今回はVSボディスーツの襲撃者。楽しんでいただけると幸いです。
カロス地方、ミアレシティにて。ハンサムハウス二代目所長である少女、マチエールは今日も今日とてイクスパンションスーツに身を包んでエスプリとしてミアレシティにはびこる悪党を懲らしめていた。
「うん?電話だ…誰だろ」
イクスパンションスーツの作成者である改心した元フレア団の科学者、クセロシキに改良してもらい電話にも繋げられるようになったヘルメットを操作して電話に出ると、件のクセロシキだった。自首して逮捕された後は司法取引して国際警察の科学者になっているはずの人物からの連絡に喜びながらも首を傾げるマチエール。
《「マチエール、大変なんだゾ!」》
「今はエスプリだよ。どうしたの?」
《「無事で何よりだゾ……奴は現物を狙わなかったのかゾ?……いや、リモートコントロール機能を破棄したそのスーツに興味はないのか…?いやしかし……」》
「おーい、クセロシキさーん?」
自分の考えに没頭し始めたクセロシキに苦笑いしながら呼びかける。
《「はっ、そうだゾ!今、フラダリラボに来て未回収だったデータを国際警察に移そうとしていたんだが、破棄されずにフラダリラボに残されていたイクスパンションスーツのデータが何者かにコピーされた上で改竄された形跡があったんだゾ!それで現物を持っているマチエールも狙われてないのか心配になって……ということなんだゾ」》
「こっちは大丈夫だよ。破棄してなかったの、クセロシキさん?」
イクスパンションスーツの危険性は身を持って知っているマチエールは少し非難する声色で問いかけると、電話の向こうのクセロシキはシュンとする。
《「面目ないんだゾ……」》
「私も警戒するけど……心当たりはないの?」
《「ボス…フラダリの右腕だったあの女が持ち去った可能性もあるが、表の顔として活動していてそんな暇は無さそうだからその可能性はなさそうだゾ。ありえるとしたら……」》
「ありえるとしたら?」
《「ボスの左腕。影に潜んで諜報班として暗躍していた奴の可能性が高いんだゾ」》
そんな会話があったその頃、パルデア地方ではそのイクスパンションスーツを纏った何者かがラウラと対峙していた。
ウルガモスの放った炎の壁に囲まれる俺達と同じように炎の壁に囲まれてなお平然としている、漆黒のボディスーツとヘルメットに身を包んだ何者かがイダイナキバの納められたダークボールを拾い上げようとする。
「させるか!レクス!とびかかるだ!」
「スニーキング機能作動」
するとボディスーツの人物の姿がぶれて、長くて紅い髪に綺麗な青みがかった灰色の瞳を持つ少々小柄な少女……俺と瓜二つの姿に変身。ぎょっとしたレクスは目と鼻の先で急制止してしまい、その隙を突いてイダイナキバのボールを回収した偽物の俺に腕を掴まれ、片腕だけで炎の壁に投げつけられてしまう。なんてパワーだ。
「戻れレクス!」
咄嗟にレクスをボールに戻し、この炎の中で蟲ポケモンを使いたくないし俺の姿だと攻撃できないみたいなので、エクスレッグヘルメットを被り俺の姿をした偽物に突撃。頭突きを喰らわせるも腕を交差して受け止められる。
「ラウラが二人!?」
「よそ見するなアイアール!来るぞ!」
見てみるとアイアールとペパーは繰り出したリプルとジオヅムが鱗粉を放って炎を自在に操るウルガモスに一蹴され、苦戦しているようだ。指示なしであれほどの力を……これもコイツの能力なのか!?
「お前、何者だ…!」
「…エスプリ」
「エスプリ…?」
問いかけると意外と答えてくれた謎の人物…エスプリはいきなり返事されて困惑する俺の隙を突いて掴みかかり、無表情のまま俺の懐に手を伸ばしてきた。炎の壁で、後退できない。
「くそっ、放せ!?」
「チヲハウハネを渡せ」
地を這う……サニアがそう呼んでいたウカのことか…?こいつの目的はウカか。
「渡してたまるか!」
抵抗して暴れ、向う脛を蹴りつけるとさすがに効いたのか怯んでよろよろと後退するエスプリに、ヘルメットを外して両手で振りかざし、勢いよく殴りつける。
「ぐっ……ウルガモス!」
両腕を交差して防御したエスプリだったが不利と見たのかウルガモスを呼び寄せ、何の指示もなく俺を翼で攻撃させてきた。咄嗟に前転して避けるが、何も言わずに指示できる何かがあるみたいだな。
「シング!りんしょう!」
「ホシガリス!たくわえて、はきだす!」
「ウルガモス。ねっぷう」
アイアールとペパーが攻撃するが、ウルガモスが翼を羽ばたかしたことで発生した熱風で防がれてしまう。二人ともへばってきてる。炎の壁の熱で体力が失われているのだろう。シングとホシガリスもあっさり一蹴されてしまう。対してエスプリは俺の顔で涼しそうな無表情を貫いている。何時までも燃え続ける炎の壁、厄介だ。
「頼む、レイン!」
アイアールのリプルも倒されてしまったので、最後の頼みの綱であるレインを繰り出す。レインは炎の壁を見て俺の肩の上で小さな前足で両目を覆ってしまう。可愛いなお前は!でも今はそれどころじゃないんだ!
「お前だけが頼りなんだ、頼む!」
レインを抱え、ウルガモスの放つ炎上する鱗粉を避けながら必死に呼びかける。
「チヲハウハネ、渡せ」
「いい加減、俺の姿やめろお前!?」
再び突進して来て襲ってくる俺の姿をしたエスプリにさらに怯えてしまうレイン。ああ怖いよな、俺も不気味過ぎて怖い。レインを抱えながらもう片方の拳で殴りかかるも、手の甲で払いのけられ腰のボールに手が伸ばされる。そんな時だった。泡の光線がエスプリに直撃して吹き飛ばしたのは。
「今のは…お前か、レイン!」
視線を向けると、仲間に手を出されようとして怒ったのかツリ目のレインがいた。そのまま俺の頭の上に飛び乗り、バブルこうせんで周りの火を消火してくれた。
「ぜーっはーっ!?やっと息できた!ありがとうラウラ、レイン!」
「炎の壁がなくなればこっちのもんだぜ!」
炎の壁が消えて目いっぱい呼吸するしながらツムヅムを繰り出すアイアールと、スコヴィランを繰り出すペパー。対してエスプリは、俺の姿にノイズを走らせて元のヘルメットとボディスーツの姿に戻っていた。
「スニーキング機能に不具合、電算リソースをボールジャック機能に回して強化。チヲハウハネとツバサノオウの回収ミッションを遂行する。爆ぜろ。ウルガモス、ほのおのまい」
再び炎の壁を展開しようとしたのか炎上する鱗粉を飛ばしてくるウルガモス。強化と言ってるだけあってツムヅムとスコヴィランをあっさり吹き飛ばすぐらいにさっきより勢いが強い。だがエスプリの無機質な声からはどことなく焦りが見て取れた。
「レイン!テラスタルだ!バブルこうせん!」
対して俺はテラスタルでレインをみずテラスタルにして対抗。噴水の様な結晶を頭部に身に着けたレインの威力の上がったバブルこうせんが鱗粉と激突、水蒸気爆発してなにも見えなくなる。うん、風が煙を噴き飛ばして…!?
「これは…エアカッター?」
「ラウラ!レインが!」
「進化したぞ!アメモースだ!」
二人の声に見上げると、そこには俺の頭上で浮かぶアメモースに進化したレインがいた。テラスタイプはそのままみずタイプの様で、エアカッターで煙を噴き飛ばしつつ威力の上がったバブルこうせんをウルガモスに炸裂させる。
「ちょうのまい」
「させるな、ねばねばネット!」
ちょうのまいでバブルこうせんを防ぎながら能力を上げようとしたので、ねばねばネットで妨害。身動きの取れなくなったウルガモスは鱗粉で糸を燃やして脱出しようと試みるが、遅い。
「バブルこうせんだ!」
バブルこうせんが隙だらけのウルガモスに炸裂。防御もできずに直撃したウルガモスは倒れ、エスプリはボールに戻しながら後退する。
「逃がさないぞ!」
「イダイナキバを解放しなさい!」
「話も聞かせてもらうぞ!」
「作戦失敗。離脱する」
するとエスプリは拳を地面に叩きつけて砂ほこりを起こして俺達の視界を塞ぎ、次の瞬間砂煙を飛び出して跳躍。断崖絶壁を乗り越えて上まで逃げしまった。
「くそっ、逃げられたか……」
「なんて身体能力…」
「反則ちゃんだぜ!」
悔しがるアイアールとペパーを余所に、手持ちを確認する。レクス、ダーマ、レイン、ジャック、ケプリべ、そしてウカ。全員無事か、よかった。胸を撫で下ろす。…あのボールジャックとか言ってたやつ、文字通りなら恐らく……嫌な能力だ。もう二度と会わないといいが、そうは問屋がおろさなそうだな…。
というわけでエスプリでした。マチエールでもないし、クセロシキが一枚噛んでるわけでもなく、破棄しそこねたデータを利用した新しいエスプリとなります。その中身は…?明かされたフラダリの「左腕」もちろんオリジナル設定です。そして青装束の実態や如何に。
リアルファイト、エスプリVSラウラ。咄嗟にヘルメットを鈍器にしたり向う脛を蹴ったり結構乱暴なラウラでした。
レインも進化、アメモースに。後一匹いればラウラのチームは完成かな?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。