今回はあまスパイスの一件。楽しんでいただけると幸いです。
「…わたしとガケガニのまけ。ひでんスパイス。もっていけ」
負けず嫌いなのか悔しげな視線を向けてくるサニアに案内してもらい、入り口を塞いでいた岩をサニアが手持ちのバンギラスでずらしてくれた。…いいポケモン持ってるなあ、いつかフルバトルすることになったら間違いなく強敵だろう。
「うっし!ラウラ!アイアール!お疲れちゃんだぜ!まさかチャンピオンクラスのサニアと戦うことになるとは思わなかったけどよ!」
「私達もびっくりしたよ…」
「…ごめんなさい。わるいやつに。してやられて」
「もしかしてブルーフレア団か」
「たぶん。クラベルによるとそう」
…あいつらもめんどうなことをしやがって。サニアも関わっていたとは聞いてたがなにがあったんだろう。
「よし!サニアも一緒に食ってけよ!美味しいもの食えば嫌なこと忘れるって!」
「いいの?」
「もちろん!ね、ラウラ!」
「そりゃあな」
四人で洞窟に入ると、淡い輝きで洞窟が照らされていた。ヘルメットを外してきょろきょろと見渡していると、サニアが歩いて行って奥まで向かい、ついていくとそこにあった。
「これが。ガケガニ。まもっていた。ひでんスパイス」
「おっ!秘伝のアイツ、見っけちゃんだぜ!」
「桃色に光ってる…」
「どんな植物だ」
アイアールの言う通りピンク色に輝いている植物を採取するペパー。そのままスカーレットブックを取り出して確認する。
「えーと?なになに?本によると……これは「あまスパイス」!胃を健康にして食べ物を消化しやすくしてくれる!
「記憶喪失は治りそう?」
「五つ揃ったらそれっぽい効果は出るっぽいけどそもそも前例がないっぽいな!とにかくコイツでマフィティフをもっと元気にしてやれる!」
「だな。俺の記憶云々は今はどうでもいい。飯にしよう」
「おうよ!腕によりをかけてやるぜ!」
ささっと調理器具セットを用意して見事な手際で料理していくペパー。サンドウィッチにカレーが瞬く間にできあがっていく。
「お待ちどうさん!毎度おなじみペパー風サンドウィッチとまろやか甘口カレーライスだ!おまけのヌシバッジもついてくる!ポケモンリーグには使えないけどありがたく受け取れよな!人数分あるぜ!サニアのぶんも、ほら!」
「あ、ありがとう…?」
よくサニアの分まで用意してたな。…俺達の他にも頼れるやつがいたら頼るつもりだったのかな。しかし美味そうだ。俺達は洞窟も広いので前回より増えた手持ち全員を出す。レクス、ダーマ、レイン、ジャック、ケプリべ、ぼむん、ウカ。シング、ドーちゃん、リプル、ツムヅム、ヒナ、ハルクララ、コライドン。サニアとペパーも六匹全部出した。カジリガメ、ジオヅム、トロッゴン、たそがれのすがたのルガルガン、バンギラス、洞窟の一角を埋める程大きいガケガニ。マフィティフ、ヨクバリス、ジオヅム、スコヴィラン、パルシェン。そうそうたる面子だ。というかジオヅムが三人とも被ってるのな。仲良くしているようで何よりだが。
「うん、美味しい!」
「ギャアンス」
「辛くないカレーもいいな!」
「うん。おいしい」
「マフィティフもほら」
これは悪くない。そんな感想を抱きながら、サンドウィッチを食べたコライドンがなんかの能力を取り戻したり、ペパーがマフィティフに少しずつ食べさせて鳴き声が出る程回復したりといった光景を眺めてスプーンを口に運ばせていると、頭痛と共にスプーンを取りこぼす。
「ぐうっ…」
「ラウラ!?」
「どうした?」
「もしかして不味かったのか!?」
「ち、がう…これは……」
脳裏に知らない映像がフラッシュバックする。以前出会った四天王のムツキより少し幼く服装も違うムツキとの、どこかの森での知らない出会いと手痛い敗北。知らないはずだが懐かしく感じるゴスロリの少女との出会い。顔が朧気だけどアイアールによく似た少女との出会いと初バトルで勝ったもののジメレオンにしてやられたこと。そして……なにかに引きずり込まれたこと。そこで現実に引き戻される。
「大丈夫!?ラウラ!」
「…ムツキは知り合いだった…?だけど俺と出会った時そんなそぶりは……」
アイアールとサニアとペパー、ポケモンたちが心配そうに眺めていたのに気付き、頭を振るう。今のは俺の記憶か…?
「…不気味な森、キノコが輝いている…あれはどこだ?」
「それってもしかしてルミナスメイズの森か?」
思い出そうとする俺の呟きに反応したのはペパーだった。思わず両肩を掴んで揺らす。
「ルミナスメイズ!それだ!それはどこだ!?ペパー!」
「お、落ち着けって…ガラル地方の森だよ!そこがどうかしたのか?」
「ガラル……そう言えばネモも俺の着ていたのはガラルのユニフォームだって言ってたっけ…」
…ってことは俺はガラルから……?あとでスマホロトムで検索してみるか。
「とりあえず、お前たちのおかげでマフィティフの具合、順調に良くなってる!ラウラもなんか記憶がちょっと戻ったっぽい!お前らと会ってからいいことばっかりだ!」
「本当にマフィティフが元気になってよかったよ」
「…俺こそ、ちょっと思い出せた。ありがとな」
「秘伝スパイスはあと2つ!偽龍のヌシの攻略も含めて、もう少し付き合ってくれよ!」
サムズアップして笑顔を浮かべるペパーに頷くと、隅っこで残ったサンドウィッチにカレーをかけて食べていたサニアが笑う。
「…いいね。たからさがし、まんきつしてる。みつけられるといいね」
どこか達観しているサニアに、思い至る。チャンピオンクラスってことはネモと同じで以前の宝探しにも参加したってことだ。でもまた参加している、ってことはネモと同じで宝を見つけることができなかった…のか?
「…サニア、お前の宝物は…?」
「ぜんぜんみつからない。だけど。かならずみつけてみせる。だから。きみたちもがんばって」
そう言ってサニアはボールに手持ちを戻し、あまスパイスを一房採取すると洞窟から去って行った。
「じゃ、俺も行くからな!また次のヌシのところで会おうぜ!」
ペパーもそう言って去って行き、俺とアイアールも外に出るとお馴染みアイアールのスマホロトムの着信音が。どうせまたあの博士だろうな。
《ロトロトロトロト……「ハロー、アイアール。ラウラ。こちらオーリム。どうやらコライドンがまた一つ本来の力を取り戻したようだね。今回は「ダッシュ」。ライド状態で加速することが可能になったようだ」》
「博士、聞きたいことがある。…俺の記憶について何か知ってるか?」
《「……知っているが今は言えない。引き続きコライドンをよろしく頼んだよ」》
「おい、待て!?」
言うだけ言って切っていきやがった。やっぱりあの博士が一枚噛んでるのか。…ってことはこの南3番エリアじゃなくて、隣接していて博士が住んでるっていうエリアゼロが俺の記憶喪失と関係ありそうだな。チャンピオンクラスになれれば入る許可を取る事ができるんだろうか。頑張ろう。
ついに記憶を一部取り戻したラウラ。仲良しの面子の事と、何かに引きずり込まれたことを思い出しました。エリアゼロがやはり関係ある模様…?ムツキの反応についてはまた後々。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。