「すなわち、パラドックスポケモンがパルデアに溢れだす」
グレイの口から紡がれた言葉に、思わず絶句する。パルデア地方に、イダイナキバみたいに一匹だけでも強力で凶暴なパラドックスポケモンが溢れだすだって…!?俺のウカはともかく、ユウリやシュウメイ達みたいな実力者じゃないと手名付けられない、バケモノと呼んでも差し支えないポケモンたちだぞ!?
「…嘘だろ?」
「こんな嘘を言ってどうする。ちなみにブルーフレア団の計画が上手く行った場合、ゲーム版…XYやポケスペのXY編によると最終兵器起動後は死の世界になるらしいから雪崩込んで来た時点でパラドックスポケモンも死んでるな。よくできてる計画だ、褒めてやる」
「何様だお前。……いや、王様志望だったな確か。しっかしポケスペにXY編なんてあったのか。Zもあるのか?」
「……お前、一応聞くが2020年の年末に死んだんだよな?」
「洗脳された時は親友関係だったとはいえ馬鹿正直に言いすぎじゃね?俺。そうだけど」
「…その頃にはXY編は終わってサンムーン編も結構佳境に入ってるぞポケスペ……」
「さんむーん?」
「そこからか……お前が転生したガラルが剣盾の舞台だってことも妹に聞いて初めて知ったんだっけか。どんな生き方したらそんなピンポイントに無知でいられるんだ。アローラのゲームだ」
「あー、ミヅキのところの。今ジュリがいるところか」
「そうだ。BWのあとは色々番外作品もあるが…XY、サンムーン、剣盾とシリーズが続いているんだ。ちなみにルビーとサファイアもリメイクされてるぞ」
「……リメイクされたテッカニンが見れるならそれやってから死にたかったな…」
「本物を見ている奴がなにを言っているんだ」
それはそうだが、ダフネに見せられた夢でBWやった際に懐かしく感じたみたいに、ゲームのポケモンでしか味わえない要素もあるんだよなあ。
「話を戻すぞ。つまりブルーフレア団のボスであるマトイは後先考えて無茶をやってたわけだ。後先考えずにただ止めたお前たちとは違うな」
「喧嘩売ってるなら買うぞ」
「そんなことしている暇があるならさっさとやることやってスカーレットブックと一緒にエリアゼロに来い。パラドックスポケモンの雪崩を止める方法はただ一つ、出口を閉じる事だけだ」
「…?オーリム博士がタイムマシンを作ったなら止めれる筈だろ?なんで俺達が行く必要がある?」
そうだ、そこが気になっていた。ペパーが必要なのはわかったが、なんで俺達全員なんだ。
「正確には来てほしいのはスカーレットブックを持つオーリム博士の息子ペパーと、エリアゼロに蔓延っているパラドックスポケモンの群れを打倒して最深部まで辿り着ける戦力だ。ラウラ、ユウリ、ネモ、そしてマトイを打倒したアイアール。お前たちしかいない。欲を言えばもう一人、機械に詳しい奴も欲しいが…まあそこは俺が何とかする」
「お前とダフネは駄目なのか?」
「生憎と俺達の実力はお前に比べると二流だ。俺は全力の手持ちじゃないし、ダフネはシンプルに練度不足だ。来た当初はそんなことなかったんだが、滞在している間にブルーフレア団がやらかしていたらしく気付いたらもうどうしようもない数にまで増えていた。バリアでエリアゼロに閉じ込めているとはいえ、最深部まで辿り着くどころか逃げ帰るのが精いっぱいだった。ゼブライカは重傷を負ってポケモンセンターに預けている」
この二人で敵わないだと…?確かにグレイはキュレムとかケルディオとか赤いゲノセクトとかがいないんだろうが、それでも普通に四天王クラスのバトルの腕を持っている。ダフネだって俺が認める蟲使いだぞ。
「オーリム博士は?」
「ゼロラボに閉じ込められている。起動キーのスカーレットブックが無いと出ることも、タイムマシンを停止することもできない。…まあそれだけじゃないんだが」
「おいそれどうやって生きてるんだオーリム博士」
「あー……保存食を買い込んでたらしい」
目を泳がせてからそう言うグレイ。なんか怪しいが、この世界というかポケモン世界の保存食は有能で美味いから問題ないのか。
「そうか、それなら大丈夫だな」
「チョロすぎかお前」
「なんて?」
「なんでもない。とにかく期限はオーリム博士の計算によればあと二週間と四日ぐらいだ。…間に合うのか?」
「……俺、約束したんだよ。シュウメイと、オモダカさんに。誓ったんだよ、世界に」
ああそうだ、約束したんだ。もうブルーフレア団云々の理由はなくなったけど、スターダスト大作戦を止めるって。必ず全部のジムバッジを集めてあの人のもとに向かうって。そしてなによりも。
「蟲ポケモンはかっこよくて!かわいくて!美しくて!最高で!最強なのだと!証明する、そう世界に向けて宣言したんだ。…急ぐ理由はないんだけどさ。やるなら期限は決まってた方がいいだろ?」
「…ああ、ポケスペのルビサファ編か」
「80日の誓いとまではいかないがな」
ポケスペ第四章。ルビー・サファイア編にて主人公のルビーとサファイアはひょんなことからジムとコンテストの制覇を競うことになり、その期限を80日とした。それをちょっと思い出した。
「安心しろ。一週間もあれば十分だ。チャンピオンランクになってから行ってやるよ。今より強くなった方がお前も好都合だろう?」
「それもそうだな。ただでさえ強いお前がさらに強くなれば鬼に金棒、ピカチュウにでんきだまだ」
「それを言うならアルセウスにたまむしプレートだろう」
「すまん、それはちょっとわからない」
「なんだと。創造神が蟲になれば無敵だろうが」
「お前はあれ蟲扱いなのか?」
「いや、丁寧にお断りする」
「なんなんだお前」
あんなフォルムの蟲がいてたまるか。…うん?地響き?というよりは……鉄か何かが地面を擦る音?
「…なんだ?」
「この音は…嘘だろバリアを突破したのか!?」
その瞬間だった。目の前の崖の岩盤をぶち破る様にして巨大なタイヤが飛び出してきた。いや、タイヤ、じゃない。あれは…ドンファンを模したロボットのような……イダイナキバと似ているが、テツノドクガと同じタイプのパラドックスポケモンのドンファンか!?テーブルシティでの戦いで見かけた気がするが!
「テツノワダチ、未来のパラドックスポケモンだ!構えろラウラ!メタグロス!」
「未来のポケモンになにがあったんだよ!?ウカ!」
チャンプルタウンの人々が逃げて行く中で、グレイは色違いメタグロスを、俺はウカを繰り出して構える。このままじゃ店にぶつかる、中にいるアイアールたちもただじゃすまないだろう。ここで止める!
「サイコキネシス!」
「ニトロチャージ!」
グレイのメタグロスが念動力で回転を止め、それでも回転しようとじりじり動いているテツノワダチに炎を纏ったウカの拳が叩きつけられる。この感触、はがねタイプか!
「これ以上は持たないぞ…!」
「ウィ・ルドン・ファー!!」
「打ち上げろ、ローキックだ!」
サイコキネシスを打ち破ってきたテツノワダチの回転する体をローキックで上空に打ち上げる。空中じゃ走れないだろ!
「しびれごな!とびかかる!」
さらにしびれごなを浴びせて麻痺し、落ちてきたテツノワダチを殴り飛ばして草原に叩きつける。さすがに硬いな、一気に決める!
「ウカ!決めるぞ!」
俺の呼びかけに応えたウカが両手の間にしびれごなを集束させ、それを握ってテツノワダチに叩き付け、ニトロチャージで業火を纏う。
「ふんじんねっぱ!」
そして、大爆発がチャンプルタウンの真横を吹き飛ばし、その中心でテツノワダチが崩れ落ちたところにグレイがハイパーボールを投げて捕獲した。
「キュレムの代わりになるといいが…こいつも使って俺たちでパラドックスポケモンは食い止める。待っているぞ。じゃ、俺達はこれで」
「なにごとですかグレイ…って、まだ全然食べてないのにー!?」
騒ぎを聞きつけて出てきたダフネの手を握ってメタグロスに乗り去っていくグレイ。…なんでそんなに急いでるんだ?と首を傾げて、気付く。…やっべ、草原が真っ黒焦げだ。さらに悪いことにムクホークに乗って今一番来てほしくない人が来てしまった。
「…何事かと来て見れば、なにをしてるんですかラウラさん」
「アオキさん。これは、ですね?」
グレイめ、覚えてろアイツ。
というわけで改めて期限内に攻略をすることを決意したラウラでした。テツノワダチが出てきたのは余裕がそんなにない表れです。地味にグレイの戦力アップ。
ラウラがBW以降を知らないのは無理があるなと思ったけど意図的に避けてたならワンチャン?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。