今回はVSナンジャモ決着。楽しんでいただけると幸いです。
それは、コルサとのジム戦後のこと。アイアールが戦っている間、アイアールの勝利を確信していた俺は試合を見ることなく、コルサ戦の反省会をしていた。特に、さいきのいのりを使うことなくやられてしまったケプリベだ。
「ケプリベ、お前の役目は貴重な中距離アタッカーってことと、味方を復活させるヒーラーだ。だけどさいきのいのりは隙がデカいし思惑を見抜かれて妨害されてしまう。わかるな?」
俺がそう尋ねると体ごと動かして頷くケプリベ。こいつのは結構耐久力はあるんだが、常に飛んでいるため踏ん張ったりができないので、衝撃を地面に流すなどができずもろに喰らってしまうのが難点だ。
「なので、相手に気付かれず指示できる合図を考えた。俺の記憶の片隅にあったやつだが……それを覚えてくれ」
脳裏に蘇ったそれは、とんでもなく強いハガネールに、俺とムツキを含めた三人で立ち向かう光景だった。
そして今。対峙するはケプリベとハラバリー、上を見て観察している様子のナンジャモと、腕を組んで踏ん反り返る俺。その周り、バトルフィールドの円周を取り囲むのは、ケプリベのエスパーエネルギーで下の海をじんつうりきで操り形成した、八つの蜘蛛脚。
「やられる前に落とすよ!ハラバリー、みずのはどう!」
「叩き潰せ、ケプリベ」
俺の指示と共に、巨大な海でできた蜘蛛脚八本が次々と振り下ろされ、みずのはどうを掻き消しながらハラバリーに近づいて行く。慌ててボヨンボヨンと跳躍して宙返りで避けていくハラバリー。避け方までエンターテイナーかよ。
「ハラバリー、そんなの破壊しちゃえ!かみなり!」
「無駄だ」
放たれたかみなりは海の蜘蛛脚に直撃するも、表面のエスパーのエネルギーが爆ぜただけですぐ修復され、そのままスレスレに激突し、薙ぎ払うようにハラバリーを蹴り飛ばし、その先にあった蜘蛛脚でまた蹴り飛ばしていく。
「リフレクターで受け止めて!」
さらなる追撃を、背中で滑りながらお腹側にリフレクターを張ることで受け止めて行くハラバリー。しかしボコボコに叩きのめされて身動きが取れなくなっていた。
〈一方的すぎぃ!〉
〈二タテしたハラバリーが遊ばれてる…〉
〈こわっ、蟲こわっ!〉
〈ところであのケプリベと呼ばれてるポケモン知らんのだけど〉
〈これナンジャモの切札でもきつそう〉
〈女王蜂のしもべ:ベラカスと言うポケモンだね。シガロコってポケモンを1000歩連れ歩くことで進化する蟲ポケモンだ〉
〈1000歩は草〉
〈そりゃ知らんわけだ、愛が無いとできない〉
〈そもそも蟲を捕まえるやつが少ない定期〉
〈こんなに強いなら捕まえてみようかな…〉
「心配しないで皆の者!ここから逆転するのが一流のインフルエンサーなのだ!衝撃を~でんきにかえる!フルパワーでかみなり!」
「素早く!むしのさざめきで吹っ飛ばせ!」
とくせいでじゅうでんしたハラバリーが何とか立ち上がり、バチバチ光る雷電を放とうとしたところに、横から衝撃波を叩き込んで吹き飛ばす。
「そんなっ」
「力強く!じんつうりき!」
かみなりを撃とうと溜めていたためもろに受けたハラバリーはボヨンボヨンと転がり、それを追いかけた海の蜘蛛脚がハラバリーを押し潰す。そしてハラバリーを押し潰した海の蜘蛛脚一本はドパンと爆ぜて、津波としてさらなる衝撃を叩き込む。流れてきた海水が俺やナンジャモの足元まで濡らした。
「これでかみなりは迂闊に使えないな、ナンジャモ!俺とお前まで感電していいなら別だがな?」
「体を張ってまで妨害するなんてやるネ!ボクも痺れたくないからかみなりは使えない……だけど、そもそも完敗だよこれは」
そう袖を向けた先では、ハラバリーが目を回して倒れていた。「トホホー」と肩を落としながらボールにハラバリーを戻すナンジャモはそのまま涙目でカメラに目を向ける。
「ゲゲッ!もう最後の一匹!?ちょっぴり、ううん、すっごーくピンチかも!皆の者!ボクへの応援、してしてー!」
〈ナンジャモー〉
〈がんばれー!〉
〈負けるなー!〉
〈ぶっちゃけ勝てる気しないけど頑張れー!〉
〈いけいけー!〉
「…余裕だな?」
「なんのことかナ?いっけー、ボクの切札!」
そう言って繰り出されたのはムウマージ。またエキスパートタイプじゃないが、まあそういうことなんだろう。テラスタルオーブを取り出し袖の上で構えたナンジャモはカメラ目線を崩すことなくウィンクすると両手で放り投げる。
「出でよ、ひらめき豆電球-!ナンジャモの底力、見せちゃるぞ!」
そしてムウマージは結晶化、豆電球の様な結晶を頭に乗せた姿になる。たしかムウマージのとくせいはふゆう。…なるほどね、でんきタイプになることで実質弱点が存在しないポケモンになるのか。こりゃ皆の者からの信頼も厚いのも頷ける。
「いいね、相手にとって不足無し!最高だ!」
タタタッタン。そうリズムを刻みながらふらふらと体を揺らして踊り、拍手をして獰猛な笑みを演じる。同時にケプリベも光り輝き、再生させた蜘蛛脚八本を動かして臨戦態勢を取る。…さすがだ。
〈かっけえなラウラ〉
〈一緒に踊ろうぜ!とか言いそうな動き〉
〈あれ?〉
〈ラウラはテラスタルしないのか?しなくていいってこと?〉
〈およ?〉
〈モニターの、あれ?バグ?〉
〈どしたん〉
〈ラウラもナンジャモも気付いてない?〉
「いくぞっ!電撃注意報!ビリっときたらごめーんね!チャージビーム!」
「防げケプリベ!」
放たれたチャージビームに、海の蜘蛛脚を動かして間に下ろすことで盾として使う。できるだけ削りたい。
「チャージビームでとくこうアゲ上げ!マジカルフレイム!」
「っ!?」
すると回転する火球が海の蜘蛛脚を蒸発させ、崩壊。ケプリベは残りの蜘蛛脚をムウマージに殺到させる。
「マジカルシャインで防いじゃえ!」
しかし片っ端からマジカルシャインで弾かれ、逸れていく中をふよふよと近づいてくるムウマージ。
「力強く!じんつうりき!」
「チャージビーム!」
それに対して海の蜘蛛脚を束ねて超巨大な水の塊を形成、叩き込むケプリベだがしかし。電気が迸り、はじけ飛ぶ。その先には紫色のエネルギーを眼前に溜めて行くムウマージ。
「シャドーボール!」
効果は抜群だ。崩れ落ちるケプリベ。…チャージビームでとくこうを上げに上げて質量差を火力で覆しやがった。
「…毎回上がるってどんな確率だ」
「ボクのムウマージはテラスタル特化型。過剰エネルギーをチャージビームでとくこうに変えることができるのダ!」
〈あれ〉
〈やっぱり〉
〈ナンジャモ、後ろー!〉
〈つまりそういうこと?〉
〈どういうことだってばよ〉
「え、どしたの皆の者。ボクの勝ち、だ、よ…?」
勝ち誇るナンジャモだったが、流れるコメントを見て不安になってモニターの、俺達の手持ち状況が表示されている画面に視線を向けて青ざめて行き、俺に視線を戻すと既に繰り出しているジャックがポーズを決めていて。
「何ごとナンジャ!?ちゃ、チャージビーム!」
「テラスタル!くさわけだ!」
くさタイプにテラスタルして、チャージビームを真正面から受け止めながら突撃。体当たりを決めるジャック。体勢が崩れたムウマージに、岩斧を振りかぶる。
「がんせきアックス!」
「キミのきらめき1000万ボルト~!?」
豆電球の様な結晶を叩き斬り、ムウマージはテラスタルが解けて崩れ落ちた。コイル型の髪飾りを頭の上で浮かして回転させ、呆けるナンジャモ。やったことは簡単だ。ハイダイ戦でも使った、ケプリベのさいきのいのりで復活したジャックの騙し討ち。だがあの時とは決定的に違うことがある。
「なんで、道具は禁止だよね?じゃあ技?…パーモットが使える、さいきのいのり…?でも、いつ、どうやって!?」
「さっき、「最高だ!」って言った時だ」
「あの時!?」
大人気インフルエンサー・ナンジャモとしてではなく、ジムリーダー・ナンジャモとしての素なのか驚くナンジャモ。
「事前にケプリベに、足音で指示するからと覚えさせた。さいきのいのりなんて馬鹿正直に指示したらばれるからな。……ネット配信されたからもう二度と通用しないだろうがな」
「力業早業だけじゃなくそんな技術まで……一体君は
「俺が知りたい」
〈うおおおおおお〉
〈どっかで見たことあるぞそれ〉
〈キリエじゃねえか!〉
〈ドリームーン:あ〉
〈ガラルの元最強のジムリーダーのそれ〉
〈どんだけ丁寧に教えたらそんなことができるんですかねえ…〉
〈コガネの面接官:思いついても普通実行するか?恐ろしいやっちゃなあ〉
〈卑怯じゃね〉
〈むしろそれを使っているジムリーダーがいたことが驚き〉
〈確かに不自然だったしなんならモニターにちゃんと残り数が表示されてたし気付かなかったナンジャモちゃんの完敗だこれ〉
〈前例がいるから警戒しない方が悪いってなる〉
〈普通警戒すらしないよそんなの〉
〈というかさいきのいのりまで使えるベラカスやべえ〉
〈どっちも強かったなハイレベルだった〉
「ナンジャモ、配信中だぞ」
怒涛のコメントが流れて行き、モコウの言葉で我に返ったナンジャモはくるりと一回転して笑顔を取り繕う。
「うぐぐぐ…納得いかないけど、勝利したのは挑戦者のラウラ氏でした~!悔しいけどボクの負け!皆の者、応援ありがとだぞー!応えられなくてごめんネ!……というわけで!バズりまくりのこのボク、ナンジャモに勝利したラウラ氏には~?ジムバッジをプレゼントしちゃいまーす!……今度はボクが勝つからネ!」
「お、おう…」
「わかればよし!皆の者~スクショタイムだぞ!脳内フォルダに焼き付けろ~!ほらほら、ラウラ氏もモコたんもポーズポーズ!」
「我、参上!……え、参加していいんですか?」
「途中で素に戻るのやめない?モコたん」
そのままナンジャモ、モコウと共にカメラに向けて両腕を上げるポーズをとることになった。めっちゃ恥ずかしいなこれ。
「ボクとラウラ氏、モコたんの熱いバトりにビリビリっとキタ人は~?チャンネル登録よっろしっくね~!あなたの目玉をエレキネット!エレキトリカル★ストリーマー!
そうナンジャモが締めくくり、今回の配信はお開きとなった。
「ああ、我慢できなくて来てしまいましたわ!」
ハッコウシティの片隅で、海の蜘蛛脚の騒ぎに紛れて訪れていた人物がいた。その銀髪をパーティアレンジに纏め、今はシックな紺色のワンピースと青いサングラスを身に纏い扇子で口元を隠した少女は、傍らに相棒を連れ、物陰からラウラがいるバトルフィールドを覗きこむ。
「こんなに早く会えるとは思っていませんでしたわ。わたくしを連れて行ってくださる?インテレオン」
かつての記憶を頼りに足音で指示すると言うとんでもで逆転したラウラ。キリエとかいうこれを全部の技でやる女。ラウラダンス。
ナンジャモに宿敵認定されたラウラに近づく不穏な影。さあ彼女の名前と特徴を思い出してみよう。
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