今回はラウラ大ピンチ。楽しんでいただけると幸いです。
「……いくらなんでも遅くない?」
ラウラがしるしの木立ちに向かって半日。戻ってこないどころか一切連絡が無い。スマホロトムに何度連絡を入れても反応が一切ない。ラウラなら長くても一時間かからないだろうに……なにか、あった?
「…どうしよう」
スター団がブルーフレア団と関わっていると聞いてから嫌悪感と恐怖がぬぐえない。しるしの木立ちに足を踏み出そうとして、怖気づく。
「アギャ?」
「ゲッコ」
傍で私を見ていたコライドンが首をこてっと傾げ、背後に控えていたゲッコウガが腕を組みながらじっと見つめている。…この感情は今の手持ちだとゲッコウガしか知らない。コライドンは今にもラウラを捜しに行こうと促していて、ゲッコウガは黙って私に従う意向の様だ。
「…うん。フレア団には正直もう関わりたくないけど……ラウラが心配だ。お願いコライドン、この強張って動けない私の身体を連れてって」
「アギャアス!」
意を決してコライドンに跨り、しがみ付くとラウラの匂いを辿っているのか爆走するコライドンと、走ってついてくるゲッコウガ。すると目と鼻の先にあるスター団のアジトらしきバリケードではなく横に逸れて、森の奥へ奥へと入って行く。
「…ラウラ、なんでこんなところに…?」
そしてコライドンがあるところまでやってくると、嫌な顔をして飛び退いた。ゲホゴホと咳き込んでいるのを見るになにか目に見えない嫌なものが充満しているらしい。
「コライドン、大丈夫!?」
「アギャス…」
「ありがとう、戻っていいよ」
力なく首を横に振るコライドンをボールに戻し、ゲッコウガと共に辺りを散策する。……周りにはワナイダーやコンパン、カリキリにビビヨン、ビークインとラウラ好みの蟲ポケモンがいっぱいだ。大方これらに惹かれて道を外れたとかそんなんだろうけど、連絡に出ないのはさすがにおかしい。
「もう一度電話…」
《ロトロトロト……》
「え?」
もう一度電話をかけてみると、スマホロトムの着信音が聞こえてきてキョロキョロと周りを見渡すと、ゲッコウガが茂みの中に手を突っ込んでそこからスマホロトムを抜き取った。ラウラのスマホロトムだ。それだけじゃない、ゲッコウガがまさぐった茂みの中から転がってきたのは見覚えのあるもの。
「エクスレッグヘルメット…ラウラのだ」
これが転がっているってことは、ラウラは転倒した可能性が高い。確かバッグに入れて持ち歩いていたはずだ。さっきのコライドンが咳き込んだものといい、ポケモンの恐らくどくのこななどの技を受けたのだろう。意を決して、様子を窺っていたカリキリに尋ねてみる。
「ねえ、これを被っていた女の子がどこに行ったか知らない?」
すると、少し考えてからとてとてと歩き出すカリキリ。私とゲッコウガは顔を見合わせると、それについていくのだった。
意識が覚醒する。しかし身動きが取れない。見てみれば木にロープでグルグル巻きに縛られていた。
「ぐうっ、げほっ!ごほっ!…ここは……?」
咳き込んで異物を吐き捨てながら周りを見渡す。傍にはスター団のマークが描かれたテントが設置されている。林の中でひっそりと建てられている辺り、チーム・シーのアジトじゃなそうだ。縛られている後ろ手でなんとか腰のボールホルダーに手を伸ばすが……ない。バッグもない、服以外の身ぐるみ剥がされている。そこで思い出す、コンパンに誘われて着いて行った先で苦しくなって倒れ、青いサングラスのスター団…ブルーフレア団したっぱに襲われたことを。
「…あれはどくのこなか。エクスレッグヘルメットを被っていれば防げたんだろうが……油断したな」
身を捩るが、ロープはきつく縛られていてビクともしない。なんとか首を下ろして噛み切れないかと頑張る。もう、少し……。といったところでスター団のテントから誰か出てくる。見ればオレンジアカデミーの着崩した制服に身を包んだ、モトトカゲにライドする用のヘルメットに青いサングラスのスター団の男女二人組、意識を失う前のアイツらか。
「あ、ラウラ起きてるよパイセン!」
「よう、俺達を覚えているか?」
「…生憎としたっぱの顔を全部覚えているほど暇じゃないんでね」
俺を見下しながら尋ねてくる男のしたっぱにそう吐き捨てると、傍に控えていたベトベターのドレインパンチと思われる拳で腹部を殴られえづく。
「がっ…!?」
「これでも思い出さないか?」
「あんたが思い出せなくてもこっちは恨み募っているんだからね!」
そう言う女の方の傍にいるのはシルシュルーとコンパン。このコンパンは…ベトベターに、シルシュルー……スター団どく組チーム・シー……あれ、どっかで。
「お前らまさか、宝探しの前にテーブルシティで俺を勧誘した…?」
「ようやく思い出したか。いつぞやは世話になったなあ!」
「そうよ、お久しぶり。貧弱ポケモンを使うむしけらさん?」
「てめっ…があ!?」
そのままシルシュルーに肩をかみつかれ、ベトベターに顔を殴られる。それをにやにやと眺める二人。俺が初めてであったスター団か…!
「正直欲しくも無かったけどアンタを誘き寄せるためだけに捕まえたこのコンパンのどくのこなのお味はいかが?」
「俺を捕まえるためだけに蟲を利用したってのか…!」
こいつ、絶対に許さん!首を伸ばして噛み付かんとするが、届かない。くそっ、こんな拘束…!
「悔しいならほら、手を出して見なさいよ?もっとも?手も足も出ないだろうけどね!」
「お前ら、ブルーフレア団の手先だったのか…!?」
「お前と前に会った時は正真正銘スター団だったぜ?でも俺達は選ばれたんだ!どうだこのサングラス、いかすだろ?」
「私達と貴方の戦いを見ていたある方に勧誘されてね。才能あるって言ってくれたのよ。見る目の無いスター団のボス共とは違う!私達の輝ける才能を見出してくれたあの方に一生ついていくと決めたの!」
…それ絶対騙されてるだろ。そんな意を込めたジト目で睨みつけるが、二人はまるで意に介さない。
「まだしたっぱだけど、私達はこんなところでくすぶっているような連中とは違う!」
「ラウラ、お前を捕まえることで俺達は幹部になり上がる!お前の持っているハチウヲネハ?を献上するんだ!」
「チヲハウハネだ馬鹿野郎」
口内に溜まった血を吐き捨てながら訂正すると、今度はベトベターにはたかれる。指示することなく以心伝心するとは仲よろしいようでうらやましいこった。
「口の利き方に気を付けろ?ベトベターがその気になったらどくしゅで死ぬぞ?」
「このままこの没収したお前のポケモン全部を献上してもいいんだけどね?私とパイセンはアンタに恨みがある。それを発散してからでも遅くないわよね?」
「安心しろ。ここは人も滅多に来ないスター団穏健派のテントだ。今は人払いしているから誰も来ない」
「悲鳴をいっぱい聞かせて私達の溜飲を下げることね!」
くそっ、万事休すか……。と、次の瞬間。二人の足元に突き刺さって弾ける水の手裏剣。二人は驚いて飛び退き、周囲を警戒する。
「何者だ…!?」
「危ないわね!?」
すると、木の上からゲッコウガに抱えられて飛び降りてきた人物がいた。オレンジアカデミーの夏服に身を纏い、顔をエクスレッグヘルメットで隠した謎の人物がビシッとかっこいいポーズを決める。…って。
「わ、私は……えっと、通りすがりの謎のヒロインエクス!その人を離しなさい!」
…なにしてんだ、アイアール?
まさかまさかの、序盤で最初にラウラと出会った、チーム・シーを名乗っていたあのコンビでした。あのあとブルーフレア団に鞍替えしているという控えめに言ってクズコンビ。なんならラウラがスター団ぶっ潰すと決意したのもこいつらのせいであるはた迷惑コンビです。
そこに登場、通りすがりの謎のヒロインエクス…ことアイアール。なんでこうなったかは次回にて。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。