貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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111話

「にしても……暫くは忙しいままだな南ちゃん、ホントすまねぇ」

「良いんですよこの位、今までがちょっとのんびり過ぎたと思えば。それに暇なときは他のチームのお手伝いを積極的にして自分の糧にしてたりしたんですよ」

「あっもしかしておハナさんとか黒沼さんと仲が良いのはそれか」

「ええ、サブトレーナーとして色々教わった身です」

 

部室とは別のトレーナー室、一定以上の成果を上げれば共用ではなく専用の個室が割り当てられてそこで情報管理などが出来る。カノープスはそこまでではなかったのだが……ランページを始め、重賞レースなどで成果を上げまくっているのでこの個室を得た。そんなトレーナーを手伝うようにランページは海外からの書類の仕分けを担当。

 

「にしても今月もあれだと思ったけど暫くは忙しいままだな……5月にはオークスにダービー、んで俺のヴィクトリアマイルもあるしな。しかも6月には宝塚記念があって……ライス達のデビューもある訳だ。多忙過ぎね?」

「この位ならまだ何とか許容範囲ですよ、トレーナーになる前に比べたら楽な位ですよ」

「中央のトレーナーってマジモンのスーパーエリートだろ、それなのに前の職って何やってたんだよ」

 

別に他意はなく、純粋に何をやってたのかな~みたいな感じで軽く聞いた。どうせ答えてくれないだろうなぁと思っていたのだが、意外な事に応えてくれた。

 

「私は言うなれば貿易会社に勤めていたんですよ、これでも結構大きなところだったんですよ」

「へぇ~貿易、成程だから英語とか堪能な訳だな」

「ええ、勤めている内に必要とされていったので」

 

貿易とは、まさか謎に包まれていた南坂トレーナーにそんな過去があったとは……一体どんな物を扱っていたのだろうか、元社畜のヒトソウルが聞きたがっている。

 

「どんな感じの仕事してたんだ?」

「クレーム対応をする部署に居たんですよ」

「ああっ……そりゃ、楽だよね。うん、南ちゃん、それ以上言わなくていいぜ」 

 

その一言で全てを察せてしまうヒトソウル、クレーム対応をする部署なんて大変で当然。世の中には頭の可笑しい奴もいる、ジグソーパズルを買ってバラバラだった返金しろなんて可笑しな事を言う奴もいる。クレーム対応は総じて人間からの悪意を直接ぶつけられる、それでも中には確りとしたクレーム、此方側の不手際による物も含まれていたりもするのでないがしろにする訳には行かないのが厄介な所だ。

 

「南ちゃん、今度俺が奢るから飯行こうぜ。オグリさんに美味い店教えて貰ったんだ」

「それは楽しみですね」

「俺のインプで連れてってやるよ」

 

どこに行こうか、今から考え込んでしまう。

 

「ランページさんはダートを走りたかったりします?」

「是非とも走りてぇな、経験を積みたいのもあるが―――それ以上にダートって楽しいんだよなぁ……」

 

芝とは違った高揚感がある、何よりもダートを走っているウマ娘達の気風と精神力が素晴らしい。ダイナ達とは今でも連絡を取り合っていてダイナはマーチステークス、レディはアンタレスステークスを優勝したと写真付きで送って来てくれた。そして何より―――

 

『『帝王賞で勝負だ!!』』

 

という何とも心が躍る事を言ってくれた。

 

「それでは次はダートにしますか、ヴィクトリアマイルの後になりますがどうしますか?」

「帝王賞で頼むよ」

「帝王賞ですか、それですと宝塚記念は出られない事になりますが宜しいですか?」

「ダイナとレディと走る約束しちまったんだよ。此処は先約優先で」

「承知しました」

 

それはそれでまた仕事を重ねさせてしまう事にもなるのだが……当人には気にしないと言っているので、自分がフォローなどをする方向性で頑張っていく事にしよう。

 

「青葉賞には俺が代理で行ってもいいぜ、流石にそっから京都の強行軍はきついだろ?」

「お気遣い感謝します。実は黒沼トレーナー程ではないんですけど鍛えてますのでこの位ならへっちゃらです」

 

意外にも南坂は鍛えているらしい、何ともイメージに合わないと思ったがライアンのトレーナーだってトレーニングをしてるのだからトレーナーが鍛えていたとしても何も可笑しい事はないのかと納得する。

 

「にしても、なんでトレーナーになったんだ?」

「そうですね……まあ深い意味はないですかね、レースに託けて各地に行けるのは魅力的に映ったというのは事実ですが」

「うぉい。ンな事で東大よりもむずいっていう試験受けたのか、因みに何回受けた?」

「一発合格でした」

「マジで南ちゃん何者なん?」

 

地方でオグリのトレーナーをしていた北原トレーナーだって中央の資格を得ようと頑張っているのに落ちてしまったと言っていた、それなのに一発合格……矢張りただ物ではない……。

 

「実は特撮ヒーローの主人公的な感じだったりする?」

「憧れた事はありますけど違いますね」

「だとしても俺は驚かねぇけどなっと……んっこれって……」

 

仕分けを続けて行く中で見つけた一つの封筒、そこには綺麗な字でDear Mejiro rampageと書かれていた。一応中身を確認してみるが……そこには何とも言えない熱烈なファンレターだった。

 

「またあの方ですか?」

「いや違う奴だ、レースの申し込みだな……」

 

中には英語で書かれたものと自分で書いたと思われる日本語の物があった。以前凱旋門賞で倒すというモノを貰ったが、それよりも遥かに綺麗な物だ。一見すれば日本人が書いたと思う程に。

 

「要約すると……今年のジャパンカップで俺を倒す、だとさ」

「おやおやおや、これはまた随分とストレートですね」

「全くだ。まあジャパンカップの舞台で負ける訳には行かないけどな……アメリカか、何れ行く事になるんだし待ってればいいのによ」

 

それを聞いて、一瞬動きを止める。アメリカからの刺客か……まあ彼女ならば大丈夫だろうと思い直しながらも仕事を続ける事にした。

 

「君の視線を私に釘付けにするって……おい、サブカルに嵌ってんぞこのウマ娘。顔面にフレッシュトマト叩き付けてやろうか」

「やめてください、それは私にも効きます」

「俺にも効く」




「来年まで待てないという事なんですかね……やれやれ、致し方ない」
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