ポケットモンスター蟲スカーレット   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。超絶シリアス注意報発令。数話前のほのぼのが嘘みたいなシリアスです。ブルーフレア団のボスがついに判明です。

今回は前回のアイアール視点。楽しんでいただけると幸いです。


VSブロスター

 どうやらブルーフレア団に対する警備でピケタウンも管轄になったらしいグルーシャが、怪しい人間を探すべく歩いて行ったのと、正気を取り戻したグレンアルマとソウブレイズと抱き合って号泣している少年を見送り、俺は騒ぎに来なかったアイアールを捜してピケタウンを散策していた。

 

 

「……」

 

「あ、いたいた!アイアール!」

 

 

 何故か人気(ひとけ)の無い場所で呆然と立ち尽くしているアイアールとゲッコウガを見つけ、駆け寄る。近くが水で濡れているがバトルでもしたのか?

 

 

「おーい、どうしたんだ?」

 

「…え、あっ。ラウラ。…なんでもない、よ…?」

 

「なんで疑問形?」

 

 

 呼びかけると我に返り、首をかしげるアイアール。強い奴とでも戦って放心してたのだろうか。

 

 

「…ラウラ、記憶を取り戻さないとダメかな?」

 

「なんだ藪から棒に。ダメに決まってるだろ、俺は記憶を取り戻したいんだ」

 

「それがどんなに嫌な記憶でも…?」

 

「どうしたんだ急に」

 

「ううん。なんでもない…」

 

 

 元気がないように見えるが…本当にどうしたんだ?とゲッコウガに視線を向けてみる。ゲッコウガは何故か俺を睨みつけていた。なんだよ、また俺なんかした?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数刻前。まいど・さんどでサンドウィッチを食べていたアイアールとコライドン。すると轟音が聞こえてきて、食べかけのサンドウィッチを慌ててちゃんと噛んでから飲み込むと立ち上がる。

 

 

「なんの音…?コライドン、ごめん!行くよ!」

 

「アギャッス!」

 

 

 サンドウィッチをモグモグと味わっていたコライドンを連れて外に出るアイアール。そして少し進んだ瞬間、背中に冷や水をかけられた様な感覚と共に、コライドンを戻してゲッコウガを繰り出し、その主を攻撃せんとするも巨大な鋏でみずしゅりけんを受け止められる。周囲の人間は中央での騒ぎに気を取られて気付いていないようで、周りから人気(ひとけ)がなくなっていた。

 

 

「…ブロスター」

 

「なるほどね。危険を感じた瞬間迷わず反撃に転ずる容赦のなさ、アケビの言う通りの逸材ね」

 

 

 ゲッコウガのみずしゅりけんを防ぎきったポケモンが自身も知っているカロスにも生息しているランチャーポケモン、ブロスターに警戒するアイアールだったが、ブロスターの陰に隠れていた先端に行くほど銀色なグラデーションが綺麗な蒼色のロングヘアーを見て息を飲む。

 

 

「…マトイ先生?」

 

「私はただの司書で先生じゃないわアイアールさん。こんにちは、いい子にしてる?…って聞くまでもないわね。人にいきなり襲いかかるなんて駄目よ?」

 

 

 そう指を立てて「メッ」と注意してくるマトイに、アイアールは信じられないとでも言いたげに焦燥しきった顔で後ずさる。

 

 

「い、今アケビって…」

 

「あら。なにもおかしくなんてないわよ。だって私がブルーフレア団のボスなんだもの」

 

「うっ、ぇえ……」

 

 

 衝撃のカミングアウトに、口元を押さえて吐き気を押さえるアイアール。ゲッコウガが慌ててアイアールを心配してオロオロと取り乱し、マトイはその様子を見て苦笑する。

 

 

「エスプリはいい具合に搖動できているみたいね。ボールジャックできる距離、二体同時行使、どこまで強くできるのか、細かい指示ができるのか…そのテストも兼ねた搖動だったけど、100点満点。あの子には花丸をあげないとね」

 

「ううっ……なんでっ」

 

「なんでまた知り合いが悪人なんだって顔ね?いいえ、貴方のバトルやポケモンの勉強に司書として付き合ってあげた私は身内も同然だったかしら。お父さんの事でも思い出した?」

 

「ひっ、、はぁ、こひゅっ……すぅ、はぁ!」

 

 

 図星だ。アイアールの脳裏にフラッシュバックするのは大好きだった父親の笑顔、旅立ち、赤装束のフレア団したっぱたち、そのうち一人がサングラスを外して手を差し伸べて―――――気付かぬうちに過呼吸になっていて、ゲッコウガが背中を擦ってくれてなんとか落ち着く。その様子を見てご満悦のマトイは自分の顔を指差しながらズズイッとアイアールの眼前スレスレまで顔を近づけてにっこり笑う。

 

 

「私の顔に見覚えないかしら?」

 

「え…?」

 

「私ね、研究者としてのフラダリ様……フラダリさんの部下として貴方と会ったことがあるのよ?ポケモン博士志望の希望に満ち溢れていた将来有望な女の子、アイアールちゃん!残念ながら貴方は忘れてしまってたようだけど。それだけじゃないわ、バラも、アケビも、コレアもモミジもクセロシキも……フレア団としてじゃなく、研究者として貴方と既に会っているわ。仲良くしてくれたお姉さんたちやおじさん、覚えてない?」

 

「え、あ、え…?」

 

 

 思い出す。父親の上司として出会ったフラダリに付き従っていた科学者たち。研究職志望だと知って仲良くしてくれた人たち。アイアールの顔が絶望に染まって行く。

 

 

「なんならフレア団は貴方の父親の様な幹部や、したっぱとして表立って活動していた人間だけじゃない。カロス中どころか各地方にも一般人として潜んでいたわ。もしかしたら貴方の隣人や友達もフレア団だったかもね?」

 

「もうやめて!聞きたくない!」

 

 

 耳を押さえて目を瞑り、嫌嫌と首を振るアイアール。ゲッコウガはそんな主人の姿に、見ていることしかできない。自分が守ろうとすれば、なおさら過去を思い出させてしまうから。

 

 

「フレア団じゃないけど各地にもフレア団みたいな組織は数多くいるわ。ロケット団、マグマ団、アクア団、ギンガ団、プラズマ団etc.……ああ、そうそう。あのラウラさんもプラズマ団の一員だったみたいね?」

 

「嘘だ!」

 

 

 それだけは嘘だと声を荒らげて睨み付けるアイアール。そんなアイアールの目の前に突き付けられたのはマトイのスマホロトムの画像データ。そこには、小柄な体に灰色の戦闘服の様な物を着込み、首元に稲妻の走ったPのマークが描かれた白のマフラーを巻いて口元を隠して軍帽を被った長い赤髪の少女。顔を隠しているが間違いなく、ラウラの姿だった。

 

 

「これはラウラさんがパルデアに来た直後、私達が回収した彼女のスマホロトムよ。こんな画像が入ってたってことはつまり……記憶を失う前の彼女はそういうこと、なんでしょうね?」

 

「そんな、嘘、嘘だ…」

 

 

 全幅の信頼を寄せているラウラまで“そう”だと知ってよろめくアイアール。それを見て深い笑みを浮かべたマトイは視線を下げてアイアールの目と合わせる。

 

 

「ブルーフレア団は捕まらなかった元フレア団員を集めて再編した組織よ。その目的は、失われた最終兵器を取り戻し、フラダリさんには成し遂げられなかった「争いのない美しい世界」を創世する計画を成功させること」

 

「…争いの無い、美しい世界…?」

 

「そうよ。悪の組織だのなんだの言われてるけど、私達の目的は正義そのもの。フラダリさんはやり方を間違えて悪にされてしまったけど。そこで相談なのだけど」

 

 

 そう言って手を差し出すマトイに、アイアールは絶望しきった顔を上げる。その様子は菩薩が手を差し伸べるかのようだった。

 

 

「フラダリさんや父親の事で苦しむなら、貴方も仲間になってしまえばいいのよ。貴方もブルーフレア団に入って争いのない美しい世界を創らない?歓迎するわ」

 

「わた、しは………」

 

「答えは今すぐじゃなくてもいいわ。でも……私の正体を話したりしたら、許さないわよ?「目」はどこにでもいるのだから」

 

 

 そう忠告していると、街の中心に巨大な氷塊が生み出されたのを見て立ち上がり踵を返すマトイ。蒼いカバーを付けたスマホロトムを取り出してどこかに通話する。

 

 

「ここまでね。実験は成功。目的も達成したわ。エスプリ、撤収しなさい。…それじゃあね、アイアールちゃん?」

 

 

 そう言って通話を切ったマトイは、ブロスターを引き連れて去って行き……冒頭に繋がるのだった。




というわけでブルーフレア団のボスはマトイでした。名前の由来はイソトマ。花言葉は猛毒、強烈な誘惑、神聖なる思い出、優しい知らせ、心を開く。これまでの登場シーンはそれぞれ四災の調査に加え、スター団の勧誘、バラへの指示、などなどブルーフレア団と関係あるものしかなかったという。

勧誘され陥落しかかっているアイアール。物は言いよう。最終兵器の実態について一切話してません。プラズマ団ラウラについては前作を参照。上手い事利用されました。フレア団との因縁もチョロッと判明。結構な人間不信を抱いてます。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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