今回はラウラの謎に迫ります。楽しんでいただけると幸いです。
「…逃がしましたか。こわいかおとは渋い技を覚えてますね」
逃げて行ったブルーフレア団お嬢様に感心したようにぼやくムツキ。…あいつ俺の事を知ってそうだったからとっ捕まえて色々聞きたかったんだがなあ。アイアールに全部持ってかれた上に逃げられてしまった。しかしゲッコウガか、いいポケモンだな。鍛えられているのが一目で分かるし、アイアールへの忠義も感じる。そう観察していると、深呼吸したアイアールがこちらに振り向いて駆け寄ってきた。
「そうだ、ラウラ!大丈夫だった!?ごめんね勝手に戦って!ラウラなら大丈夫だと思ったんだけど、アイツと戦わせるのが何か嫌で……」
「お前のおかげで無事だ。別に気にしてない、助かった。俺もアイツは勝てる気がしなかったからな」
なんだろうな、一目見ただけで分かった。こいつは強い、と。一対一なら勝てるがフルバトルだと負ける、そう確信していた。なんでかは分からんが俺の忘れた記憶に答えがあるんだろうな。
「それよりそのゲッコウガどうしたんだ?親のポケモン?」
「ううん、正真正銘私の……最初の
「素人目でもすごく強かったな。異次元のバトルだった…」
「見たところ相当な
アイアールの説明に、モコウとムツキも感心する。わかる。するとムツキは俺に視線を向ける。
「たしか、ラウラ、でしたっけ。ブルーフレア団についてはオモダカさんから聞いています。付け狙われているんでしょうか?大変ですね。我々四天王やジムリーダー、パルデアポケモンリーグも巡回しているのですが……今回に限っては担当のナンジャモが配信してたようですね。あとで厳重注意しときましょう」
「しまった、配信見逃した!?あとでアーカイブを確認しないと!」
「モコ……たん、お前もぶれないな」
スマホロトムで現在配信中のナンジャモの動画を確認しながら溜め息をつくムツキと、涙目になるモコウ。なんだろう、この二人が揃うとなんか落ち着く。あのフラッシュバックした記憶のせいだろうか。
「そう言えばムツキに会ったら聞きたいことがあるんだった」
「奇遇ですね。私もあなたに聞きたいことがあるんです。そちらからどうぞ」
「ああ。……まず前提として、俺は記憶喪失で失った自分の記憶の手がかりを探している。そしたら最近とある出来事で思い出した記憶の一部にはムツキ、アンタの顔があった。そこのモコ…たんと一緒にな。そこで聞きたい。俺…もしくはこのモコ…たんと過去に出会ったことはあるか?もしくは記憶喪失だったりしないか?」
「新手のナンパかなんかです?ありませんよ、さっきのブルーフレア団なら覚えはありますけどね。記憶を失った覚えはありませんし、私が貴方と出会ったのはストライクの件が最初です。そこのモコたんは動画で何度か拝聴しましたが実際に会うのは初めて、ですよね?」
「うむ、そうだな」
「またか……」
まただ。たしかに記憶はおぼろげながらあるのに、当の本人たちがなにも知らない。なんなんだ、この矛盾は。でも確かに俺の事を知ってるなら、何らかの理由で隠しているにしても初対面の時に大なり小なり反応があってもいいはずだ。でもそんなことはなかった。文字通りの初対面だ。俺の方が異物な気すらしてきた。ネモによれば俺はガラルから来た痕跡しかないのにパルデアに入った形跡も、ガラルに俺がいたという痕跡すらないとのことだし……
「……俺、知らない未来からでも来たのかなあ」
「え。未来人なのラウラ!?」
「そうでもないと説明がつかないって言うか……」
「セレビィとかいう時空を超えるポケモンがいるらしいとは聞いたことはあるが。ナンジャモの企画配信で」
「……貴方と出会ったことはありませんが、貴方の記憶に関する情報ならあるかもしれません」
頭を抱えていると、ムツキがそんなことを言ってきたので顔を上げる。もうなんでもいい、手がかりが欲しい。ムツキはスマホロトムを操作すると、昨日の俺が出演していたナンジャモの配信、【ドンナモンジャTV】挑戦者ラウラとのマジバトル!負けないゾ!【ナンジャモ】の動画を開いて操作する。
「昨日の配信、貴方が出ていたので視聴していました。そこで気になることがあったのです」
そう言って突きつけてきた画面を、アイアールやモコウと共に顔を寄せ合い覗きこむ。それは最終盤、ケプリベとムウマージが対峙しているあの時の映像だった。
《「いいね、相手にとって不足無し!最高だ!」》
タタタッタン。そう足でリズムを刻みながらふらふらと体を揺らして踊り、拍手をして獰猛な笑みを浮かべる俺の顔がアップされているシーンで映像は止められた。そこで止めないでくれ、恥ずかしいから。
「これはコメントでも指摘されている通り、ガラルの元最強のジムリーダー、キリエの得意とする「指示歩法」です。ですが疾うの昔にキリエは引退し、最強のジムリーダーの座はドラゴンストーム・キバナに明け渡しました。つまり、これを知っているのは10年近く前のキリエの活躍を見ていた世代の人間か、彼女と直接戦った者のみ。特にこの特殊歩法はキリエが認めた強者相手にしか使わない奥の手です」
そう言って自分のマイリストを開いて【グランドウォール・キリエ】ベストバウト試合まとめ【栄光の記録】なる動画を開いて見せてくれるムツキ。画面の中で、じめんタイプを模しているユニフォームと肩掛けのスーツジャケットを身に着けたムツキとよく似た顔立ちの女性が、無言でコツコツと靴音を鳴らして、ホルードが大地を殴りつけると地面が隆起して土柱が飛び出して相手のペリッパーを撃墜している信じられない光景が流れた。今の、もしかしてじしんか?じしんをひこうタイプに当てやがった…
「お前はその世代なのか?」
「いいえ。私は貴方達と同世代ですよ。実際に見たことはありませんが、私の目的はキリエを越えること。そのため知ってました」
俺達と同世代で四天王ってやばいな。どんだけ天才なんだムツキ。
「私の事よりラウラ、貴方の事です。貴方は……私の母親、キリエの知り合いですか?」
「母親!?」
「それはどうでもいいんです!」
母親が最強のジムリーダーで娘は若き四天王ってすごい親子だな。…しかしなあ。動画を止めてジムリーダー・キリエの顔を見せられるが……思い出すのは、あの戦法を思い付いたきっかけであるとんでもなく強いハガネールの記憶。あれは確か……。
「…モコウ。ムツキ。お前ら二人と一緒に、とんでもなく強いハガネールと戦った記憶が、俺にはある」
「「は?」」
俺の言葉に呆けるモコウとムツキ。だよな、覚えがないんだもんな。おかしいのは俺だ。
「あれがキリエだったのかもしれないが……心当たりはそれだけだ。そもそも記憶が無いんだぞ俺は」
「我こんなバケモノと戦った記憶はないが?」
「それはおかしいですね。私はまだ母に……キリエに勝てる気がしない。立ち向かうなどとてもとても。そもそも、キリエの手持ちにハガネールはいないはずです」
「…じゃあ本当に手詰まりだ。……俺は一体どこから来たんだよ」
俺は頭を抱えるしかなかった。
アイアールの初代相棒だということが判明したゲッコウガ。ムツキが評価するぐらい練度があります。
ムツキ、そしてキリエをきっかけに迫るラウラの謎。ラウラはもう未来から来たのかと頓珍漢なことを言う始末。その真相や如何に。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。