「申し訳ありませんが以上の理由から御社の取材はお断りさせて頂きます、それでは」
『ま、待ってくださ―――』
「これで何回目よ」
「10回から先は数えるのを止めました」
「しつけぇ奴らだぜ」
新聞を読んで株価をチェックしているランページの近くで電話を取っていた南坂、通話相手はとある出版社、取材申し込みだったが拒否した。理由としてはジャパンカップの時にかなり扱き下ろしてくれた出版社だったから。現在取材の申し込みに応じているのは5社程度。2社はジャパンカップの時に許可した会社、他3社はメジロ家と仲が良い所。
「というかさ、取材受ける意味ってあんの?俺自身が配信で情報発信しちまってるのに」
「世の中には配信を見ない人もいますからね、それこそご年配の方には週刊誌や新聞の売れ行きは良いですから」
「ンな事言ったら俺だって新聞買って読んでるからそりゃそうか。あっそうだ、南ちゃん、株主特権でQUOカード貰ったんだけど使う?」
「それならターボさんにプレゼントされたらどうでしょうか、きっと喜びますよ」
「成程、そりゃ一理ある」
フェブラリーステークスを制した事による偉業、それを是非記事にしたいと取材申し込みは加速度的に増えているのだが基本的に5社以外には応じていない。トレーニングにも集中したいので取材によって時間を奪われるのを極力回避したい。
「次は大阪杯ですね」
「今ん所、出るって決まってるのって何方?」
「ライアンさんにアイネスさん、後ヘリオスさんも名乗りを上げてますね」
「逃げウマ娘多いなおい」
自分を含めて既に3人のウマ娘が逃げ戦法を取っている、一般的に逃げ戦法というのは博打と言われているのに……まあそんな事を言ったら大逃げという大博打戦法で無敗の自分が居るのだが。
「だけどそうか……いよいよライアンとの勝負か……」
ずっと走りたくてしょうがなかった、生憎年末の機会は回避してしまったので実現しなかったが我慢した結果としてアイネスやヘリオスとも走る事が出来る。これは楽しみでしょうがない……本気で楽しみになってきた。
「まあ俺の事は良いとして……結局、ターボはどっちに出るか決めたのか?そろそろ弥生賞だろ」
間もなく3月、入ってしまったら直ぐに皐月賞のトライアルレースである弥生賞が待ち構えている。ネイチャはそれに出走する事は決めているが、ターボは結局どうするのだろうか。だが自分の心配をよそに南坂は大丈夫だと太鼓判を押した。
「ターボさんはチューリップ賞に出走しますよ」
「チューリップ賞って……あいつ、ティアラに行くのか?」
「ええ、言ってましたよ」
「トレーナートレーナー!!ターボ、桜花賞に出たい!!」
「桜花賞ですか、それですとティアラ路線でテイオーさんとは別路線になりますが宜しいので?」
相談があると言われて乗ってみると、レースに関しての事だった。ターボからレースの相談をされて少しだけ微笑ましくなったが、実際は確りと自分の未来を見据えていた。
「うんいいの。だってランはライアンとは別路線だけど確り競い合ってたでしょ、ターボもそうする!!それでね、二人で三冠を取ってからセーセードードーと勝負するの!!三冠同士の対決って凄いカッコいいと思うの!!」
何処かロマン的な考えがある、だが実際は先人であるランページとライアンに倣っていた。だが今回ばかりは二人を越えていると思った、何故ならば二人は揃って三冠を取る事を目的にしていたがターボは三冠を取った上で勝負する事を目標としているのだから。
「どうせ勝負するなら最高のターボでテイオーに勝ちたい!!」
「……分かりました、それではチューリップ賞に向けて調整しましょうか」
「おっ~!!!」
「という事があったんです」
「ターボがねぇ……あかん、なんか手のかかる子供が大きくなったのを自覚した親みてぇな心境になって来た……」
「御気持ち、お察しします……」
何とも素敵な目標だ、唯三冠を取るだけがゴールではなく、三冠を取ったお互いが勝負する所までがミソ。本気の勝負を目指している者は強い、それを自分は良く知っているつもりだ。
「ですのでトレーニングと並行してターボさんの併走もお願いします」
「お安い御用だ。2年連続でカノープスがトリプルティアラか、ハハッ他チームから恨まれそうだな」
「正直、リギルの気持ちが分かりました」
「あのチーム、俺がトレセン来る前から厨パ状態だったもんな」
今ではすっかり対策される側になってしまったカノープス、そうしてしまった切っ掛けが自分な訳だが……まあそんな自分がターボの力になるのも一興。
「実際問題、ターボはティアラ路線で如何思う?」
「課題となるのはオークスの2400位ですかね。それまではまだまだ時間がありますので、それまでには持たせられるようにスタミナ面の強化を図るつもりです。その為にもランページさんはガンガンターボさんと走ってあげてください」
「自信無くしても知らねぇぜ?」
「その程度でターボさんが落ち込むとでも?」
「あり得ないな」
兎に角元気で騒がしいウマ娘と認識されているターボだが、その実は極めてメンタルが強い、いや強くなった。ホープフルステークスの一件で元々ポジティブで芯の強かった所にしなやかさと柔軟性が生まれて益々強靭なメンタルへと進化した。例え負けたとしても気にしない、次の勝利の糧にする筈だ。
「んでネイチャはクラシック路線か……テイオーは弥生に出ないって聞いたけどマジか?」
「はい、若駒ステークスの次は若葉ステークスと沖野トレーナーは言ってましたね」
「オープンじゃねえか……経験積まずにそこまでやれる自信があるって事か」
「恐らく……私も以前拝見させて頂きましたがテイオーさんのポテンシャルは凄い物を感じました」
沖野はテイオーに経験を積ませるのではなく、トレーニングを積ませる事で基礎体力などを向上させる方針を取った。
「余程の自信があるという事ですね、まああれだけの走りをしていたら当然と思います」
「なんか含みあるな南ちゃん」
「ええ。だって私はテイオーさん以上の素質のあるウマ娘に経験を積ませた結果、無敗の七冠にしたトレーナーですから」
「―――ずりぃな南ちゃん」
自分を引き合いに出されるとは思わなかったので、少しだけ顔が赤くなったのを感じた。参ったものだ……。
「さてと、それではターボさんの併走相手をお願い出来ますか?」
「仰せの通りにマイトレーナー」
ターボはティアラ路線へ!!距離適性的にもこっちが向いていると思いますので。戦績を見ても2200辺りまでならいい所行ってるんですけどそこから先がって印象でしたので。