貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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110話

「いやさ、ホント凄いよね。ターボのライバルってだけあって本当に凄かったよ」

「何だ意外とさばさばしてるじゃねえか。てっきり落ち込んでると思ったからインプに乗っけってどっか連れてってやろうと思ってたのによ」

「それはシンプルに乗っけって欲しいとは思うけど―――でも次はどうなるか分からないよ、テイオー」

 

桜花賞に続く皐月賞、それに出走したネイチャは―――2着に終わった。1着はトウカイテイオー。それでもギリギリのハナ差勝ちでゴール後の憔悴具合を見ると何方が勝っているのか負けているのかが逆転しているかのような様子だったとの事。

 

『ハァハァハァハァハァ……勝ったよネイチャ……!!』

『いやはや全く以て凄いねテイオー……でも次は負けないから。ダービー待ってなよ~』

 

限界ギリギリと言いたげなテイオーと余裕があるネイチャ、それに対して南坂に視線をやるとテイオーの勝利の理由を教える。

 

「端的に言えば……テイオーさんは僅かにタイミングの仕掛けを誤っています、それでもあそこまで行けるというのは驚きでした」

「あ、あれでなの!!?」

「スピカとしてもネイチャさんの過去レースで研究して来たとは思います、ですが実戦ではその見極めを失敗しています。それでもハナ差勝利まで捻じ込んできた……末恐ろしいですね、トウカイテイオー」

 

ネイチャは予定通りのロングスパートを掛けた、それに対してテイオーは第4コーナーでスパートを掛けた。しかしそれでも僅かに遅く、本来は入った段階で仕掛けるのが正解で、その場合にはネイチャに1バ身差は付けて勝利していた筈だという。

 

「だとすれば尚の事恐ろしいですね、不十分なのにそれだけとは……」

「だから今度はスパートのタイミングを変えようかなって思ってる」

「具体的には?」

「半分過ぎて少ししたら」

 

余りにも単純すぎる発言に周囲は驚いた。

 

「半分って……お前、1200mスパートする気か?」

「いや、残り1000mで」

「あんま変わってないような気がするんですけどねぇ……」

 

何というか……何でそういう発想になるのだろうか、今回の仕掛けで負けたから今度はもっと早くやってやろうという発想が出て来るのだろうか……それが出来るのならば問題ないというか理想的ではあるだろうが……。

 

「という訳でトレーナー、次は青葉賞でお願いね」

「そう来ると思って既に出走登録は済ませておきました」

「やっぱりパーフェクトだわ、流石ランのトレーナーだよ」

「感謝の極み……」

「しかし、ネイチャさんはそこまでのスパートが掛けられるのですか」

「うん出来るよ?」

 

イクノの問いにあっけらかんとした態度で、然も当然のように応えて見せた。

 

「だって数年間ずっとランにイクノ、それにターボに付き合って走り続けてたんだよ?その位の体力は当然あるよ、というかスパート云々は最初から全力全開なターボが居るんだからなんか言われたくはないかな」

「それ言われたら俺達はぐぅの音も出ねぇよ」

 

確かに……とその場の全員が思った。基本全力疾走で2000を走れるターボが居るんだからネイチャのそれもさほど可笑しくはない……いや十分可笑しいが、この場合はそんなネイチャを敵に回して勝ったテイオーが可笑しいという事になるのだろうか。

 

「という訳だからさ、ラン今度からアタシとの併走お願いね」

「おいおいテイオーの仮想敵ならイクノじゃねえかどっちかと言ったら」

「いやロングスパートでランを追い込めれば必然的にテイオーも千切れると思って」

「分からなくねぇんだけどなぁ……まあその位ならいいか」

 

これを軽々と口に出来るだけの力が今のネイチャにはあるのだから末恐ろしい、が、逆に考えれば無敗の王者とそれに付いて行ける№2、ドッカンターボを会得した新星と数年一緒に走り続ければこうなってしまうのか、と不思議と納得できてしまったのであった。

 

「ですが、今回の事で沖野さんは相当に焦ったと思いますよ。何せワンミスが命取りである事を強く意識させられてしまったんですから」

「その点についてはアタシも分かってるつもりだよ、でもだからこそ対策してくると思う。だからこそこっちもタイミングを変えようと思う」

 

ぶっつけ本番の対策をほんの僅かにミスしただけでこれだ、本当にミスを出してしまったらその時点で大崩れ。ネイチャもネイチャでとんでもないウマ娘になったものだ。

 

「ねえねえネイチャ、ターボ良い事考えたの!」

「おっ打倒テイオーに向けての新戦術かな?」

「ネイチャの必殺技の名前!!」

「えっそっち?」

「はいは~い!!アタシも手伝いました~!!」

「チケットまで……」

 

カノープスのお調子者ワンツーコンビに期待した自分が間違っていたと、溜息をつきながらも折角付けて貰ったんだから聞くだけ聞いてあげようと耳を傾ける。

 

「ズバリ―――カタパルトネイチャ!!」

「ブラマジガールでも射出しそうな名前してんな」

「いやシンクロ召喚の方です先輩」

「ウォリアーの方か」

 

ライスやタンホイザはよく分からなそうな顔をして耳を回してしまっている。まあこれはあまり理解されなくてもしょうがないだろう。

 

「まあ変な名前じゃなくて少しだけ安心したよ、まあ使うかどうかは別としてね」

「エ~カッコいいじゃンこれ!!ねえチケット!?」

「うん凄いカッコいいと思います!!」

「そうかなぁ……ランはどう思う?」

「あ~……まあ下手に凝った名前よりはいいんじゃね、徐々に加速していく所がカタパルトっぽいって言いたい気持ちは分からなくはないし」

「ターボさん」

 

そんなターボとチケットのネーミングセンスに唸っているネイチャより前に、イクノが前に出た。何処か威圧的な雰囲気がある。ターボとチケットは思わず怒られる……?と身を硬くするのだが、イクノがそんな事をする筈もなく真剣な顔で言った。

 

「私にも何か名前を付けてください」

「だと思ったよ……」

「勿論!!えっとね……イクノはペースが正確だから……イクノペース!!」

「くっそシンプルだなおい」




イクノは絶対こういうことを言う。
メントスコーラやろうって言ったら更にデカいサイズのコーラを持ってくる女だからな。
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