「このパルデアに迷い込んだ異邦人……ラウラを倒すため、ブルーフレア団に入りたい、と?」
それは今から2ヶ月ほど前の事。ブルーフレア団のアジトを突き留め、文字通り殴り込んだわたくしの前に現れたのは、フードで顔を隠した人物。冷気の様な殺気を感じながらも、わたくしは余裕の笑みを浮かべて胸に手を当てアピールする。
「バトルの腕は保証いたしますわ。わたくし、ラウラ以外には絶対に負けない自信がありますわ。この雪辱……勝利を果たさないと気がすみませんの!そのためなら何でもいたしますわ!」
「…もし、そのラウラを倒せてもブルーフレア団に反旗を翻すことなく我々の目的のために尽力すると誓えるのかしら」
「誓いますわ!なんなら誓約書でもなんでも持ってこいですわ!あ、でもひとつ条件が。今のラウラは手持ちを全て失った状態。わたくしもそんな状態で勝っても嬉しくもなんともねーですわ!」
「いいわ。なら実力を示しなさい」
パチンと指を鳴らす合図と共に、現れたのはウルガモス、ドンファン、プリン、レアコイル、ムウマ、モロバレル、ボーマンダによく似たワイルドな風貌のポケモンたちと、デリバード、ハリテヤマ、ドンファン、サザンドラ、ウルガモス、エルレイドまたはサーナイト、バンギラスによく似た機械じみた風貌のポケモンたち。その後ろでは緑とオレンジのバイザーを付けた女二人がにやにや笑ってる。
「この数のパラドックスポケモンに勝てる確率。1%」
「アハハ!お嬢様だか何だか知らないけど、後悔しながら死んじゃえば?」
ああ、なるほど。この三人はわたくしが並のトレーナーだと思っていますのね。不愉快ですわ。このわたくしが、ラウラ以外に負けると思われてるなんて……。
「ド!心外ですわ!」
繰り出されるはインテレオン、アーマーガア、ストリンダー(ローのすがた)、セキタンザン。パルデアでも目立たない様にと、相棒のインテレオン以外はパルデアでも生息しているポケモンのみを連れてきた。わたくしを守るように取り囲む四体の中心で、わたくしを見るボスに向けて優雅にスカートの裾をつまんでお辞儀する。
「見たところ野生ですわね?ちょうど残り二匹が欲しかったんですの。いただいてもよろしくて?」
その後、私は無事幹部としてブルーフレア団に迎え入れられたのだった。ええそうですの、待ちましたの。ラウラが倒すべき強さに至るまで……すっごくすっごく待ちましたのよわたくし。元々別の奴が営業していた喫茶店の店主になって思う存分カレーを作って振る舞うのも楽しかったですが。わたくしのことを覚えてないのは残念ですけど……思う存分戦えれば何でもいいですわ。
ナンジャモ戦の翌日。アイアールが戻ってくるまでモコウの家に泊めてもらい、モコたんモードのモコウと共にハッコウシティを観光するべく練り歩くこととなった。アイアールも実家で泊まったらしいし昼過ぎぐらいには着くかな?
「そういえばなんだが」
「どうしたモコ…たん」
「リアルでの配慮感謝するぞ。いやなに、お前と以前会ったことがあるか無いかの話だ」
「なにか思い出したのか!?」
露店カントークレープで買ったいちごホイップクレープを食べていたらそんなことを言ってきたモコウに詰め寄る。
「い、いや思い出したというか……一応ガラル地方にいた時のこともじっくり思い出してみたがそもそも屋敷から出たことすらなかったからお前がメイドとかじゃない限り会ったことはないと思うぞ」
「お前も記憶喪失だという可能性は?」
「ちゃんと親の顔も全部覚えてるぞ。…ラウラこそ、記憶喪失なんですか?」
「素が出てるぞ。ああ。パルデアに来る以前の事を俺は知らない。覚えていたのは名前と、蟲ポケモンへの愛だけだ。ガラルが関係ありそうってことは思い出したんだがな」
「だから我に聞いたのか……」
「いや、お前はちょっと違う。俺のおぼろげな記憶にお前の顔があったんだ。それとよく似た格好のな。ひょっとしたらってな」
「…んんー?」
すると首をかしげるモコウ。稲妻ツインテールをぴょこんぴょこんと跳ねさせ、頷くと口を開いた。
「そもそもこの髪型にしたのは今回の配信が初めてだし、この服だってパルデアで揃えた物だからガラルでこの格好になったことはないはずだぞ?」
「なんだって?」
じゃあ俺の記憶は何なんだよって話になる。妄想?いや記憶もないのに知らない顔が出てくるか…?すると、ポケモンセンターのある方から手を振りながら駆け寄ってくる少女が見えた。
「ラウラー!」
「ん?ああ、アイアール。早かったな。なんか久々だ」
そらとぶタクシーでポケモンセンターに降り立ってきたらしいアイアール。特に何事も無さそうでよかった。
「お前がアイアールか。我は……」
「モコたんですよね!ファンです!握手してください!」
「お、おお、我にファンか……私ただのナンジャモリスナーなんですけど……」
「こっちが素なのかな?」
「そうだぞ。演じてる方が俺は違和感ないが」
もじもじしながら握手に応じるモコウと満面の笑みで握手するアイアールに思わず笑ってしまう。
「とりあえずアイアールの分も買ってやるか。ナンジャモからのファイトマネーがあるんだ」
「いいねラウラ!太っ腹ー!」
「わたくしもお願いしてよろしいかしら」
「ああいいぞ……って、うん?」
あまりにもナチュラルに割り込んできた声に振り返る。そこには、傍らにのっぽなみずポケモンを連れている、銀髪をパーティアレンジに纏め、シックな紺色のワンピースを身に纏い扇子で口元を隠した青いV字サングラスの少女がいた。扇子には「celebrity」と書かれている。…なんか既視感があるし、お前はそうじゃないだろってツッコみたくなった。なんでだ?
「…青いサングラス。お前、ブルーフレア団か?」
「ご明察。わたくし、今はブルーフレア団の幹部をしていますの。名乗らなくてもよろしくて?」
「ブルーフレア団が何の様だ。ウカか?」
周りを見渡し、人が多いことを確認して迂闊に動けないことを察する。何をするか分からない以上、荒事に持ち込みたくない。アイアールにも目で合図を送り制する。
「ウカ?なんのことかわかりませんけどわたくしはラウラ!貴方にしか興味ありませんの!何せお嬢様ですので欲しいものは何でも手に入るのですわ!んん~セレブリティ!」
「何がセレブリティですか!ムカつく双子を思い出します!」
「落ち着け口調が崩れてるぞ。…俺の事を知っているのか?」
興奮して口調が戻って憤慨するモコウを宥めながら問いかけると、お嬢様は扇子を閉じてこちらに突きつけると、隣のみずポケモンが同じように指を指してきた。
「もちろん知ってますわ。わたくしの好敵手。もちろん、対処してくれますわよね?インテレオン、ねらいうち」
「危ない!?」
インテレオンと呼ばれたポケモンの指先からとんでもない勢いの水流が放たれ、咄嗟にモコウの手を引いて一緒に避け転倒する。そのままインテレオンは俺に視線を向けると指先を構え、水流が放たれる。不味い、体勢が……!
「ゲッコウガ。たたみがえし!」
瞬間、俺たちとインテレオンの間に立ちはだかったポケモン、ゲッコウガが手で触れた地面を捲り上げて水流を防ぐ。その隣に並び立ち睨み付けるアイアールに、お嬢様はインテレオンを侍らせ忌々しそうに舌打ちする。
「一緒に旅できているだけの女が邪魔しないでくださるかしら?」
「ラウラの何を知ってるのかは知らないけど。手出しはさせない」
なんか知らんけどバチバチ睨み合う両者。いやあの。俺を狙ってきたんじゃないのかこのお嬢様。
「ラウラはわたくしの獲物でしてよ!弱い女はその隣にふさわしくありませんわ!」
「ラウラは私の相棒なの!手を出すな!エセお嬢様!」
「いや、あのだな?」
「「ラウラは黙ってて!」」
「はいぃ…」
止めようとしたら二人に怒鳴られて思わず萎縮する。あの、俺、蚊帳の外…?モコウ、慰める様に肩を叩くな。泣くから。
グロリア視点だけどついに出てきたブルーフレア団のボス。パラドックスポケモンを物ともしない実力のグロリア。記憶喪失でもないのにラウラの事を本当に何も知らないモコウ。グロリア襲撃。そしてゲッコウガを繰り出すアイアール。イベントだらけでした。
・グロリア
ブルーフレア団の幹部。ラウラと因縁があるらしく、戦うためだけにブルーフレア団に入った自称お嬢様。パラドックスポケモンの群れを返り討ちにする実力。加入したのはラウラがパルデアに来てからなのでバラに新参者と呼ばれる。銀髪をパーティアレンジに纏めている。手持ちはインテレオン、アーマーガア、ストリンダー(ローのすがた)、セキタンザン。ラウラは既視感を抱いている他、そうじゃないだろという感情を抱くが…?アイアールの事が大嫌い。名前の由来はグロリオサ。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。