今回はまさかの再開。楽しんでいただけると幸いです。
ベイクタウンを後にして。俺達はそらとぶタクシーでチャンプルタウンに訪れていた。アイアール、ユウリ、ネモ、ペパーと一緒にローリングドリーマーで食事をとっているのだが、なんか視線をめっちゃ感じるけどなんなんだ。
「…落ち着かねえ」
「そりゃ視線も集まるぜ。新進気鋭の急成長にも程がある有名配信者ちゃんだからな」
「私わかってたから変装してきたもんね」
「ユ……グロリア、わかってたなら教えろ」
髪型をお嬢様風にして青くない普通のサングラスとパーティードレスで変装しているユウリを、人前なので本名ではなく偽名のグロリアでツッコみながら寿司を口に入れる。高級店言うだけあって美味いな、前世の回らない寿司には負けるが。
「まさかラウラが配信者になるなんてねえ」
「遅すぎたぐらいだと思うよ!だってジャックがいるんだし!」
「ラウラは蟲ポケモンの事を最優先にするから早かれ遅かれだったろうね」
アイアールとネモの会話に、お見通しと言わんばかりのグロリアに口答えしようとして、マジでそうだからぐうの音も出なかった。
「次の配信でジャックを出す気ではあるけどさあ…」
「母ちゃんの事も忘れんなよ、後一ヶ月もないんだからな」
「忘れてないさ。まあエリアゼロの入り口のゼロゲートはすぐそこなんだが」
「こんなところにあったんだね」
「チャンピオンランクでも立ち入り禁止なんだけど博士はどうやって入れるつもりなんだろ」
「……私達無断で立ち入ったけど思いっきりダメな奴だったかあ」
チャンプルタウンはゼロゲートのすぐ傍、即ちエリアゼロに最も近い町だ。用事を全部済ませたらまたここに戻ってくることになるだろうな。そんな会話をしながら緑茶っぽいなにかを隣のユウリと一緒にゆっくりとすすっていると、出入り口の扉が開いて見覚えのある二人が入ってきた。
「何名様でいらっしゃいますか?」
「グレイ、お腹すきました」
「わかったから大人しくしてろ。二名だ。カウンター席で頼む」
白黒のBW男主人公みたいな恰好をしたグレイと、BW女主人公みたいな恰好をしたダフネがそこにいた。
「「ぶーっ!?」」
「「わー!?」」
思わずお茶を噴き出して緑の液体を目の前のアイアールに、ユウリはネモにひっかけてしまった。ハンカチを取り出したペパーに顔を拭かれるアイアールとネモを余所に、ユウリと一緒に立ち上がってそそくさと席待ちしている二人に駆け寄る。
「グレイ、ダフネ!?お前らなんでここに!?」
「追われているとか言ってなかった!?」
「馬鹿たれか」
「「~!?」」
まくしたてるとビシッとユウリと一緒にグレイのチョップを頭頂部に喰らい悶絶する。なんか周りが騒がしいな。…あっ。思い出した、今の俺有名人だった。
「…悪い、悪目立ちしてるか」
「まったく。ダフネ、先に食ってろ。俺は外で話してくる」
「わかりました!」
「ユ…グロリアも戻っとけ。逆に悪目立ちする」
「わかりましたわ」
「グロリアお嬢様、まだそのキャラやってるんです?」
「誰かさんのおかげでしみついちゃったの!」
二人で仲良く(?)席に向かっていくユウリとダフネを尻目に、俺はグレイについて外に出た。
「で、なにしてんだ?」
「こっちの台詞だ。なに配信なんかやってるんだ馬鹿かお前は。あんなことしたら物好きに素性を調べられて面倒なことになるかもしれないだろ」
俺の問いかけに半ギレで返してくるグレイ。どうやら配信したことがお気にに召さなかったらしい。
「いや大丈夫だろ、戸籍からしてないんだから」
「ないから厄介なんだよ……記憶が無いときならまだいいが記憶があってそれとか確信犯か?本当に馬鹿なのか?」
「馬鹿馬鹿言うなよ。これでも考えたんだぞ、ジムリーダーと言う立場じゃなくなっても蟲の素晴らしさを教えるにはどうすればいいか!」
「よーしわかった蟲馬鹿だお前は!」
「俺を馬鹿にするのはいいが蟲を馬鹿にするな!この伝説厨!」
「誰が伝説厨だ!俺は灰色厨だ!」
「赤いゲノセクト連れてた奴がなに言ってんだ!あいつ赤だぞ!赤!」
「目の色が灰色だろうが!」
「それはたしかにそうだ!」
言い合いして、変な方向に着地して二人してゼーハーと肩で息をして落ち着く。…なに話してるんだ俺達。
「…はあ、まあいい。有名になった物はしょうがない。元の世界に帰る前に後始末はしろよ」
「プラズマ団の科学力で異世界でも配信とかできないのか?」
「お前科学を万能だとでも思ってるのか、馬鹿。………フーパと言うポケモンがいればあるいはできるかもしれんが」
「フーパ?聞いたことのないポケモンだな」
「そうだったな……前世のお前のポケモン知識はBW2から一切進んでないんだったな……よく逆に情報を仕入れずに2020年の年末まで生きてこれたな」
首をかしげる俺にがっくりと肩を落として呆れるグレイ。いやまあそれは、大金はたいて買ったペットの蟲たちを育てるのに人生賭けてたからな……あと息抜きにBWのサブウェイを延々やってたぐらいか。ペンドラー抜き蟲ポケモン縛りでノボリクダリのコンビと戦えるぐらいにはやりこんだなあ。アイアントとか懐かしい。ガラルにはいたけどパルデアにはいないんだよなあ。
「フーパは光輪の超魔神フーパって映画に登場する幻ポケモンだ。手にしたリングで次元と次元を繋げることができるってポケモンだ。ちなみにエスパー・ゴーストのいたずらポケモンだ」
「パルキアよりやばくね?」
「さすがに神のパルキアの方がヤバいだろ。そいつを見つけられたら異世界でも配信できるかもな?」
「……配信の為だけに幻ポケモン捕まえるのは違くないか?」
「お前が言い出したんだろうが!」
それは失敬。……俺が入ったウルトラホールを安定させることができればもしかしたらって感じだろうか。俺アレにそんな詳しくないけど。
「それはともかく、お前たちは何でここに?」
「外ばかり警戒されてるからいっそ中に入れば追跡を逃れられると思ってな」
「ゼロゲートから出なけりゃいい話じゃないのか?」
「そろそろ惣菜とかカップ麺じゃなくて外食食いたかった」
「お、おう…」
悲壮感を漂わせるグレイ。いつもペパーの飯とか食ってて、なんかすまない。
「それで、ゼロゲートまで来る気なのか?」
「いいや、まだジムリーダーとスター団ボスと四天王とマジボスとトップチャンピオン倒さないとだからな。ここには最後のジムにいくために来た」
「……なんて?」
「最後のジムにいくために」
「そこじゃねーよジムリーダーとスター団のボスと四天王とマジボスとトップチャンピオンを残り二週間ちょっとで攻略する気なのか?」
「そうだが?」
「馬鹿だ、真正の馬鹿がいる……」
無謀かもしれんが一発クリアすれば間に合うかもしれないじゃないか。
「…わかった。俺は万が一のためになんか策を考えとく」
「それは助かる、お前はプラズマ団の再建した手腕は確かだからな」
「余計なお世話だ」
「ところでなんで一ヶ月が期限だったんだ?」
「ああ、それか。ダフネは言わなかったんだったな」
言うべきかどうか顎に手をやって悩んでいるグレイ。結論に至ったのか頷いて向き直ってきた。
「…一言で言うとパルデアの危機だ」
「最終兵器がまだ残ってるのか!?」
「…いや、そうじゃない。ブルーフレア団のマトイが最終兵器を転移させるために空間をガバガバにしてくれたせいで、タイムマシンを早く止めないと一ヶ月も経てばダムが決壊する。すなわち」
――――――パラドックスポケモンがパルデアに溢れだす
その言葉に、俺は絶句するしかなかった。
ローリングドリーマーの内装は某チェーン店をイメージ。人前に出る時に黒歴史のグロリアを演じないといけなくなったユウリである。
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