貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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109話

「ったく……こんな事に態々俺を使うんじゃねえっつの」

「良いじゃん、トレーナーは来た事ないからランに頼むしかないんだもん」

「だからってな……言ってたじゃねえか観戦するし実際してたって、それなのに態々埼玉まで運転させやがって……此方まだ若葉マークも取れねぇカエルの子なんだぞ」

「何でオタマジャクシなの?」

 

そんな事を言いながらも慣れた手つきで高速を運転するのは現役の中距離最強ウマ娘とも呼ばれ始めて来たメジロランページ、愛車のインプレッサのサブシートには同じG1ウマ娘になったチームメイトのツインターボが収まっている。

 

「んで、満足はしたのか?」

「うん!!秋山の兄ちゃんにも確りとお礼言えたし写真だって撮ったし!!」

「そりゃようござんしたっと」

 

携帯のフォルダの中に納まっている一枚の写真、そこにあるのは今時珍しいAE86に乗って峠を攻める走り屋の秋山とその妹さん、そしてそんな二人に挟まれている桜花賞の優勝レイとトロフィーを掲げているターボ。ターボ流ドッカンターボ、曰く真ドッカンターボの完成に協力してくれた二人に直接お礼が言いたいとランに無理を言って埼玉まで行って来たのである。

 

『秋山の兄ちゃん~!!』

『ターボさんじゃねえか!?如何したんだ桜花賞の直ぐ後だってのに……』

『えへへっ本当にありがとうね!!ドッカンターボ、秋山の兄ちゃんのお陰で完成したよ!!見ててくれた!?』

『そ、そりゃ勿論……ってまさかそれを言う為に態々!?ランページさんに運転させて!?』

『全く呆れるでしょ、その為に駆り出されたんだぜ。それに付き合う俺ってば断われない女だぜ』

『ア、アハハハッ……こりゃ参った、俺が思ってた以上の大物だぜ』

 

本当に驚かせたのに秋山は直ぐに笑ってターボと喜びを分かち合った、それを聞きながらもすぐに妹を呼ぶとサインを強請られたりそれに笑顔で答えたり、逆に一緒に写真を撮ってとせがんだりとターボは心からの感謝を精いっぱいに伝えた。

 

『次のオークスも勝つからね!!ドッカンターボで!!』

『ああ、応援してるよ。今度はレース場まで応援に行くから頑張ってくれよ!!』

 

結果的に心強いサポーターも付いた事で一段と大きく成長したようにも思えるターボ。が、これからターボは数日の間は療養に集中しなければならない、しかもメジロの療養所での集中療養だ。本来ならばレースの直ぐ後にでも入るのが理想だったのにお礼を言わないと絶対に行かないと駄々を捏ねられて、致し方なくランページが埼玉までインプレッサを走らせる事になってしまった。

 

「でもさ~ターボが療養所使っていいの?」

「構いやしねぇよ、ンな事言ったらネイチャやライスだって使ってやがるんだからな」

「それもそっか」

 

この二人の場合はチームメイトだから、というのもあるがターボの場合はかなり遠いがメジロとは親戚関係にある。故にネイチャたち以上に関係自体は深い、俗物らはネイチャ達が使う事にも文句を言っていたらしいが今回は全く言う事は出来ない。

 

「ターボ、これでお前もG1ウマ娘だ。こっからはマジで周囲がお前をマークし始める頃合だ」

 

これまでは何方かと言えば、自分が居るカノープスメンバーだからという意味合いが比重としては大きかった。ターボの走りは自分の大逃げとかなり似ているので余計に自分の存在が重かった。だが今回の桜花賞でターボ自身の実力を見せつけた事で完全なマークを受ける事になるだろう。

 

「もっと練習しなきゃダメって事でしょ、ターボ練習サボる気ないもん!!」

「そりゃ結構だ。だけどそれだけじゃだめだ」

 

ギアを変えながらもランページが言う。

 

「お前の最大の武器は二つ、文字通りの大逃げとドッカンターボ」

「真!!」

「真ドッカンターボだけど、ありゃまだまだ完成度が低い。桜花賞であんだけ着差が付いたのは初見故に他の連中が精神的な動揺で仕掛けている途中でペースが崩れたせいだ」

「つまり……どゆ事?」

「この位理解しやがれ……最初は相手がびっくらこいた隙で逃げ切れたけど、今度からあんだけの差は生まれないし対策もされるって事だ」

 

あれだけの急激な速度の落差を生み出すドッカンターボ、一瞬の内に並ばれかけていたウマ娘を置き去りにするそれだが来ると分かっていれば対策もされる。

 

「んじゃどうすればいいの?」

「簡単な話だ、真ドッカンターボと大逃げ、お前には既に二つの必殺技があるって事だ」

「益々わかんないよ~」

 

ターボは100%の確率でドッカンターボを使えるわけではない。特定のポイントで一気に加速するのがドッカンターボ、それを走りで行うターボは大逃げしながら脚を溜める。そして溜まったそれを最高のタイミングで開放して加速するのだが……その溜め方がまだまた未熟。

 

「今のお前は距離が無いと脚が溜まらないんだよ、桜花賞での1600で溜まったのはハッキリ言って運が良かっただけだぞ」

「むぅ……」

 

現状では溜め方が未熟なので、コンディションや精神状態、はたまたバ場や天候にも大きく影響を受けてしまって溜まり方が大きく変動する。桜花賞の距離で溜まってくれたのはリベンジを果たすという精神的な高揚があったお陰だろう。ドッカンターボの完成に付き合ったランページの見立てでは出せるようになるのは中距離、これからガンガン使ってみて溜める練習をしなければ使い物にならない。

 

「普段の逃げは全く加減しない大逃げだろ、んで使う時は溜める為に抑える。使い分けが出来るようになれば、俺の幻惑逃げに近い事が可能になるって訳だ」

「つまり―――ターボはランの弟子になったって事!?」

「全然ちげぇよ!!」

 

普段は大逃げをして、ここぞというレースにはドッカンターボを使って振り切る。相手に二択を強制させる事が出来る、史実の七夕賞とオールカマーのような物だ。それを成立させる為にはドッカンターボの完成度を上げつつもスタミナを鍛える必要も出てくるわけだが……

 

「はぁ……まあいいやそれで、その代わり俺の弟子を自称するなら生半可な走りじゃ許されないんだからな。其処だけは覚悟しておけ」

 

こればっかりはターボの覚悟を問う事になる、自分は良くも悪くも目立っている。そんなメジロランページの弟子であると公言すれば面倒事も増えて行く、出来ればそんな苦労はさせたくはない。だからそれは確認しておきたい、と思っていたのだが……横を見たらターボは爆睡していた。

 

「で、電池が切れたみたいに寝やがった……」

「ウェヘヘヘヘ……ターボ全開……ギュルギュルギュルドッカァァアン……」

「気持ちよさそうな顔で夢見てやがる、峠の夢でも見てるのかな」

 

まあ今は寝かせてあげる事にしよう、桜花賞の直後で疲れているのだから。丁度いいからこのまま療養所に直行しよう、そして次のオークスに向けて確りと調整して貰う事にしよう。

 

「ドッカンターボさえ完成すればターボ、テイオーどころか俺ですらぶっちぎるかもしれねぇからな。物にしてみろ、時代遅れって言われた物で新しい時代を作ってみせろ」

「やった~!!ランが師匠になってくれた~!!」

「テメェ起きてやがったのか!?あ~もう取り消しだ取り消しぃ!!お前なんか弟子じゃねえ!!」

「へへ~んだ言質取ったもんね~!!スマホで録音しちゃったもんね~!!後で皆に自慢するんだも~ん!!」

「ザけんな!!地味に用意周到な事してんじゃねえ!!」




秋山の兄ちゃん、モデルは当然頭文字Dのカローラレビンの走り屋、秋山 渉さんです。

スマモとかもあるからどっちかと言えばMFゴーストだろだって?
まあいいんだよ細かい事は!!
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