今回はボウルタウンへ。楽しんでいただけると幸いです。
「つ、ついたぁあああ」
「調子に乗ってダッシュばかりするから何度も落ちたんだぞ」
なんとか南3番エリアを抜けてようやく辿り着いた花と芸術の町ボウルタウン。アイアールがコライドンを新しい能力のダッシュで爆走させて崖下に落ちまくり、そのたびにぼむんに乗せてもらって上に戻る、を何度か繰り返す羽目になった。学習はしてくれ…。
「なんか変なのがいっぱいあるね」
「あれは芸術品って奴だ。ジムリーダーが作ったらしい」
「へー」
「興味なさそうだな」
「どれぐらい強いかの方が気になるかな」
「このバトルジャンキーめ」
「ラウラに言われたくないかなあ」
失礼な。俺はあいつみたいにバトルジャンキーじゃないぞ。むしろいさめて……あいつって誰の事だ?あのジメレオンのトレーナーか…?
「どうしたの考え込んで」
「いや…なんでもない」
少し思い出したとはいえ、俺が何者だったのかすらまだまだ思い出せない。手がかりは四天王ムツキ、名前が分からないゴスロリの少女、顔も声も思い出せないジメレオンのトレーナーの三人。俺と関係があったのは間違いない。どうにか会って話がしたいところだが……ムツキが俺になんも反応しなかったのが解せぬ。今より若いようだったから、彼女の若い頃に負けたトレーナーが俺だったのかもしれない。それだけの関係ならまあ忘れていてもおかしくない、か…?
「とりあえずジムに行くか。観光するのは後でもいい」
「賛成」
二人で揃ってジムに向かう。景観に合ってない建物はやはり目立つからすぐ見つかった。中に入ると、見覚えのある人物と見覚えのない人物がいた。
「「ハッサク先生?」」
「おや、アイアールくんにラウラくんじゃありませんか。二人とも、よき調子でジムをめぐっているそうですね。ブルーフレア団という連中については聞きました。小生も四天王としてしっかり警備させていただきますので」
オレンジアカデミーの美術の先生にして四天王の一人、ハッサク先生。この人の授業は結構好きだ。すると、後ろを向いてスマホロトムを弄っていたフォーマルな格好の人物がスマホロトムをしまいながら振り返る。とんでもないイケメンがそこにいた。
「なんや?もしかして噂のコンビか…?へー!アイアールにラウラ、やったっけ。強さエグいらしいやん?」
珍しい、コガネ弁だ。ジョウト地方のコガネシティ出身か?長身かつ細身でスタイルがよく、ツリ眉タレ目の端正な顔立ちが輝いている。ポニーテールにしたツーブロックの緑髪がゆらゆらと揺れており、ポケットに手を突っ込んでいる姿が様になっていた。アイアールも同じことを思ったのか共に言葉に詰まる。めちゃくちゃイケメンだな。
「「そ、それほどでも…」」
「よう言うわ!二人とも謙虚やなぁ」
「彼女の名はチリといいます」
「まいど!チリちゃんやで。美人さんやけど怖がらんといてな」
ハッサクさんに紹介されて笑顔で右手を振って応えるチリさん。彼女……女か。なんか納得した。なんか知り合いに似た様な男装の麗人がいた気がする。じめんタイプ使いのやべー奴だった気もする。
「少しふざけた女性ですが小生と同じく四天王なのですよ」
「いや、ふざけてへんけど…?それにしても……ふぅん。あんたがラウラやな?自分、パッと見た感じむしポケモン使いか?おかしいやんな、見た感じ四天王……いやチャンピオン並みの実力がある様に見えるんやけど。そちらの相方…アイアールも含めてなかなかおもろそうやんな?」
そう俺達の事を値踏みする様に評価するチリさん。……俺が四天王クラスはさすがに言いすぎだと思う。毎回と言っていいほど苦戦しているんだぞ。
「当たり前ですよチリ。我らがアカデミーの優秀な生徒でありますからね」
「なはは。そらそーや。でもな、これでジム四つ目みたいやけどジム巡るんは半分越えてからがキッツイねん」
「たしかに。並みのトレーナーは大半がこの辺りで脱落します」
「脱落…」
「具体的に言うと挫折ですね。生半可な才能では超えることは難しいのです」
…挫折。主にネモのせいな気がするが気のせいだな、うん。
「…でも、アイアール。ラウラ。自分ら違うんやろ?チャンピオンテストで待っとるさかい。残りのジムもせいぜいきばりやぁ。…邪魔する
「武運を祈っておりますよ」
「あ、ちょっといいですか?」
去ろうとする二人を慌てて呼び止める。四天王に、それも二人も会えたのは幸運だろう。
「どうしたんや?」
「美術の質問ならまた授業で…」
「いや、そうじゃなくて。…四天王の一人、ムツキが俺の事をなんか言ってませんでした?」
「ムツキ?……面白いトレーナーがいるってラウラの事を話しとったなあ」
「ストライクを保護してもらってよかったとも言ってましたか」
「あ、ハッサクさんそいつは…」
「おや。口止めされてましたね。忘れてください。これぐらいですが、参考になりましたか?」
「…はい。ありがとうございました」
…やっぱりムツキは俺の事は知らない、のか……単にひどい敗北したから思い出したってだけかなあ。
「では」
「危ないことに首突っ込むのはほどほどにするんやでー」
ばれてる。チリさんに俺がブルーフレア団に関わろうとしてるの思いっきりばれてるなこれ。そのまま視点の二人を見送り、アイアールと顔を見合わせる。
「ムツキさんがなにかあったの?」
「いや、多分関係ない。さっさとジムテスト受けるぞ」
アイアールの手を握り、受付に向かい手続きを行う。ジムテストは「キマワリ集め」。ボウルタウンにはキマワリを集めてもてなす風習があるらしく、全30匹を町中に放すので、10匹ずつ集めて「キマワリ広場」に連れて行けばクリアらしい。ジムの右手にあるキマワリのオブジェが目立つ広場に向かい、説明を聞きながらアイアールに提案する。
「アイアールはコライドンを使え。俺もぼむんを使う。早く集めた方がジムリーダーと先に戦うぞ」
「上等!負けないよ!」
ぼむんに乗りこなすのは多分今後必要事項だと思う。乗りこなす練習にちょうどいい。やってやる。
「見つけた!待て待て~!」
「…もう少しスマートに見つけられんのかあいつは」
ぼむんに乗って空中に浮遊し、辺りを見渡して見つけたキマワリを回収するのを繰り返していると爆走するキマワリと、それを追いかけるアイアールが見えたので先回りして回収する。こういうのは行く先を見極めないと何時まで経っても追い付かないからな。
「あー!私のキマワリ!」
「相手の裏をかくのも大事だぞ。これで10匹。俺の勝ちだな」
「うう…負けた!」
見ればアイアールも9匹。危なかったな。そんなこんなで俺はジムリーダーのネイチャーアーティスト・コルサと戦える権利を得たのだった。初心者向けらしいがジムリーダーは相手の実力(バッジの数)に合わせて手持ちを調整するらしいし、相性がいい相手とはいえ油断しないで行こう。
噂のコンビになってるラウラとアイアール。チリちゃんからの見立てによれば四天王クラスとまで言われてますが、これは前作二部の当初、実はジムリーダーじゃなくてガラルの四天王にしようと考えていた名残です。そちらはでんき・ひこう・むし・じめんでした。
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