今回はその後のラウラとアイアール、そしてグルーシャ。ちょっといつもより短いです。楽しんでいただけると幸いです。
ピケタウンのはずれ、ナッペ山方面。気の乗らない見回りの続行しようとしている厚着の女にも見える男のスマホロトムに着信。その人物、グルーシャは手袋を外してスマホロトムを手に取り相手の名前を確認すると通話に出る。
「…ああ、委員長。暴れていたポケモンは鎮圧した。だけどおやのトレーナーに確認を取ったけど、強制的に操られていた形跡があったよ。ブルーフレア団って奴等の仕業かもしれない。サムい連中だ」
《「やはりそうでしたか。ご苦労様ですグルーシャ。ですが妙ですね、ピケタウンで暴れる理由なんて思いつきませんが……」》
「そう言えば噂の彼女に会ったよ。ラウラとかいう。そこまで強そうじゃなかったな。あれは慢心して思わぬところで足を掬われるタイプだ。いつも一緒にいるっていう片割れがいなかったのが気になったかな」
《「アイアールさんですか?」》
「ん。それ。じゃあ三日に一度の見回りも終わったし僕はジムに戻るから。……さて」
そう言って通話を切り、モンスターボールを手にして振り返るグルーシャ。その冷たい視線の先には、何の変哲もない鉱夫2人がいて。
「あんたたち。こっちは仕事場じゃないだろ。せっかく人のいない道を通っているんだ。お粗末な変装はやめろ、サムいよ」
「……ミッション失敗。カモフラージュ機能OFF」
「命令受信。ボールジャック開始。ミッションを遂行する」
その姿がぶれて、現れたのは瓜二つのヘルメットに黒いボディスーツを身に着けた人物。エスプリが二人、そこにいた。
「…はあ。僕はお粗末な変装を解けと言ったんだけど。そのヘルメットの下の顔、見せてもらうよ…!」
様子のおかしいアイアールとぎくしゃくしながらも、コライドンに乗ってピケタウンからナッペ山への道を進む俺達。やっぱり、俺がグレンアルマとソウブレイズと戦ってた時に何かあったのだろう。ゲッコウガにも睨まれたし、ありえるとすれば……。
「なあ、アイアール…」
「なに?ラウラ」
「…俺、お前に嫌われることでもしたか?」
「……なんで?」
心底不思議そうに首をかしげるアイアール。違ったか、一人で買い物に向かったからご立腹だと思ってた。
「今のラウラにはなにも怒ってないから安心して。それに私がラウラを嫌う事とか、あ、ありえないから…」
「泣きながら言っても説得力ないぞ!?本当にどうした!?」
ラウラを嫌う~辺りで我慢できずに泣き出して嗚咽するアイアールに、コライドンの後部上で慌てる俺。コライドンもギョッとして止まり、俺はとりあえずハンカチを差し出して泣き止むのを待つ。
「うん、ごめん、ありがと……そうだよね、こんなにやさしいラウラがそんなわけないよね」
「なにがだ?」
「ううん、なんでもない。それよりそろそろ着込んだ方がいいんじゃないかな?肌寒くなってきた」
「同感だ」
一度コライドンから降りて、荷物から防寒具を取り出し身に付けて行く。………「今の」?もしかしてアイアール、以前の俺のついてなにか知ったのか?聞きたい、けど地雷っぽいしなあ。
「ポケモンの「声」が聞ければなあ…」
そしたらゲッコウガから事情を聞くことができるんだが。あれ、なんでポケモンの声が聞けるなんて突拍子のない発想ができたんだろう?記憶が、少しだけ浮かんできた。
「……プラズマ団の、王様…?」
「…!」
思わずつぶやくと、怖い顔で睨んでくるアイアール。な、なんで…?(涙目)
「…やっぱりラウラは……」
「お、俺やっぱりなにかしたかなあ…」
「え、あ、泣かないで…?」
「アギャッス」
涙目でオロオロする俺と、そんな俺を見てたじたじなアイアールと、そんな俺達を見て呆れた様な鳴き声を上げるコライドン。なんだこの奇妙な図。
「くっ…!」
荒げた息で乱れたマフラーを元の位置に戻すグルーシャ。繰り出したハルクジラは苦戦を強いられていた。対するはモスノウ、ツンベアー、マニューラ、チルタリス。グルーシャの残りの手持ち達だった。
「…人のポケモンを奪って操るとか聞いてないけど、グレンアルマとソウブレイズの謎が解けたね。雪のように冷たい現実を教えられた気分だ」
ブルーフレア団と言う伝説ポケモンを持っている可能性が高い一団が相手と聞いて本気の手持ちを連れて来ていたのが災いした。仮にもパルデア最強のジムリーダーと呼ばれる己の手持ちだ、本領発揮できないまでもシンプルな強さと数で苦戦を強いられていた。
「ジムリーダー、グルーシャ」
「降参を推奨。危害は加えない」
「やなこった。人のポケモンを奪うような奴等に誰が従うか」
拉致するつもりなのか降伏を推奨してくるエスプリ二体にそう吐き捨てるグルーシャだったが、やせ我慢をするので精一杯だ。
「モスノウ、むしのさざめき。ツンベアー、つららおとし」
「マニューラ、つじぎり。チルタリス、ぼうふう」
「全てを吹き飛ばせ、ハルクジラ!アイススピナー!」
いっせいに放たれた攻撃と、せめぎ合うハルクジラだったが一瞬でも張り合えたのが奇跡であり吹き飛ばされ、グルーシャはぶつかって転倒し、ハルクジラに押し潰される。動けない、万事休すだ。
「確保する」
「大人しくしろ」
「…ああ、やっぱり僕はこの程度か。サムいなあ」
諦め、目を瞑るグルーシャ。しかしてここはピケタウンからナッペ山に続く道。即ち。彼らの通り道だ。
「レクス、こうそくいどう!」
「シング、フレアソング!」
高速で移動する黒いなにかに翻弄され、モスノウとツンベアーとマニューラとチルタリスが一塊になったところに放たれた炎の衝撃波に吹き飛ばされる。四倍弱点を受けたモスノウと、耐久の低いマニューラが崩れ落ちる。エスプリ二人は攻撃の飛んで来た方に振り向くと、エクスレッグとラウドボーンを侍らせた、コライドンに乗った二人の少女がいた。
「あれって、グルーシャさん、だよね?」
「ああ。ブルーフレア団め、また卑怯な手を使ったな?」
コライドンから降りながら襲われている人物を見て確認を取るアイアールと、拳と掌を打ち付けて不敵な笑みを浮かべるラウラ。二人とも、鬱憤を晴らさんが如くやる気満々だ。
「ラウラとアイアールを確認」
「ツバサノオウとチヲハウハネの所持者。確保する」
「できるもんなら!」
「やってみろ!」
そして、ツンベアーとシング、チルタリスとレクスが激突した。
まさかまさかの二人のエスプリ。ジムリーダーのポケモンすら操るボールジャックの脅威。
中途半端に記憶を思い出したせいでさらにアイアールに疑惑の目を向けられるラウラ。ついには泣いてしまう始末。そのあとにかっこつけても誤魔化せていないのである。
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