今回は南3番エリアでのできごと。楽しんでいただけると幸いです。
あれから数日。授業を受けるために滞在していた俺とアイアールは、旅立つ前にテーブルシティを巡ることにした。今回は以前一人で散策した西側ではなく東側を巡っている。デリバードショップにでも寄ってどうぐを手持ちに持たせるのもありだな。しかしこのテーブルシティ、本当に広いな。
「ところでラウラ、それ何時までつけてるの?」
「いや、これのおかげで助かったからなんか外せなくて…」
「この街に危険はないと思うよ?」
エクスレッグヘルメットを被っている俺にそうアイアールが苦言を呈してきたがしょうがないだろう。この街でスター団に襲われたこともあるんだから。そんな話をしながら階段を上り、高台までやってくる俺達。いい風が吹いている。
「ここから一望できるみたいだね」
「いい景色だな。コライドンで滑空してみるか?」
「多分大騒ぎになるからやめとこう?」
いやー、珍しいポケモン一匹ぐらいいてもいいと思うんだよな。一匹どころか四匹ぐらいいても普通な気がする。そんな奴知らんけど。
「そろそろお昼だね。お腹すいたなあ…」
「カレー屋ないのか?」
「すぐそれだね……うーん、カレー屋はないけど喫茶店がちらほらあるかな?」
「いや待て。この匂い……」
アイアールが高台の手すりから身を乗り出してテーブルシティを眺めてそう言ってくるが、俺は風に流れてきたその匂いに気付いて歩き出すと、アイアールもついて来た。…なんだろう、懐かしい香りだ。
「…ここだ」
「橋の下…こんなところにお店があったんだ。カロスで見たことある気がする」
橋の下に隠れる様に建てられた、全体的に真っ赤な配色に、差し色として鮮やかな青が使われている。なんかお洒落だ。隠れ家的喫茶店か?「オレンジアカデミーの学生さん値引き」「本場ガラルカレーあります」「カロス風スイーツあります」など書いてある小さな黒板に書かれてある。お洒落だ。店名は「グロリアカフェ」……なんだろう、デジャヴ。
「お、本場ガラルカレーがあるってさ」
「カロスのスイーツもあるんだ…いいね」
それぞれ刺さる要素があるこの店にお昼を決め、中に入ると。ローな姿のパンクポケモン、ストリンダ―がお辞儀して出迎えてくれた。店の奥では繁盛しているのか接客している青いウェイトレス姿で高貴そうな髪型の銀髪の少女があくせくお盆を両手に持って働いていた。
「いらっしゃいませですわ!私が店長のグロリアですの!注文はちょっとお待ちになって!」
「お、おう…」
「ああもう、店長なんて引き受けなけりゃよかったですわ~!」
なんだろう、凄い違和感を感じた。お前そうじゃないだろ感が凄いする。首を傾げながらもアイアールと共にテーブル席につくと、ウェイターらしき男性がやってきた。オレンジアカデミーの学生っぽい?バイトかな。
「お待たせしました。注文をいただきます」
「あ、じゃあ本場ガラルカレーライスとミアレガレット、コーヒーを二つずつください」
「かしこまりました」
アイアールが注文するのを横目に、グロリアと名乗った少女から目が離れない。…あの顔どこかで見た気がするんだけどなあ。しかし忙しそうだな。意外と繁盛してるらしい。立地がアレなのに。
「お待たせしましたわ!わたくしが作った自信作!本場ガラルカレーライス二つですわ!」
「あんたが作ったのか?」
「はい~!わたくし、お嬢様ですがカレーに目が無くて!自分で作るのが趣味なんですわ~!…その趣味のせいでこうしてこの店を任されたのですけど」
「それっぽいと思ってたけど本当にお嬢様なんだ…」
「もちろんですわ!ほらほら、お召しになって!」
「すみませーん」
「あっ、ただいま!」
他の客に呼ばれてバタバタと去っていくグロリア。…他人の空似か。そうだよな。ちなみにカレーは滅茶苦茶美味かった。気に行った、また来よう。
「さあ行こうか」
「うん、コライドン!」
腹ごしらえを終えた俺達はテーブルシティの東門から出発。コライドンに乗って南3番エリアを駆け抜ける。草原だった反対側の南2番エリアと異なり、山岳地帯が広がっているそこはちょっとだけ新鮮だ。目指すは花と芸術の町、ボウルタウン。その道中で岩壁のヌシのところに行く予定だ。
「結構色んなポケモンがいるね」
「…記憶喪失の俺がネモに拾われた場所でもあるな」
「そうなんだ!?…じゃあここにラウラの記憶の手掛かりが…?」
「レクスと出会ったのもここだな」
《ロトロトロト…》
そんな話をしながら突き進んでいると、スマホロトムに着信が。ペパーだ。
《「ようラウラ!アイアールもいるのか?オージャの湖では災難だったみたいだな……また今度挑もうぜ!ところで今どこだ?」》
「南3番エリアをテーブルシティから北上中だ」
《「南3番エリア?ってことは岩壁のヌシだな!お前がいる岩場のどっかに岩壁のヌシがいるらしい。その辺り探してみたんだが全然見つかんねえんだよ!まさか岩壁の名の通り高い壁にひっついている…なーんてことはないだろうし!」》
「多分それだね」
「それだな」
ペパーの想像大体外れてるから察しがついてきた俺達は頷き合う。
《「そんなに深い所にはいねえはずだ!だから探しすぎて崖から落っこちんなよ!俺とマフィティフのために命まで懸ける必要はねえんだからな!それじゃあな!」》
そう言って電話は切れた。…命懸ける気はないが俺の記憶の為でもあるってのを忘れてないかアイツ?まあいいや。
「ここらへんの壁にいるってことだよな」
「迷探偵ペパーの推理が誤っていればね」
キョロキョロと辺りを見渡していると、崖の上に立つ人物が目に見えた。あれは……サニアか?
「おーい、サニア!」
「ラウラ。それにアイアール。も」
俺達を確認すると宙返りして飛び降り、スタッと三点着地するサニア。お前相変わらず人間離れしてるな、エスプリみたいだ。
「なにしてたの?サニア」
「てもちのふるさと。たからものがぶじかようすみに」
「お前の手持ちの
「うん。ラウラたちは。なにしに?」
「岩壁のヌシを倒して秘伝スパイスを手に入れに……どうした?」
事情を話していると、暗い顔になるサニアに首を傾げる俺達。どうしたんだ?
「ならラウラたち。てき。たおす」
「なんでだ!?」
「おたからまもる。ガケガニ」
そう言ってサニアが繰り出してきたのは、巨大なポケモン。ここに来るまでちょくちょく壁に張り付いているのを見かけたまちぶせポケモン、ガケガニのヌシだった。
「じゃあ宝って…」
「ひでんスパイス。わたしたちのせいちのしょくぶつ。ガケガニのたから。わたさない…!」
▽いわつかいの サニアと ヌシの ガケガニが 勝負を しかけてきた!
グロリアカフェ。思いっきりフラダリカフェ2号店です。グロリアにデジャヴを感じるラウラ。なんでなんじゃろね?ちなみにヘルメットを被ってたせいでグロリアはラウラに気付いてません。さすがに食べる時は外してたけど忙しくて見れなかった模様。ニアミス。
サニアの六匹目、ヌシガケガニ。いわタイプ使いとして手持ちにぜひとも入れたかった一匹。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。