今回は雪山での逃走劇。楽しんでいただけると幸いです。
「…とりあえず。わたし。いく。これ。かりてもいい?」
うんうんと悩んでいたら、サニアが肩にかけたモコモコの上着を指差しながらそう言った。いやそれはいいが……。
「サニア。俺の記憶が戻ったらお前が帰れる手がかりになるかもしれない。それを待ってからでも……」
「きおくがもどるかくしょうがない。それならわたしが。みつけだしてみせる」
「うん、それはいいね。秘伝スパイスを全部揃えても記憶が戻らない可能性もあるもんね」
「それもそうか……」
なんかアイアール、急に生き生きしだしたな?なんか思いついたのか?まあいいか。
「じゃあそういうことで。ラウラ」
「うん。なんだ?」
「アカデミーのマトイ。きけん……」
ドドドドドドドドドドッ!
「「「!?」」」
去り際にサニアがなにか言おうとした瞬間、地響きが起きてその方向を見てみると雪崩が迫って来ていた。なんで、いきなり!?
「っ!」
「ラウラ!掴まって!」
相変わらずのポケモン顔負けの身のこなしで上着を翻して逃げるサニアと、コライドンに乗り俺に向けて手を伸ばしてくるアイアール。その手に掴まり、かっくうで北3番エリア方面目掛けて空飛ぶ中で。雪山の上に、それを見た。
「キ……ル……」
「…なんだ、あいつは?」
「放さないでね!」
全身雪の様な真っ白い細い体躯の獣の姿をした、口先には2つに割られた古びた剣が一対の牙の様に生えているポケモン。そいつは、アイアールが俺を無理やり後部に乗せて雪崩の上をピョンピョンと飛び移って行くコライドンを、雪崩の流れに乗るようにして追いかけてきていた。
「気を付けろアイアール!来るぞ!…ジャック!」
跳躍して剣の牙で斬りかかってきたのを、ジャックを繰り出して岩斧で受け止める。くさわけで雪崩をかき分けてそのポケモンに襲いかかるジャックだが、素早い身のこなしで突撃を回避。氷の礫を放って牽制してきた。
「あれ、なに!?」
「わからない、スマホロトムも調子が悪くて図鑑が見れない!」
何故か砂嵐状態になっていて起動すらできない、多分認識もできてないなこれ。
「ヒナ、手伝って!なんとかここから離脱する!」
「ジャック!がんせきアックスだ!」
「ルミナコリジョン!」
脚力に自信があるヒナを繰り出し念力攻撃を仕掛けるアイアールに合わせて、岩斧を振るうジャック。しかしルミナコリジョンはまるで通用せず、岩斧を斬り弾かれてしまう。さらに雪崩を再度起こしてジャックとヒナを薙ぎ払ってしまい、慌ててボールに戻す。
「エスパーが効かない!あくタイプ!?」
「もしかして、
「なにそれ!?」
以前出会ったディンルーの同じ出鱈目な力、四災の一匹なら納得がいく。呼ぶなら災いの
「くっ……あーもう!どう見てもこおりタイプだから雪崩さえなければシングが出せれば一発なのに!」
「レクス、頼む…!」
「ゲッコウガ!」
この雪崩で出せるポケモンは限られてくる。ジャックはやられた。空を飛べるレイン、相手がこおりタイプだろうからダメ。同じく空中移動ができるダーマ、糸を繋げる場所が無いからダメ。浮けるケプリベ、スピードが無い上にエスパーであくに弱いからダメ。でんじふゆうで飛べるぼむん、相性はいいがノーモーションで素早く動けないからダメ。脚力に優れるレクスしかない。アイアールも似たような結論に至ったのかゲッコウガを繰り出す。
「みずしゅりけん!」
「とびかかる!」
雪山の冷気で凍り付いたみずしゅりけんを斬り弾いた隙を突いてレクスが飛び蹴りを叩き込む。蹴りはこおりのつぶてで逸らされ、空中でとっ組み合うレクスと災いの剣。
「かげぶんしん!」
「にどげり!」
空中で取り囲んだゲッコウガの分身を聖なる光を纏った牙を振るい、纏めて薙ぎ払った災いの剣の一撃を受けながら二連撃の蹴りを叩き込むレクス。ダメだ、火力が足りない。もっと、もっと強い技がいる…!
「ああ!」
次の瞬間、避けられた蹴りをそのまま、大きく振り上げた脚を勢いよく振り下ろすレクスの一撃が災いの剣の頭部に直撃する。今のは…!
「かかとおとしか!」
「キル!!キル!!」
すると明らかにブチギレた災いの剣は闇の衝撃波を放って来た。あれは確か、四災の専用技カタストロフィ。対象の体力の半分を失わせると言う恐ろしい技だが、言ってしまえばあくタイプでとくしゅのひっさつまえばだ。失うのは現在の体力の半分だけ…!
「素早く!こうそくいどう!力強く!かかとおとし!」
さらに追撃。雪崩の間を駆け抜けて一瞬で近づき、背中に踵を叩き込むレクス。かかとおとしは命中率が低く外したら自身が大ダメージを受ける技だが、力業で命中率を上げて使用することで弱点を無視して使えた。ならばと苦しみ悶えながらもこちらに向けてこおりのつぶてを飛ばしてくる災いの剣。傷付いてもこっちを仕留めるつもりか!?
「危ない、たたみがえし!」
「助かった、アイアール!……今の行動、もしかしてトレーナーがいるのか?」
ゲッコウガが防いでくれたおかげで周囲を見る隙ができた。だけど、人間なんてどこにも……うん?あそこの風景が歪んでたような?
「…アイアール、ゲッコウガであそこを狙ってくれ」
「わかった。ゲッコウガ、みずしゅりけん!」
俺の指差した方角目掛けてゲッコウガが凍り付いたみずしゅりけんを叩き込む。するとカキン!と小気味いい音と共にみずしゅりけんが砕け散り、バチバチと稲妻が走ってヘルメットにボディスーツのエスプリが姿を現す。
「エスプリ!?」
「アイツの仕業だったのか!」
そうか、擬態能力……風景にも溶け込めるのか。
「ジジジ……任務失敗、失敗……回収して撤退する」
災いの剣を取り出したタイマーボールに戻し、跳躍して崖上から飛び降りるエスプリ。レクスがそれを追いかけようとするが、ネットボールに戻して引き留める。
「もういい、ありがとなレクス。かかとおとし、かっこよかったぞ」
「……なんだったんだろうね、エスプリ。それより、逃げてるうちについたみたいだよ」
そう言うアイアールに視線を前に向けてみると、ポケモンセンター。北3番エリアまで来たみたいだ。
「ラウラ、スター団フェアリー組を倒したらどうするの?」
「え?いや、偽龍のヌシに再度挑もうと思っていたが……」
「だったら……私。行きたいところがあるから別行動するね。あとでオージャの湖で合流しよう?」
「それはいいが……いきなりどうした?」
ついて来る気満々じゃなかったか?まあいいけどさ。
「じゃあな」
「うん、またね」
アイアールと別れて下山していく。さあ、フェアリー組よ。覚悟しろ。シュウメイみたいにダチじゃないから容赦しないぞこの野郎。
サニアと強制的に別れさせられ、災いの剣に襲われるラウラとアイアール。またもやエスプリでした。したっぱのノリで出てくる悪夢よ。そんな中、習得。かかとおとし。代わりに忘れたのはにどげりです。
そして何かの思惑と共に離れるアイアール。その目的地は…?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。