貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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108話

この日はG1レース、ティアラ路線の初戦である桜花賞が行われる事になっている、既に開始の口火は切られている。その火によって灯ったアフターバーナーが彼女の走りを更に加速させる。

 

「うおおおおおっっ!!!」

 

『ツインターボが一気に先頭に出た!!今日もターボエンジンは絶好調といった所か!!2番手にはサウザンドライブ、3番手にはホープフルステークスでツインターボを破ったグランルーブル!!』

 

ターボは今日も走る、大好きな仲間であるランページが走った舞台で今度は自分が走っている。その事を思うと不思議と背骨辺りがジィンと熱くなるのが分かる。それだけではなくホープフルステークスのリベンジという事もあって、気合が入りまくっている。

 

「ターボ、今日は勝てるかなぁ……」

「いっぱい練習してたから、大丈夫だと思うけど……」

 

何処か不安げな表情を浮かべるタンホイザとライス。ターボの事を信用してないという訳ではない、練習でも2000mを走り切ったりとスタミナも徐々にだが改善傾向にある彼女ならば、とは思うが本番と練習ではまるで違う。特にターボは一切の加減をしない全力投球の玉砕戦法、いざという時は脆い。

 

「大丈夫だよ、ターボにはある事を教えてやったからな」

「教えたって……何だ結局師匠になったの?」

「誰が弟子なんか取るかよ」

 

ネイチャからの言葉を躱すが……実際はターボの事を深く気に入っている。弟子とは思わない、手のかかる妹程度に思っている。だからこそ、力になってやりたい、あの時の涙を無駄にさせたくはない。そう思ってしまう自分が居て恥ずかしさを覚える。

 

「それで何を教えたんですか?ランページさんがターボさんを連れて出掛けた事は知ってますが……その時から明らかにターボさんの走りが変わっています」

「あれはあれで普段通りの全力だぜ―――抑えた全力だ」

「……どういう事なのお姉様?」

「単純な話だよ……あいつに本当のドッカンターボを教えてやったまでの話だ」

 

『さあ頂上から此処から下りに入ってペースが上がります!!800mの標識を通過!!』

 

第3コーナーから第4コーナー、下り坂となって此処からペースが上がっていくのだがグランルーブルを初めとしたウマ娘達も此処から上がっていく。此処でターボを追い抜く為のスピードを稼いでやろうと思っていた事だろう。それを威圧感で感じながらもターボは走っていた。

 

「(溜まってる、溜まって来てるのが分かる……もうちょっと、もう少しで……!!)」

 

 

あれは数日前の事だった。何時ものように練習に向かおうとしたターボを、ランページが呼び止めた。

 

「ターボ、今日は練習に行かなくていいぞ」

「ええっ!?駄目だよ桜花賞が近いんだから練習しないと!!」

「休みにするって訳でもねえ、南ちゃんのOKは貰ってる」

「トレーナーの?」

 

レース前の大切な時にトレーナーの許可を貰うなんて何を考えているのだろうかと、ターボさえ思う。兎に角ついて来いと言われたのでその後ろに続くとトレセン学園専用の駐車場がある。トレセン所有のミニバスや車などが此処に置かれて何時でもトレーナーが使えるようにされているのだが……その中に青い車が止まっていて、そのドアの鍵を開けた。

 

「あっラン駄目だよ勝手に開けちゃ!!」

「勝手に開けるのも糞もねえよ、これは俺の車だからな」

「ええっうそぉ!!?」

「マジだよ、これでも免許は持ってんだよ」

 

ランページはマルゼンスキーに仲介をして貰って車を購入した、休みにはライスやターボを連れて遊びに行くなどの実用性やらも求めたのでスポーツカーは買わなかったがその代わりにインプレッサを購入した。

 

「それで何処に行くの?」

「お前のドッカンターボ、必殺技にしてみねぇ?」

「したい!!」

「じゃあ乗れ、埼玉までかっ飛ばすぞ」

 

 

「(もう直ぐ、もう直ぐ!!)」

 

『此処でツインターボを捉えられるか!?ウミノブランカも迫る!!グランルーブルと共に並ぶぞ!!』

 

直線に入った瞬間、ターボは完全に捉えられた。誰もが思った、此処でツインターボの先頭は終わり……だがその時!!全身に漲る力を感じる、そうだこの感じ、ビリビリと身体に雷が落ちたみたいな充実感、そうだ出来る、ターボは出来たんだ!!

 

『ドッカンターボは時代遅れって言われてる、まあ事実そうなんだけど……だけどそれを切り札にするっていうんだからなんか嬉しいよ俺……俺はドッカンターボの急にくる感じが大好きなんだ。だから頑張ってくれよなターボさん』

「(うん、ターボの為に走ってくれてありがとう。だから今度はターボが走るから見てて―――これがターボの)全開ぃぃぃっ!!!」

 

並ばれていた筈のターボ身体からオーラのような物が迸ったように見えた。そして、その直後、一瞬でブランカとルーブルを突き放した。並んでいた二人も全く理解出来なかった、何が起きたんだと一瞬思考が凍て付いてしまった。そんな凍り付いた自分達をおいていくかのようにぐんぐん加速していく。

 

『な、なんとツインターボ!!ツインターボが此処で抜け出したぁ!!?いやそれよりもなんだこのスピードは!!?グランルーブルとウミノブランカがまるで止まっているかのようにどんどん突き放して行く!!既に4いや6バ身差を付けているぞツインターボ!!』

 

一気に加速したターボ、先程まで下り坂の勢いで加速していた他のウマ娘を一瞬にして過去にした。これからの未来()はターボが独り占めすると言わんばかりの大激走。それを追いかけるが全く追い付けない、異常なまでの加速に言葉が出ない。

 

「これがターボの真ドッカンターボだぁぁぁ!!!!」

『ツインターボ、凄まじい走りだ!!信じられません、まだまだ伸びて行くぞ!!?そしてそのままゴールイン!!!桜の冠を手にしたのはツインターボ、カノープスが今年も台風の目となる!!そしてツインターボ、二着のウミノブランカとは9と半バ身差!!?これが本当のターボエンジンなのかぁ!!?』

 

 

「う、うっそぉ……」

「ターボさんの走りが、全く違う……!!」

 

余りの衝撃にネイチャは顎が外れんばかりに驚愕し、イクノも驚きすぎたせいか眼鏡がずり落ちてしまっている。それは南坂も同じだった、以前よりもスタミナの持ちがよくなったとは思ったが、こんな事になるとは思いもしなかった。

 

「ランページさん、本当に一体なにを教えたんですか?」

「本当のドッカンターボの車に乗せてやったのよ、それでドッカンターボをその身で体験した。体験に勝る経験無しってな」

 

マルゼンスキーから未だにドッカンターボを使うという走り屋を紹介して貰い、その車にターボを乗せたまま峠を攻めて貰ったのだ。その身でドッカンターボを体験したターボは大興奮、そしてその身でドッカンターボを使う為に抑えながらも逃げるという事を漸く覚えてくれた。普段通りに逃げつつも少し余力を残した状態で脚を溜める、そして溜まった所で解き放つ。これがツインターボ流のドッカンターボ。

 

「逃げつつも脚を溜める、だけどターボの場合はその見極めと解き放ち方がマジで上手い。こればっかりは天性の物としか言いようがねぇレベルでな。溜まったら使う、じゃなくてここしかないっていう最高のタイミングで爆発する瞬間でドッカンと開けてターボを掛けるから嵌った時は速い。後は上手い溜め方さえ覚えればテイオーだろうと負けねぇよ」

「凄いじゃんターボ!!それならターボはテイオーに勝てるの!?」

「まあ問題はその溜め方を覚えられるかなんだけどなぁ……」

 

最大の問題点にカノープス全員が思わず察したような声を出した。完成こそしたが、ターボ流のドッカンはまだまだ低い完成度。ここからもっともっと磨きを掛ければそれこそテイオーすら凌駕する。

 

「つう訳で南ちゃん、その為のメニュー頼むぜ」

「やれやれ、分かりました。何とかしましょう、今月は忙しいですね」

「ドッカンターボについては俺も付き合ってやるから頼むぜ」

 

口ではそう言いながらも南坂の心は極めて晴れやかだった。ターボの完成形のドッカンターボ……それを心から見たくなった。本当に……これだからトレーナーはやめられないのだ。

 

「やったぞ~ラ~ン!!ターボ桜花賞取ったよ~!!!」

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