貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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104話

「ハァァァァァッ!!」

「……凄いわね。フローラ」

「まだまだですおハナさん……この位じゃあの人には勝てません」

 

スピカがカノープスに対する警戒心を強めて行くその一方でリギルもメニューをこなしていた。その中でも今一番集中的なメニューを組まれていると言っても良いのがアグネスフローラ、打倒メジロランページを掲げて鍛錬をし続けている。

 

「もう一本行きます」

「待ちなさいフローラ!!全くもう……」

「気合が入っている、というよりも入り過ぎているといった様子ですねフローラ先輩」

「ええ……参ったものだわ……」

 

ハヤヒデも少々心配する程に練習へと熱を入れてしまっているフローラ、一時はダートに進むというランページに激怒したりしていたのに……なんというか、彼女がランページに向ける物はかなり重いように感じられる。

 

「それ程までに勝ちたいという事なのでしょうか」

「あるでしょうね、ランページはあの子からすれば目の上のたん瘤なんだから」

 

ランページに敗北するまでは無敗のまま突き進んでいたのに、そこからフローラは勝てなくなっていった。最初こそ、被らないようにレース日程を組むべきだと自分から諭したのだが……

 

『それでは逃げたも同じです、私は勝つまでやめません』

 

そして続け続けた挑戦、積み重なった敗北の数だけフローラは間違いなく強くなっている……それはルドルフやシービーも保証する程なのに……ランページは常にそれを越えて行く。

 

「勝てるでしょうか、次の大阪杯は」

「……何とも言えないわ」

 

珍しく自信無さげな東条。リギルを纏め上げる敏腕トレーナーとしてその手腕を振るい続けて来た彼女とは思えぬほどに、何処か不安に満ちた言葉。管理主義と東条の気迫、そしてリギルという強さを根拠にチームを決めたハヤヒデとしては意外な姿だった。

 

「何せ相手はあのランページよ、どの段階までフローラを育て上げれば勝てるのかというビジョンすら見えない。だから不確定な事を言いたくないのよ」

「そうでしたか、邪推してすいません」

「いいのよ、貴方も自分のメニューをやりなさい。貴方も来年にはデビューの身よ」

 

頷いたハヤヒデを見送りながらも偽りの言葉が出てしまった事に辟易した、いや嘘ではないし偽りでもない……ランページに勝つには勝負勘の良さと実力を兎に角鍛えるしかない。幻惑逃げか大逃げのどちらかを取るかを判断してそれに対応した走りをするしかない。だがレースという競り合いの中でそれを行うのは難しい。だからこそ基礎を徹底的に磨くしかない……。

 

「やぁぁぁぁぁぁ!!」

「自己ベストタイよフローラ」

「まだまだです……!!」

 

まだまだこの程度で勝てる訳がない、ライバルでいたつもりだったのにライバルですらなかった。何時の間にか遥か先の世界へと、進んでしまった彼女の背中を必死に追いかけるしか出来ない。悔やむ時間すらも惜しく、フローラは研鑽に努める。

 

「勝ちたい、あの人に―――ランページさんに!!」

 

 

「やったよラン~!!!」

 

胸を張りながらのVサインは文字通りの勝利の証。チューリップ賞でターボは見事に勝利を収める事に成功し、桜花賞の優先出走権を勝ち取った。目指すは果たせなかったG1初勝利。

 

「ターボ頑張ったよ!!」

「全く、頑張り過ぎだっつの……よくやった」

「えへへ~ランの一番弟子のターボが情けない所見せる訳にはいかないもん!!」

「お前のようなバカを弟子に取った覚えはない」

「ええっ!!?そんな事言わないでよ~師匠~!!ターボはバカじゃないもん~!!」

「誰が師匠だ誰が」

 

顎を突きながらも溜息をつくランページ、そんな彼女に師匠呼びをし続けるターボ。本人からすれば溜まったものではないだろうが微笑ましい光景にカノープスでは笑顔が生まれる。

 

「まあ実際、ターボさんの走りを磨いたのはランページさんと言えなくもない訳ですから一番弟子というのも強ち間違っていないのでは?」

「ンな事言ったらイクノだって一緒に走ってたじゃねえか……」

「いえ、私とターボさんの走りでは大分違いますからそちらの方が妥当かと」

「逃げやがったよこいつ……」

「逃げるのはターボとランだぞ!」

「あ~はいはい……」

 

兎も角、これでターボの次走は桜花賞に決定。ネイチャは皐月賞とカノープスは順調そのものである。そんな中で南坂から報告があると言われる。

 

「ライスさんとタンホイザさんのデビューの日程が決まりましたよ」

「えっライスのデビュー!?」

「私も!!?」

 

二人のデビューは6月になるとの事、自分やイクノのデビューよりも早く出来る事になったらしい。というのもカノープスというチームの格が上がった影響で申請が通りやすくなったとの事。

 

「ライス、デビューするんだ……ぅぅぅっ緊張してきちゃったよぉ……」

「ライスちゃん元気出して!!私達にはランさんとイクノが居るんだよ、この二人と一緒に走ってるんだから心配する事なんてないって!!」

「そ、そうだよね……お姉様と一緒に走ってるんだから怖がることなんてないよね……?」

 

本人は少々不安がっているが、南坂から見た二人はかなりの仕上がりだと断言できる。

 

「でもライス先輩って不思議だよね~併走する時ってこうピシッ!!ってするから切り替えが上手いっていうのかな?」

「そ、そそそ、そんな事ないよぅ……ただ、確りやらないと失礼になると思って……」

「そこがあたし凄いって思うんですよ。普段のライスさんとはもう別人って感じだもん」

「ぁぅ……お、お姉様ぁ……」

「お~よしよし」

 

ライスもこういう所が変わって来たと思われるようになった。併走となると走る直線にスイッチが入ったかのように、普段のオドオドとした表情から一変して一気に凛々しく変わる。

 

「なんというかあの時ライスちゃんって仕事人!!って感じだよね」

「あっそれそれ!!」

 

仕事人とはまた言い得て妙だなぁ……とランページは内心で想いつつもライスの頭を撫でるのであった。だがそんな事を言うタンホイザだってスタミナの使い方が上手くなってきている。これだけの距離を走るから此処からスパートするから、此処までから此処まではこう走ろう、というマネジメントがかなり上手だと南坂も褒めていた。

 

「んでイクノは次どうするんだっけ?」

「私は天皇賞(春)を目指していますので日経賞ですね」

「そっちもそっちでハードな戦いになりそうだなぁ……」

 

イクノが行く先は天皇賞(春)……つまりマックイーンとパーマーに戦いを挑むという事。イクノは十二分に長距離への適性はあり、勝ちは十分に見込めると南坂も保証した。此処まで皆がやる気になると自分も負けている訳にはいられない……大阪杯、気合を入れて臨まなくては……!!

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