今回は校長とサニアの話、そしてVSイヌガヤ。楽しんでいただけると幸いです。
アイアールと別れて北3番エリアを進んでいると、落ち着かなそうにその場をうろうろしていたネルケが俺に気付いて駆け寄ってきた。
「ラウラ!雪崩があったようだが大丈夫か!?」
「ああ、ネルケ。俺は大丈夫だ。サニアが無事かはわからんが」
「サニア……ですって?」
俺がその名を出すと取り乱すネルケ…いや、クラベル校長。サニアの保護者だもんな、気になるか。
「ど、どうしましょう……安否を確かめるべきか…いやでも、余計な心配はしなくていいと言われてますし……」
「ネルケ。あんたは、サニアの素顔を知っていたのか?」
俺がそう尋ねると、慌てるのをやめてスンッと真面目な顔になり眼鏡の位置を戻すネルケ。
「…あなたも、知ってしまいましたか」
「アイアールもな。どういうことだ、ペパーにそっくりだったしアイアールが言うにはオーリム博士と瓜二つって……」
「その理由は私も知りません。ですが、オーリムにそっくりな彼女が倒れていたのを見て実験に失敗したのかと思い保護したのはたしかです。その後すぐにオーリムと通信して別人だと分かりましたが。彼女は……記憶を失ったわけでもないのに何も知りませんでした。言葉も、ポケモンも、文明も。保護した時の服もあの仮面と、服とは呼べぬ毛皮の衣装で野生児としか……そのせいでオーリムと誤認しましたが」
オーリム博士も野生児みたいな恰好なのか?しかし、それは今の姿からも想像できる。襟をわざわざ破り裸足で駆け回る姿は野生児そのものだ。
「私はまず、簡単な言葉をなんとか教えて彼女を特例としてオレンジアカデミーに入学させました。すると持ち前の知能で難しい言語やモンスターボールにバトルなどを理解して用い始め、優等生になったばかりか宝探しでチャレンジしたジム制覇も成し遂げチャンピオンクラスにまでなったのです。彼女は天才です。ネモさんにも匹敵しうる。ですが……自身の宝……故郷へ戻ることを渇望している。それを知っている故に私は自由行動をさせていたのですが……」
「…多分無事だよ、アイツは強い」
「私もそう思います。心配しすぎも駄目ですね、彼女は実の子でもないのですし……」
そう心配している時点で親みたいなものだろうけどな。…ブルーフレア団がオレンジアカデミーの生徒が入っているってことは多分オモダカさんから連絡を受けてるだろうから言わない方がいいか。ネルケとしても俺の計画を察せられても困るし。するとネルケは咳払いした。
「ごほん。スターダスト大作戦、進んでいるな。残るボスは二人か」
「あ、ネルケに戻るんだな」
「げふんげふん。この作戦のおかげでいろんなことが見えてきて助かってるぜ。……ところでラウラはカシオペアのこと、どう思ってる?」
「正直に言うなら危うい、だな」
「危うい、とは?」
「スターダスト大作戦を終えた後、どうなるのかわかってない。起きるのは混乱し行き場を失ったしたっぱたちの暴走だ。そこまで考えてないんだろうな、スター団のことを「大丈夫だ」と盲信している節がある」
「……なるほどな。俺も同じだ。カシオペアがスター団を恨んだり憎んだりしているとは思えない。むしろ逆だ、信頼すら感じる。あいつが団を解散させたい本当の目的は一体……」
「それだよな」
なんとなーくわかっては来たが確信には至らない。そう思いながらスター団アジトの入り口のバリケードを見やると、見慣れない格好の人物がいることに気付く。
「…とりあえず行ってみるか。ネルケ」
「ああ。回復は任せておけ、思う存分戦ってくれ」
ネルケと二人で近づくと、その人物とスター団したっぱ……星形サングラスから見てスター団のままっぽい……の会話が聞こえてきた。
「それではまた後ほど。ピアノのお稽古の時間に。坊ちゃまによろしくお伝えください」
「わっ、わかりました!イヌガヤさん!」
「……おや?」
その人物はこちらに気付くとネルケに驚いた様子を見せてから会釈し、こちらを向いてきた。何だ今の反応?
「貴方様も坊ちゃまのご学友の方でしょうか?」
「坊ちゃまって誰だ?多分違うぞ」
「左様でございますか……ご存じないかもしれませんがここはオルティガ坊ちゃまが率いるフェアリー組・チームルクバーのアジトなのです」
「あっ、あの、そういうの、勝手に教えないで……」
慌てるしたっぱ。なるほど、オルティガが坊ちゃまか。お坊ちゃまなんだろうあ、この人は執事ってところか。
「大変失礼いたしました。このおかたはどちらさまなのでしょう?」
「多分、アンタ、ラウラだよね!私達の敵です!」
「ああ、ラウラだ。カチコミに来たぞ」
正直に頷いてやる。すると戦意を見せたのはしたっぱではなくイヌガヤの方だった。
「なるほど。ということはお坊ちゃまの敵……ということで?」
「そうなるな。オルティガをぶっ倒しに来たからな」
「ふむ。なるほど。であれば……」
「へ……?」
「ワタクシと一戦、願えませんでしょうか?もちろん、一対一で構いません」
…この人、ただの執事じゃないな。圧を感じる。ネルケがさっきから何も言わないし、知り合いなのだろうか。
「いいぞ。オルティガの味方だってなら俺の敵だ」
「それでは参ります。ギモー」
「頼むぞ、ぼむん」
繰り出されたのはしょうわるポケモンのギモー。なんか既にオーロンゲに進化していてもおかしくない練度を感じる。俺はフォレトスのぼむん、フェアリータイプの巣窟だからと先頭にしていたはがねタイプだ。
「ぼむん、一気に決めるぞ!ヘビーボンバー!」
「ねこだまし」
バチン!と。目の前で合掌されて怯むぼむん。技が出せない。くそっ、嫌な技を!
「もう一発だ!」
「いちゃもんをつけなさい」
再度ヘビーボンバーを叩き込もうとするも、いちゃもんをつけられてぼむんが怒り、同じ技を連続で出せなくなってしまった。や、やりにくい…!
「なら、でんじほう!」
「ないしょばなしでございます」
手をメガホンの様に構え、実体化した吹き出しを撃ち込まれてとくこうを下げられてしまい、でんじほうを真正面から受け止めて耐えてしまう。ねこだまし、いちゃもん、ないしょばなし。技四つの内三つが妨害技だと!?
「ヘビーボンバー!」
「そこです、どげざつき」
それでもとどめを刺すべく重量級の一撃を叩き込まんとするぼむんだったが、なんとギモーは後ろを向いて土下座をすることで回避。ギモーの目の前、真後ろに激突したぼむんに、槍の様に尖った髪の毛を突き刺してきた。吹き飛ぶぼむん。なんだ?なんで筋力が無いポケモンがあんなに強い…!?
「なにか情報は……」
いつの間にか復帰していたスマホロトムのポケモン図鑑アプリを起動してギモーの情報を目にする。ベロバーの時から人間や他のポケモンのマイナスエネルギーを主食としており、民家に忍び込んで盗みを働くなどで悔しがる相手から発せられるマイナスエネルギーを鼻から吸い込む…!?
「つまり……俺のせいか?」
「そのようですね。このギモー、ここ最近で一番元気です。バトルに焦っている様ですが、なにか悩み事でも?」
「ぐっ…」
そうイヌガヤに言われて言葉が詰まる。……そうだよ、ここ最近の様子がおかしいアイアールに散々悩んだ。エスプリ二人や災いの剣との戦いで元の関係に戻ったと思ったけど、去り際のアイツは間違いなく様子がおかしかった。だけど俺は逃げた、アイアールの答えを聞くのが怖くて逃げだした。でも、だからって…!
「じゃあどうすればよかったんだよ!素早く!でんじふゆう!」
俺の怒りに呼応し、ギモーが妨害技を出す隙もない動きで追い詰めるぼむん。
「ないしょばなしで隙を…!」
「気を引け!素早く!まきびし!」
パパパパパン!とまきびしを高速で射出して足元に撃ち込み怯ませて技を出させない。ここで決める!
「人の悩みを勝手に餌にしてるんじゃねえぞ!力強く!ヘビーボンバー!」
ドカン!と、轟音と共に叩き潰されるギモー。戦闘不能だ。
「……これはこれは。お見事ですな。よかった、我が主オルティガお坊ちゃまにはそのような悪感情をぶつけてほしくなかったので。ワタクシ以上にやり手ですのでご注意くださいませ」
「イヌガヤ…さん、あんた」
「お気になさらず。それでは失礼したします」
そう言って去っていくイヌガヤさん。…敵ながら、助けられたな。
「おっ、お疲れ様でスター……今の紳士はね。アカデミーの前の校長?みたいなんだけど?今はボスの教育係?らしくて。時々ボスを迎えに?くるの……」
「なんだって?」
ああ、だからネルケと知り合いっぽかったのか。
「…って、話してる場合じゃなかった!君がラウラで敵だと確信したので私は報告してきまーす!ちゃ、ちゃんとカチコミしてよね!お疲れ様でスター!」
「お疲れ様でスター」
…そういやスター団に入るってことはこの挨拶にも慣れて行かないとなのか。ちょっと恥ずかしいな?
ポケスペでベロバー系統の能力を知ってこれは活用せざるを得ないと思った結果の話でした。
サニアと校長のなれ初め(?)が判明。サニアは天才児で本気のネモとも戦える人間だけど、宝探しの方に興味があるためネモとあまり戦いたがらないって言う。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。