、焦って決めようとして事を急いた…!しかも相手にそのことがばれてしまった、不味い。
「だからといって加減はしないわ。せめて一撃で仕留めなさい、アイアンヘッド」
「た、たたみがえし!」
ダメージで朦朧としながらも咄嗟に指示。右手を触れた箇所から持ち上げる様にして水流の壁を生み出し、それを宝石の様に煌めかせて硬質化させて防ぐツキカゲだったが、その威力までは殺せず吹き飛ばされて地面を転がり、そのダメージが私にまで響く。ダメージが100%伝わるわけじゃないけど、これ以上は不味い。戻さないと…。
「戻って、ツキカゲ!」
「懸命ね。次はどの子で来るのかしら?」
「くっ…」
私の手持ちで相性がいいのはツキカゲ、シング、ゴーストテラスのツムヅムだけだ。4VS4のこの対決、あと一匹ドーちゃん、ヒナ、ハルクララの中から選ばないといけない。相性の悪く素早く動けないドーちゃんは論外、残るはヒナとハルクララ…。
「お願い、ヒナ!」
「…へえ。クエスパトラ、いいポケモンを持っているわね」
私が選んだのはクエスパトラのヒナ。健脚が自慢のスピードファイターだ。まずはとくぼうを下げる!
「ルミナコリジョン!」
「首を振り回してしねんのずつき!」
こちらの放った六角形の念動力を、首を振り回して頭部の念動力を渦の様にしたリキキリンが受け止め弾き返す。まだだ、リキキリンは長すぎる首が祟ってそんなに動けない。たたみかける!
「マジカルシャイン、ドリルくちばし!」
「アイアンヘッド、リフレクター、しねんのずつき!」
マジカルシャインを鋼と化した頭部で打ち消し、リフレクターでドリルくちばしを受け止めしねんのずつきでリフレクターを零距離で破壊、刃と化した破片で全身を切り刻まれるヒナ。
「最後の技は何?!それとも打つ手なしかしら?出し惜しみしていたら勝てないわよ?」
「とっておくことに意味がある技もある!とっておき!」
渾身の蹴りがリキキリンの胸部に炸裂。勢いよく蹴り飛ばす。とっておき、他の技を全部使用してから使うことで使用できる高威力の技だ。急所に受けたのかそのまま崩れ落ちるリキキリン。やっと一匹倒せた…
「一息ついている暇はないわよ。同じポケモンというのも乙なものよね、クエスパトラ」
そう言って繰り出されたのはアイシャドウが施されたクエスパトラ。ヒナと同じ種族、それも相手はエキスパート。…これはきつい戦いになりそうだ。
アイアールの切札であり明確な弱点になってるきずなへんげ。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。