最強のジムリーダーとの決着。楽しんでいただけると幸いです。
「ぼむん!ヘビーボンバーだ!」
「ふぶき!」
雪崩の上を駆け抜けるコライドンを操縦するアイアールの後ろで掴まり、でんじふゆうで空に舞い上がり急降下したぼむんが、ふぶきを放って勢いを弱めようとするツンベアーと鍔迫合っているのを追いかける。振り返ればアルクジラの上でスノーボードの様に滑るグルーシャがいた。引退したのを感じさせないぐらい軽やかに動くじゃねえか。
「ラウラ!こっちは気にしないで!バトルに集中して!」
「もとよりそのつもりだよ!ぼむん!素早く!まきびしキャノン!」
「ツンベアー、爪を武装。アクアジェットで弾くんだ」
牽制のつもりで発射したまきびしキャノンが、手に吐息を吹きかけて氷柱を装備した爪を振るったツンベアーの水を纏った高速のジャブで全弾撃墜される。
「つららおとし!」
間髪入れずに上空に冷気の吐息が吹きつけられ、流星群の様に降ってくる氷柱を身を縮こませて耐え抜くぼむん。
「その場でヘビーボンバー!」
高度を取ることなく、下に向けて衝撃を与えて雪煙を発生させて視界を隠す。でもこれじゃ俺も見えない、だから協力してもらう。
「アイアール!視点を変えてくれ!上だ!」
「了解!」
コライドンが空中に飛び出し、滑空する。この角度からなら雪煙に隠れながらもよく見える。ぼむんの顔の角度、ツンベアーの位置。左手でコライドンを掴んだまま右手の親指と人差し指で丸を作ってツンベアーを見据える。
「“ロックオン”なんてなあ!そのまま目の前にぶちかませ!ぼむん、でんじほう!」
「じしんだ!」
俺の言葉を信じて目の前にでんじほうを発射するぼむん。回避は不可能と断じたのかじしんで同士討ちを狙うグルーシャ。普通にでんじふゆうを指示するんじゃ間に合わない。だが俺には、早業と力業がある。
「素早く!でんじふゆう!」
「なっ!?」
ツンベアーにでんじほうが直撃。同時に早業で空中に浮かび上がり、じしんを回避するぼむん。結果、ツンベアーだけ崩れ落ちる。これでこっちはウカだけやられて、ぼむんと残り二体残している。対してグルーシャは手持ち三体倒されて残り一体。行ける、過去最高に流れがいい。
「蟲ポケモンの強さ思い知ったか!」
「蟲ポケモンと言うより君の強さって感じだけどね。確かに言うだけの事はあるけど……踏み外せばすぐに奈落だよ。君の場合、ひっくり返って真っ逆さまだろう」
「ご忠告どうも。この状態でも逆転するって意味か?」
「勝負と雪山は似てるんだ。あっとういう間に姿を変える。真逆の光景にね。いけ、チルタリス」
繰り出してきたのはひこう・ドラゴンタイプのチルタリス。前にも会ったな。テラスタルでこおりタイプになるのか。ぼむんのヘビーボンバーで決めて……!?
「ぼうふう」
「テラスタル……しないだと!?」
周りの雪崩ごと、暴風で天高く打ち上げられるぼむん。重量級のぼむんがあんなに軽々と……!?
「でんじふゆう…!」
「いくら浮かぶことができてもひこうタイプのチルタリスとの速度は雲泥の差だ。りゅうのはどう!」
どさどさと音を立てて落ちてくる雪の塊の中で、浮かんで何とか体勢を立て直すぼむんの背後に回り込むチルタリス。放たれた竜の形をした青い炎に貫かれ、撃墜されるぼむん。しくじった…!まさか、タイプを変えてこないなんて……!
「即テラスタルして得意なタイプに変える、たしかにそれはジムリーダーの定石だ。だけどね……別に使わないといけないなんて決まりはないんだよ。あくまでテラスタルは「切札」に過ぎない」
「そうか、それは勉強になったよ……レクス!」
ひこうタイプはこの雪崩のフィールドにおいて圧倒的なアドバンテージがある。なにせずっと空中にいるんだ、雪崩の影響を受けない。対して俺のひこうタイプはレインのみだが、ひこうタイプはこおりタイプと相性が悪い。ならばとある程度空中戦ができるレクスを選出したわけだ。
「雪崩を蹴れ!じごくづき!」
「ぼうふう」
雪崩を利用して壁キックし、喉元に向けて蹴りを突き刺すレクスだったが、暴風が放たれバリアの様になってレクスは弾き飛ばされる。だがその技は、雪崩も一緒に打ち上げてしまうのだとさっきの攻防でわかった!
「素早く!こうそくいどう!」
「むっ」
打ち上げられた雪の塊を足場に蹴り、目にも留まらない高速でピンボールみたいにチルタリスの周囲を球体を描くように駆け抜けるレクス。この速さと脚力なら、本来なら身動きが取れない空中だろうが関係ない。
「力強く!かかとおとしだ!」
真上を取ったレクスが、渾身の踵落としを叩き込まんとする。スピードを乗せて、重力落下も合わせ、更に力業を伴った、渾身の一撃。かくとうタイプの技と相性が悪いひこうタイプだろうが確実に堕とせる、そう考えての指示。しかしそれは、悪手だったと思い知る。
「素早く。ムーンフォースで叩き潰せ」
瞬間、空中に顕現し落ちてきた月の幻影に押しつぶされ、チルタリスに触れること叶わず、雪崩に叩き込まれるレクス。今のは……早業、だと?
「……僕はナンジャモのリスナーでね。大会前とかたまに観て元気をもらってたんだ。君とコラボした動画も見て、見よう見まねで習得させてもらった。早業と力業。相棒のチルタリスしか仕込めなかったけどね」
「ナンジャモのリスナーだったのか…?」
「変な挨拶やりだす前から知ってる。昔のほうが体張ってて好きだったかな。最近は企業案件多いし、変に大衆向け狙ってて、結構サムくなってるよね」
「厄介な古参リスナーだな!?」
そっちも衝撃的だが結構不味い。ただでさえ強いチルタリスに、早業と力業まであるだと…?……一か八かか。左手でアイアールの肩を掴んでしがみつきながら、テラスタルオーブを構える。
「最後のポケモンをいきなりテラスタルして出すつもり?サムいことをするね」
「……蟲ポケモンを舐めるなよ。打たれ弱いが根性はすごいぞ!」
「なっ…!?」
瞬間、むしテラスとなって雪崩から飛び出してくるレクス。ムーンフォースは致命傷だった。だが耐えた。レクスは耐えて見せた。体力も瀕死ぎりぎりで、むしのしらせが発動。ここで使わず何時テラスタルを使うんだ。
「次に繋げるんだレクス!素早く!とびかかる!」
「チルタリス、こっちも力強く!ぼうふうだ!」
先程までとは比べ物にならない暴風が吹き荒れ、レクスの飛び蹴りと激突する。何のために早業で使ったと思っている……!早業は、次の技に繋げるように行動できる…!
「力強く!とびかかる!」
「っ!素早く!れいとうビーム!」
せめぎ合いながら力業を発動。風の壁を貫き、飛び蹴りをチルタリスに叩き込んで、れいとうビームを受けて今度こそ戦闘不能となり崩れ落ちるレクス。……よくやった。
「お前が総大将だ!ジャック!」
最後に繰り出すのはジャック。いわタイプと言う、こおりタイプの弱点の一つ。テラスタルするとくさになってしまうからレクスに切るしかなかった。
「素早く!がんせきアックスだ!」
「久々に熱くなってきた……サムいとは思うけど、最大火力で勝負だ……!テラスタル!」
早業で岩石を纏った斧を振るい、ステルスロックを展開してそれを足場にして雪崩の影響なく直立するジャック。チルタリスもこおりテラスにテラスタルし、迎え撃つグルーシャさん。
「力強く!れいとうビーム!」
極太のレーザーとなったれいとうビームが冷気の渦と共に放たれる。アニメのポケモンとかなら最大火力で迎え撃つんだろうが、これは現実のバトルだ。真っ向から迎え撃つ必要はない!
「素早く!がんせきリッパー!」
早業+昇華技。極太レーザーをぎりぎりで回避しながら回り込んだジャックの斬撃が横から叩き込まれ、れいとうビームを中断して横に吹き飛び雪崩に巻き込まれるチルタリス。身軽な体も雪の重さじゃ浮けないだろ!
「力強く!がんせきアックス!」
渾身の力でその場で振り下ろした斧に纏った岩石がミサイルの様に吹っ飛び、チルタリスに直撃。テラスタルが砕け散る。
「…僕の氷、すっかり溶かされちゃったな。君の勝ちだラウラ」
「それはいいけど、この雪崩どうするんだ!?」
「それに関しては大丈夫、ほら」
視線を下に向けるグルーシャさんに釣られて向くと、久々に見た気がするサニアがいて。いわなだれで雪崩をせき止めている光景があった。
「…トップ……ひとづかい、あらい」
「さすがに対策はしてるよ。……あのトップならしない場合もあるから怖いけど」
「…お前らも大変だな」
オモダカさんの下にいる彼らに、本当に同情した。
ナンジャモのリスナーって情報をDLCで知った時に早業力業使わせるの確定したよね。たまにはテラスタルのタイミングをずらしてくるトレーナーがいてもよかったと思うんだ。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。